足立借地借家人組合

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ご用心 相続税ビジネスー不動産投資に落とし穴ー

2017-05-04 19:40:40 | 住宅問題全般

しんぶん 赤  旗  2017年4月19日(水曜日)
       
 増税された相続税の対策と銘打ったセミナーが広が
 っています。その主なもの が不動産への投資ですが、
 甘い話には落とし穴が…。
 「相続税ビジネス」に対する注意点を税理士の吉元伸
 さんに書いてもらいました。

 日本は少子高齢化が進み、人口減少社会に向かっているにもかかわらず、住宅の着工件数が毎年伸びています。
空き家が増えてその対策を検討しているという新聞報道もあるなかで、この異常な現象はなぜ起きているのでしょうか。
 この住宅増加は、持ち家の割合が増えたのではなく、アパート建設が急増した結果です。東京などの首都圏だけでなく、
安価な価格でアパートが手に入る、比較的地価の安い東北・北陸・山陰などの地方にも及んでいます。
 アパートなどの賃貸物件が増えているのは、住宅が不足しているからではありません。相続税の増税問題が大きく影響
しているのです。
 2015年の税制改定で相続税の課税対象が拡大され、15年1月1日から相続税がかからない基礎控除が引き下げられまし
た。相続税対策のセミナーに多くの聴衆が参加するなど、関心の高さがうかがえます。

 商機と考え

 こうしたセミナーでは相続財産の圧縮を目的とした不動産投資を勧めています。セミナーの主な主催者は建設会社で、
増税を商機と捉え、売り上げにつなげたいという思惑も垣間見えます。
 では、不動産投資がなぜ相続税の節税になるのでしょうか。
 現金は、ほぼ全額が相続財産となりますが、たとえば賃貸物件に投資をすると、土地や建物の評価額は購入時よりも
低くなります(土地は7~8割程度、建物は約7割)。不動産は相続税評価額が現金よりも小さくなるため、現金で不動産
を購入すると、その差額が節税につながるわけです。
 しかし、この節税の効果は、物件購入時に最大に現れますが、時がたつにつれて、なくなってきます。

  「陰の主役」

 アパート建設ラッシュを推し進めている陰の主役は金融機関です。成長戦略を掲げる安倍政権の方針に従い、金融庁は
銀行に、成長企業に融資するよう指導を強めました。その結果、大量の資金が不動産投資に向かったのです。 金融機関
はアパートローンなどのハードルを下げ、融資しやすい環境をつくったため、16年度の不動産融資は12兆円を超えまし
た。
バブル期を上回る規模となっています。さらに日本銀行による異例のマイナス金利政策の導入で、金利は過去最低のライ
ンに達し、このことも購買意欲に拍車をかけているのです。

 空室だらけ

 しかし、この異常な建設ブームはすでに破たんが見えています。今年に入って首都圏では、新築2年目以降のアパート
空室率が3割超と過去最高水準に達しています。
 この供給過剰の状態は日本が人口増に転じない限り、当分続くことになりそうです。待ち受けているのは、空室だらけ
のアパート群ということになるでしょう。十分に研究を重ね、10年、20年先を見通した選択をしないと、節税どころか
財産そのものを失うことになります。
 不動産投資を節税目的にすることは、あまりにもリスクが高いのです。庶民の不安をあおりながら商売につなげよう
とするのは、倫理観を失った、まさに資本主義経済の劣化した姿に見えます。甘い話に惑わされず、大切な財産を守ってほしいと思います。