恐怖の「ひきつけ事件」③

ようやく呼ばれて部屋に入ると採血台の上で
看護士さんがKids君の手の甲をごしごしとこすって
「採れますかねー」と難しい顔を見せた。
採血をするのに手の甲の血管から採るらしく
看護士さんは何度も血管を浮かせようと試みている。
しかし、頑丈でムチムチのKids君の手は「健康優良児」そのもの。
血管がどこにあるのか見えるはずもなく、
それでも採血しなくてはいけないということで
ギャーギャー泣くのをベッドの方に連れて行き、
両親の私達はカーテンの向こうで待たされることとなった。

Kids君は高熱にもかかわらず、ずいぶん泣き叫び続けた。
いつもの「注射は平気さっ」の状態が信じられないほどの大声。
「これが一人目の子だったら、私らもおろおろしてただろうね。」
私は苦笑いして隣に座る夫さんに言った。

ふと、上の二人の子ども達のことが気になった。
Kids君のけいれん中も「おなかすいた」を連発したにーちゃんは
売店のパンとお茶でそれをしのぎながら
病院の大画面のテレビで退屈を紛らわしていたようだ。
ねーちゃんは突然の騒動と
「ひめゆりの塔」でのショッキング映像のせいか
「しんどい」と横になっているという。
（おいおい病人はKids君だけにしてくれよ・・・）

10分ほど待たされてようやくKids君を渡された。
点滴の管が手の甲につながり包帯で固定されていた。
そこだけを見ると、なんだか痛々しく思われる。
私が抱っこすると少し泣き声が和らいだが
おっぱいを欲しがって胸に顔をこすり付ける。
「このままで、おっぱいあげていいですかね？」
看護士さんからOKをもらうと、
授乳が出来るようにと空き部屋を貸してもくれた。
若い看護師さんの沖縄の言葉が
とてもやわらかく温かく聞こえて心も安らいだ。

1時間強かかった点滴の後
血液検査で異常は無いとの結果を聞いた。
ただ、けいれん止めの座薬をうっても熱が下がらないので
解熱の座薬とけいれん止めの座薬と抗生剤を処方してもらった。
「とにかく、水分を摂らせて上げてください。
　そうしないと熱が下がりませんから。」
おっぱいばかりで御茶などをあまり飲まないKids君。
その言葉は私にはちょっと辛いものだった。

総合病院はやはり会計までにとても時間がかかる。
薬をもらう順番が20番以上あるとげんなりしてしまう。
私達はまだしも患者さんでしんどくて来ている人は
本当に病院通いだけでも一苦労だ。
健康でいることのありがたみがここでも痛感された。

結局ホテルに着いたのは夜10時ごろ。
みやげ物を買うのはほかのところでも出来るとは思いながらも
子ども達にはちょっと納得が行かない1日の終わりだったようだ。
「はーーーー疲れたーーーー」
ハッピー大好きねーちゃんには特に今日の出来事は痛かったようだ。

（④につづく）