はい、というわけで、せつ菜ちゃんお当番回の第3話の振り返りです。
アニメを見続けるか、それとも切るかを考えるターニングポイントなどと言われる第3話。
「ラブライブ!」を題名に関する作品なのに、その「ラブライブ!」を目指すことを否定するという展開に驚いた方も多かった回です。
何回観てもせつ菜ちゃんと侑ちゃんの熱い掛け合いは、胸に来るものがあり、私にとってもお気に入りの回の一つです。
というわけで、今回もお付き合いよろしくお願いいたします。
「優木せつ菜」はもういません!
前回、かすみちゃんが放った猫のはんぺんを追いかけるために、生徒会室が空になった隙をついて、実は生徒名簿を持ち出していた果林さん。
その生徒名簿には「優木せつ菜」という名前が見つからないことに気が付きます。
しかし生徒会長は「同好会は優木さんとの話し合いの結果廃部となりました」と、いないはずの人間と会話していたことになります。
このことから生徒会長の中川菜々=優木せつ菜ということがわかり、同好会メンバーと果林さんは、生徒会室に押しかけます。
かつてのスクールアイドル同好会のメンバーは、なぜ同好会を急に廃部してしまったのか、その真意を問いただします。
しかし、菜々さんは
「優木せつ菜はもういません」
「私はスクールアイドルをやめたんです。もし皆さんがスクールアイドルを続けるなら、ラブライブを目指すつもりなら皆さんだけで続けてください」
とだけ答えます。
取り付く島もない状態。
彼女はなぜ、スクールアイドルをあきらめてしまったのでしょうか。
そして同好会を廃部にしてしまったのでしょうか。
シーン変わって、生徒会室で会議中の菜々さん。
最近、校内に困った子が住み着いているという報告を受けます。
その困った子というのが、第2話からちょくちょく登場している猫の「はんぺん」。
動物の放し飼いが校則で禁止されていることもあり、生徒会長自ら網で捕まえようとします。
生徒会全員じゃなくて、会長自らなんだ……。
しかし璃奈ちゃんと愛さんによって、なんとか阻止。
璃奈ちゃんにすごく懐いている様子のはんぺんをみて、菜々さんは学校の一員に迎え入れることを提案します。
それなら、飼うのではなく学校のメンバーのひとりなのだから問題ないという若干強引な考えですが、菜々さんの、他人の大好きを傷つけない、尊重しようとする姿勢がよく表れていました。
思いのほか優しかった生徒会長に、2人もほっとしたご様子。
またシーン変わって、廊下を歩く菜々さん。
通りがかった音楽室から聞こえてきたのは、ピアノで弾く『CHASE!』のつたないメロディー。
そのメロディーを奏でていたのは、1話でせつ菜ちゃんの圧倒的パフォーマンスをみた侑ちゃんでした。
生徒会長という立場上、音楽室の使用許可をとっていないであろう侑ちゃんを咎めます。
一方、せつ菜ちゃんの曲を知っているようにみえた侑ちゃんは、オタク特有の早口でナチュラルに菜々さんの手を取ってグイグイしゃべります。
そんな侑ちゃんをみて、菜々さんもタジタジ……。
せつ菜ちゃんのことが大好きになったという侑ちゃん。
侑ちゃんと歩夢ちゃんが、あの日のライブでのせつ菜ちゃんの言葉に心を動かされたことを知り、菜々さんは驚きます。
と、同時に、優ちゃんは、なぜスクールアイドルをやめてしまったのか、あのライブが最後じゃなくて始まりだったら最高なのに、と呟きます。
その言葉を聞いた菜々さんは、せつ菜さんはあそこでやめるのが正しく、いい幕引きのライブだったと思うこと、逆にあのまま続けていたら彼女は部員をもっと傷つけて同好会は再起不能になっていただろうと口にします。
プレッシャーに押しつぶされたスクールアイドル
オープニング明けのシーンでも、自分の大好きなものは箱にしまい込んで、親に隠していた菜々さん。
きっと生徒会長をやっているのも、親の期待に応えようとしている表れなのでしょう。
それでも、誰かの期待に応えるだけでなく、自分の大好きなことも1つくらいやってみたいと思った菜々さん。
だから、大好きなスクールアイドルを、「優木せつ菜」という大好きなアニメのキャラクターからとった名前で始めたのです。
そして「スクールアイドル」としてせつ菜ちゃんは注目され、侑ちゃんのようにファンになる子も出てきました。
ファンの子の中には、スクールアイドルの全国大会「ラブライブ」にせつ菜ちゃんにも出てほしいと思うようになります。
今度はそのファンの期待に応えるために、全国のアイドルグループとの競争に勝ち抜いて優勝するために、せつ菜ちゃんは同好会を作り、グループを結成します。
競争に勝ち抜くためにはメンバーが1つの色にまとまること。
でも、せつ菜ちゃんのように「熱い」スクールアイドルがやりたい子もいれば、かすみちゃんのように「かわいい」スクールアイドルがやりたい子もいた同好会。
1つの色にまとまるどころか、方向性の違いによる衝突が増えてしまい……。
せつ菜ちゃんはその原因が自分にあると考えます。
自分の大好きを主張することは、自分のエゴ(ワガママ)を通すこと、自分のエゴを通せば、誰かの大好きを否定し、結果仲間を傷つける。
このまま、スクールアイドルを続けて、自分の大好きを誰かに押し付けて傷つけてしまうよりかは。
一人で「優木せつ菜」として最後のステージを行って、スクールアイドルを辞めて、自分が所属していた同好会を廃部にして(ケジメをつけて)
新生「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」を誰かが立ち上げて続けてくれたほうが、結果的に良い方向に進んでくれるだろうと考えたのでした。
シーン変わって、幼馴染グループと一緒に行動していたかすみちゃんと、元同好会メンバー、かすみちゃん曰く部外者のお姉さんである果林ちゃんが合流します。
意地悪していた生徒会長が、まさかのせつ菜ちゃんだったことに驚くかすみちゃん。
しずくちゃんのお尻からコッペパンネタもありつつ、合流したメンバーでこれからのことを考えます。
部員5人以上という要件は満たしているのだから、同好会は再始動することができる。せつ菜ちゃんを抜きにして初めてもいいんじゃない?という果林ちゃん。
冷たいことを言っているようですが、それは彼女が部外者だからこそ言えるセリフです。
しかし元同好会のメンバーにとっては、これまでお披露目ライブのためにがんばってきたのだから、せつ菜ちゃんには戻ってきてほしいといいます。
そして、第2話で「いろんなかわいいもかっこいいも一緒にいられる『世界で一番のワンダーランド』を作りたい」と考え方が変わったかすみちゃんだからこそ、目指す方向性の違いがあったとしても共に目標に向かって活動できる場を作るために、せつ菜ちゃんが必要なのだということ考えを伝えるのでした。
せつ菜ちゃんに戻ってきてほしいという思いを伝えるために、侑ちゃんがせつ菜ちゃんと話すことを申し入れます。
せつ菜ちゃんを救ったのは、一人のファン
同好会メンバーは、校内放送で菜々とせつ菜として西棟屋上に呼び出します。
現れた菜々さんに、侑ちゃんは、無神経になんでスクールアイドルをやめたのかということを正体を隠していて知らなかったとはいえ本人の前で言ってしまったことを詫び、同時に同好会に戻ってきてほしいと提案します。
しかし、せつ菜ちゃんは考えを変えません。
自分が同好会にいたら、みんな(同好会のみんな、ファンのみんな)のためにならない、ラブライブに出られないから。
そこで侑ちゃんは「だったら、ラブライブになんか出なくていい!」と主張します。
まさかのタイトルを否定するような発言ですが、ここで私がポイントだと考えているのは、彼女はスクールアイドルではない、一ファンとしての主張をしているということです。
彼女が「ラブライブに出よう」と考えたのは、まわりの期待に応えたいからであって、決して本人の強い意志ではないと考えています。
真面目だからこそ、誰かの期待に応えるために一生懸命だった、それゆえの暴走だったと考えると、ここでファンの一人が「せつ菜ちゃんがファンのプレッシャーに苦しんでいるのならラブライブに出る必要なんてない。ただ歌が聞ければ十分なんだ」と伝えてあげることが、彼女をラブライブの呪縛から、そしてファンの期待というプレッシャーから救う一つの道であり、その役目がスクールアイドルではない侑ちゃんだったと。
この、スクールアイドルではない侑ちゃんが、せつ菜ちゃんへの大好きを叫んだことが本当に大きな意味を持っていたなと感じます。
これがかすみちゃんが仲直りの意味も込めて、かすみちゃんが言っていたとしたら、弱いメッセージになっていたのかなと。
この言葉って、決してスクールアイドルからは出てこない言葉だと思うんです。
きっとスクールアイドルとしては、ラブライブの優勝というのは、一つの大きな夢だと思いますから。
高校野球やっている子が、甲子園なんて行かなくていい、なんていうのがものすごく違和感がありますよね、それと同じです。
そして、この「ラブライブなんて出なくていい!」というセリフは、無印でも、サンシャインでも、きっとLiellaでも、聴けないセリフかなと思います。
一人一人がソロで活動していくというグループの目標、そしてスクールアイドルではない一人のファンである侑ちゃんという稀有な存在がいる虹ヶ咲だったからこそのセリフだなと。
ここに、外伝としての新たな道を示し、ラブライブというコンテンツの歴史に一石を投じたという意味で、私はとてもここを好意的に捉えました。
でも一方で「ラブライブ!」を目指さないということは、残念ながらグループとして目指すべき目標が希薄になってしまっていることは否めません。
このことがラブライブに「青春」を求めるライバーさんにとってみては駄作なんて言われてしまっているのかなと。
まあここは好みの問題だということで。私は好きなほうです!笑
というわけで、この後押しによって、菜々さんは再びスクールアイドルとして、自分の大好きを叫んでもよいのだという救いを得ます。
だからこそ、彼女はこの場で、優木せつ菜として、新生・優木せつ菜の復活を宣言するのです。
彼女は、彼女のことが大好きなファンのおかげで、またスクールアイドルの世界に戻ってくることができました。
一度「CHASE!」で幕を引き、大好きを追求していくことを訴える曲「CHASE!」が終わりの象徴になってしまったせつ菜ちゃん。
しかし、再びスクールアイドルの世界に飛び込む(=DIVE)ことができたその始まりの歌「DIVE!」が、ここで披露されます。
『DIVE!』をみて思うこと
印象的なのは、彼女の衣装と、その演出です。
まず衣装ですが、これまでの炎の色を纏った「熱さ一色」の衣装から、これまでの炎の色に加えて相反する暗めの色が対称に取り入れた衣装になっています。
そして演出も「CHASE!」のときの炎一色から、水も共存するような舞台になっています。
これが新しいスクールアイドルとしての一歩目のビジョン、一人のファンに救われたせつ菜ちゃんが歩みだした新しい「優木せつ菜」のイメージなのですね。
彼女の真面目さと、不器用さ、何かあったときに一人で抱え込んでしまう面倒くささが入り混じって、勝手に突っ走ってしまった菜々さん。
そんな菜々さんが、スクールアイドルの世界にDIVEして、深い水の底で見つけたのは、一度は死んでしまったもう一人の自分。
スクールアイドルが大好きで、スクールアイドルとして活動するための分身であるせつ菜ちゃんを、再び取り戻すことができたような演出に、油断すると泣きそうになります。
彼女が救われたのは、せつ菜ちゃんのことが大好きだと言ってくれたファンがいたから。
「ラブライブ!」という最高の舞台ではなくてもいいと、いつの間にか肩にかかっていたプレッシャーから解放してくれたファンが、大好きを叫んでくれたから。
繰り返しますが、自分と同学年で、しかもスクールアイドルではない侑ちゃんが、新しい「優木せつ菜」を生み出したのです。
もう、最高にエモくないですか。
でも、実は上の画像のシーンで、ちゃんと左上に書いてあるんですよね。
「いずれ再開する」と。
こんな序盤のシーンから、このストーリーがバッドエンドではないこと、せつ菜ちゃんがスクールアイドル活動を再開することを示していたのです。
アニメをみるときに、こういう何気ないシーンの「文字」に注目してみると、クリエイターの伝えたいことや遊び心が見えてきます。
ファンとしてはこういったところも見逃せませんね。
やっぱりラブライブ!は最高です!!
というわけで、第3話「大好きを叫ぶ」を振り返りました。
次回は、虹ヶ咲の天才・愛さんのお話です!
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
【ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】第3話「大好きを叫ぶ」
脚本:田中仁
演出:長友孝和