統合失調症ライフ

闘病生活8年目にして寛解を目指すあじーのブログ

某の話

2011-08-21 | 日記
数年前、某という土地の統失の女の子・Bさんと
仲良くしていた時期がありました。
彼女は他県の統失の男の子と結婚を前提の遠距離恋愛をしていて、
どちらの土地に住むかということでもめていました。
彼女は無職で、
彼は本当にラッキーなことに病名オープン可の仕事場を見つけ、
(統失組合では本当にまれなことなのですが)正社員として働いていて、
明らかに彼女が彼の土地に移住すべきなのに、
彼が自分の土地に来るべきだと言って譲りませんでした。
どうして?と聞いたら、
「彼氏の土地、福祉後進国なんだよね。」
と、彼女は言いました。
「××センターも、○○相談室もないんだって。
そんなところ、不安すぎて住めないよ!某は恵まれているの。」
なるほど、一理あるなぁと思ったものです。
(その後、Bさんと彼氏は別れてしまいましたが、
お互いのためにすごく良い選択だったと思います。)

そんなBさんと私は本当に仲が良くて、
某に遊びに行くことになりました。
飛行機代、電車代、バス代を少ない障害年金から一年かけて貯めて、
やっとチケットを買い、ホテルを手配し、旅行の計画を立て、
さあ行きましょうとなった時、彼女が言ったのです。

「あじーさんが来る話をしたら、
病院のスタッフさんが会いたいっていうの。
午後の30分くらい、『あじーさんを囲む会』をやってくれるって!
来てくれるでしょう?」

何度も言いますが、私は当時ちょっとがんばったブログを運営していました。
それを見たスタッフさんが、私に興味を持ってくれたというのです。
Bさんは、よかったね、光栄だね!という口調でした。
なので、
(え、その日は一日かけて○○に行く予定じゃなかった?!)
と思ったけれど、
「30分かぁ、いいよ。」
と私は答えました。30分だけ抜けるものと思ったのです。
「じゃあ、○○はムリだから、△△に行こうか?」
と、私が言いましたらば、
「え、ムリだよ!」
と、Bさんは答えました。
「私の家から病院まで、電車とバスを乗り継いで片道2時間かかるの。
往復4時間かかるから、△△はムリ。」
……マジか。
「じゃあ、もっと近場の××なら行けるかな?」
と言った私に、
「私、病院に行くとぐったりしちゃうから、その日はどこにも行けないよ!」
と、Bさんは元気良く言いました。
……マジか。

私は携帯を切った後しばらく考えて、母親に相談しました。
「貴重な2泊3日の1日をつぶしていいと思うなら行けば。」
少し考えた後で母がそう言いましたので、
「足代、出ると思う?」
と、聞いたらば、
「出ると思ってたら腹が立つよ。」
ニコリともせずに母は言いました。
母はさらに言いました。
「あじーの妹は某の隣県に住んでるでしょう。
何かの拍子でそれが伝わったらどうする?」
妹は未婚です。私は病名をクローズで生活しています。
「というか、某の病院の個人情報保護の体制はどうなってるの?!」

私は、かかりつけの精神病院のスタッフさんの勉強会に
体験発表をしに行ったことがあります。
その時、私の主治医の先生には、
「絶対口外させないから!」
と、言ってもらいました。
当時の自分には嬉しい額の謝礼もありました。
統失という秘密を切り売りするってそういうことと思っていましたし、
今もそう思っております。
(この考えが今の統失組合の主流と違うことは百も承知で言っています。)

結局、私はこの話を断りました。
で、考えたのです。
Bさんは高校で発病し、中退。
今まで一般の仕事(バイト含む)が一カ月続いたことのない
生粋の統失っ子です。
そういうBさんが私の事情を想像できないのは仕方ない。
問題はスタッフさんです。
あの人たちは十分に、お金をためることがいかに大変か、
旅行に行くということとはどういうことかご存知です。
ついでにBさんが通院にかかる時間もご存知です。
知っててBさんに
「あじーを囲む会をしたいから都合つかないかな?」
と言ったわけです。
言われたBさんが必死に私に頼み込むことまで分かっていたはずです。
それって……と、思ったのが某に疑問を持った最初でした。

話は数年後に飛びます。
私は幸運にも就職がきまりそうになりました。
色んな人に嬉しい報告をしたのです。
すると、Bさんが言いだしたのです。

「お給料、12万円を超える?超えると障害年金を減額されるよ!
私のお友達がやっぱり就職をしたんだけど、
12万を超えたから減額されたの!
法律で決まってるらしいよ、××で習うし!」

と、Bさんは言いました。
自分の病状がいつ崩れるか分からない、
つまりいつ無職に戻るか分からない統失にとって、障害年金は生命線です。
私の給料は12万をギリギリ超える額だったので、
私は慌ててかかりつけの精神病院に行き、確かめました。

「そんな決まりはありません。」

そうなの?
イヤイヤ福祉の充実した某に住む人の意見です。
12万という額もリアルでした。私は社会保険庁まで行きました。

「そんな決まりはありません。」

本当に全国的にそんな決まりはなく、私はほっと一安心したわけですが、
あれは何だったんだろう……と、ずっと思っていたわけです。

そして数年。
私はBさんと縁が切れ、仕事は何とか続き、
ある日家族で夕方テレビを見ていると、横領のニュースが流れました。

「こういう人ってどうやってお金を取るんだろうね?」

と私が聞くと、経理をやっている母が答えました。

「それは、なるべく何も分からなさそうな人に、
納める額が増えましたと言ったり、
お支払いする額が減りましたって言うんじゃない?」

……!

某には××センターや○○相談室があって、福祉が充実しているそうです。
でも、私は一生某に住みたくありません。
あの減額された障害年金の行方が今でも気にかかる私です。