足立借地借家人組合

足立区興野一丁目13番22号 石川方
電話 (03)6806-4393

住まいの貧困考える

2014-10-05 20:14:28 | 新聞報道

   住まいの貧困考える住宅研究・交流集会を開く
 「いま、公共住宅、民間住宅の現場で何が」をテーマに4日、東京都内で2014年住宅研
究・交流集会が開かれ、約50人が参加しました。
 主催は国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)、住まいの貧困に取り組むネット
ワーク、日本住宅会議。
 ネットワークの稲葉剛世話人は、生活保護利用者の住宅扶助基準引き下げへ向け、厚生
労働省生活保護基準部会で論議が急ピッチで進められていることについて、「住宅扶助の
目的は住宅の質の確保であり、基準引き下げは社会全体の住まいの貧困化を招く」と批判。
 ▽議論の過程をオープンに▽拙速な日程を撤回し、関係者などから広く意見を聞く、な
どを求めました。
 横浜国立大学の小田川華子さん(非常勤講師)は脱法ハウス居住者の実情について、国
土交通省が昨年実施したシェアハウス瀾査結果を報告。
 居住者931人中、「狭くて窓がない(多くが5平方㍍未満)」は146人(16%)に上
がり、その4割は収入が不安定でした。「生活困窮者への就労支援を前提としない家賃補
助や低家賃住宅の提供などが求められる」と話しました。
 民間賃貸住宅から立ち退きを迫られる高齢者からの相談が増えている(全国借地借家人
組合連合会)など各団体が報告しました。

他人の土地と知らずに借りた土地に賃借権の時効取得が認められた事例

2014-10-05 18:15:37 | 借地・借家 判例紹介
  他人の土地と知らずに借りた土地に
賃借権の時効習得が認められた事例



 今回、私が担当した、地主から建物収去土地明渡請求訴訟をされ、賃借権(借地権)の
時効取得が認められた裁判例(東京地方裁判所平成25年日月29日判決(平成23年(ワ)第
37310号))を紹介させていただきます。
 まず、事案の概要を述べますと、借地人は、昭和30年よりAさんから土地を借りていたの
ですが(昭和33年建物建築)、Aさんから借りた土地には、Aさん所有土地だけでなく、一
部、別の本件地主の土地が含まれていたことが昭和63年ころ判明したので、その地主に地
代を支払い、平成元年頃より地代を供託してきました(このとき地主は不当に高額な金額
での土地買取や権利金等を要求してきました)。
 すると、近時になり、地主が地代増額の調停を起こし、借地人がそれに応じなかったと
ころ、地主は借地人に土地を貸していないと主張して土地の明渡しを請求してきたのです。
ここで、賃借権の時効取得とは、10年又は20年の時効期間経過により賃借権を取得できる
というもので、要件としては、①土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、
②それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていること」が必要です。
所有権や賃貸権限を存すると称する者から借りた場合等様々な類型があり、占有開始時の
事情等総合的に判断されるものと思われますが、一般には、必ずしも真の所有者との間で
なくとも、賃貸借契約と賃料支払の事実があれば、要件を満たしうるとされます。
 今回の裁判でいうと、借地人が、真の所有者である本件地主所 有の土地が含まれてい
ることを知らずにAさんから土地を借りて、Aさんに地代を支払ってきたということが認め
られ、また、土地の形状や、これまで地主が明渡しを請求してこなかったことなどの事情
を踏まえ、昭和53年に借地人は真の所有者にも対抗できる賃借権を時効取得したと判断さ
れました(なお、裁判中にも地主側は権利金を要求してきていました)。
 判例に沿った一事例判決ではありますが、本件のように、地主が違うということとか、
契約書がないこと等を理由とする、地主の不当な要求に何でも応じる必要はない、という
ことを意識していただければ幸甚です。
   (弁護士 長谷川正太郎)東京借地借家人新聞567号から転載しました

自動改訂特約による地代増額が不相当な場合地代増額の効果は生じない

2014-10-05 12:23:07 | 借地・借家 判例紹介
自動改訂特約による地代増額額が
不相当な場合地代増額の効果は生じない


 地代等自動改訂特約において、地代等の改訂基準を定めるに当たって基礎とさ
れていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが
借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当となった場合には、同特約の
適用を争う当事者は同特約に拘束されず、同項に基づく地代等増額請求権の行使
を妨げられないとした事例。
(最高裁平成15年6月12日第一小法廷判決)

 借地人は、東京都板橋区内の私鉄駅前の土地に大規模小売店舗用建物を建築し
て大手スーパーを誘致することを計画し、昭和62年7月に地主との間で期間35年
間の土地賃貸契約を締結しました。この際、大手スーパーが入居する昭和63年7
月以降の地代を月額633万円余と定めるとともに、当初地代額を3年後に15%
増額し、その後も3年毎に10%ずつ増額するという地代自動改訂特約が合意さ
れました。この特約が合意された昭和62年7月当時は、バブル経済で東京都23区
の土地が急激な上昇を続けていた時期です。
 借地の地代は、特約に基づいて3年後の平成3年には15%、平成6年にはさら
に10%に増額されましたが、平成9年7月1日には、借地の価格は契約時の半額
以下になっていました。そこで、借地人は、地代をさらに増額するのは不合理と
考え、従前の地代額を支払いを続けるとともに、平成9年12月には従前の地代を
20%減額するよう請求した、というものです。
 最高裁は、冒頭のとおり述べたうえ、地価の動向が下落に転じ、当初の半額以
下になった平成9年7月時点では、特約の適用を争う借地人はこの特約に拘束さ
れず、地代増額の効果が生じたということは出来ない、と判断しました。
 本判決は、借地借家法11条1項との関係から地代等自動改定特約の効力を論じ
た初めての最高裁判決です。なお、地代が不相当となった後、特約に基づいて増
額された地代を支払った借地人が地主に対して不当利得として返還を求めること
ができるか、という問題が残りますが、特約の適用を争うことなく増額された地
代等を支払ったときには不当利得になるとはいえないとの考えも示されており、
今後の議論が待たれるところです。

        (弁護士 大浦郁子)

 東京借地借家人新聞 8月15日号