足立借地借家人組合

足立区興野一丁目13番22号 石川方
電話 (03)6806-4393

相場による更新料の支払特約は法定更新の場合に支払義務は発生しない

2014-02-08 15:32:27 | 借地・借家 判例紹介
相場による更新料の支払特約は法定更新の場合に支払い義務は発生しない
 今回は、更新料を支払う必要がないとした結論自体は目新しいものではありませんが、葛
飾の借地借家人組合の組合員の事件で完全勝利判決を得た事案であり、しかも、2011年
7月15日の最高裁判決の後も、従前の判例を踏襲した結論であったという観点から、東京
地方裁判所平成23年7月25日判決を紹介します。
 本件は、借地人が法定更新を主張して更新料の支払いを拒絶したところ、地主が、借地人
を被告として、更新料不払いの債務不履行に基づく土地の賃貸借契約の解除を主張し、建物
収去土地明渡しを求めてきた事案です。前回の更新の際に作成した賃貸借契約書には、特約
条項として、手書で「期間満了時に建物が存在するときは、当事者が協議のうえ更新するこ
とができる。契約が更新されたときは、賃借人は賃貸人に対して相場による更新料を支払わ
なければならない」との記載がありました。
 地主である原告は、第一に、更新が合意更新である旨主張した上で、仮に法定更新であっ
たとしても、上記条項は法定更新の場合にも適用があるため、いずれにしても更新料の不払
いは債務不履行に該当し、契約解除は有効と主張しました。
 これに対し、借地人である被告は、更新の合意などしたことはない、実際に契約書を新た
に作成していないし、更新料を支払うという約束もしたことはない、と完全に否認した上で
契約書の更新料支払いの文言は、「当事者が協議のうえ更新する」場合、つまり合意更新
の場合に更新料を支払うという内容であり、法定更新の場合はこれに該当しないなど主張し
て争いました。
 判決は、原告(地主)が、本件更新料支払条項において相場とされる更新抖の具体的金額
や具体的な合意内容等を明らかにしていないことを理由として、合意更新の存在を否定しま
した。また、上記更新料の支払条項は、「合意更新、法定更新を問わず適用されることが一
義的に明らかであるとはいえ」ないとし、むしろ上記文言は、合意更斯の場合だけに適用さ
れるのが自然であるとして、更新料を支払っていないことは債務不履行にあたらないとして
結論として地主である原告の請求を棄却しました。
 もともと更新料は、法律上支払義務のないものです。前記2012年7月15日の最高裁
判所判決に従っても、賃貸借契約書の一義的かつ具体的に記載された更新料の支払条頂があ
る場合のみ例外的に更新料支払義務が発生するというのが合理的な解釈です。本件の場合、
賃貸借契約書に、特約条項として手書きで更新料に関する記載がありましたが、「相場」と
いう言葉は更新料の内容を一義的かつ具体的に表しているとは言い難く、上記判断も、「相
場」による更新料を「支払う」という文書だけでは、上記一義的かつ具体的な支払条項とい
う要件を満たさなかったと判断したものと思われます。
 契約書の更新料のことが記載されていても、必ずしも支払義務が発生するわけではない例
といえます。
         (弁護士 西田穣)

足立借地借家組合
足立区千住1-26-7 棚網方
電話   (03)3882-0055
FAX (03)3882ー0078
定例相談会 毎月第2日曜日午後1時から
通常業務 月から金 午前10:00~午後4:00

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借地契約上の無催告解除特約による契約解除の効力が否定された事例

2014-02-06 15:41:04 | 借地・借家 判例紹介
借地契約上の無催告解除特約による
契約解除の効力が否定された事例


借地契約上の無催告解除特約による解除の効力が否定された事例(東京地裁平24・1・13判例時報2146号)
 (事案)
 (1)地主XはAに対し、本件土地を建物所有目的で、期間平19・12・1から20
年間、賃料月額13万6060円で賃貸した。(2)この借地契約には、①賃料の滞納額
が2か月分に達したとき、②Aにつき競売、破産があったときには、Xは無催告で契約を
解除できる旨の特約があった(無催告解除特約)。(3)平21・8・3 Aは破産宣告
を受け、平22・5・17本件建物について競売開始決定があった。(4)Xは、平22・
6・11Aに対し、同年4月分と5月分の賃料が破産管財人からもAからも支払われなか
ったことを理由に本件借地契約を解除した。(5)Yは平23・1・4競売代金4583
万円余りを納付して本件借地権と本件建物を取得した。(6)そこでXは新賃借人Yに対
し、建物の収去と土地の明渡を求めて提訴した。
 (判決要言)①賃料不払を理由とする解除について
 無催告解除特約は、催告をしなくても不合理とは認められないような事情が存する場合
には、催告なしで解除権を行使することが許されるとの趣旨の約定として有効である。こ
れを本件についてみると、滞納額2か月分27万2120円は競売代金4533万円余り
に比し僅少であること、未払期間は半月から1か月半程度と比較的短く、それ以外に賃料
不払いはなかったこと、抵当権者(競売申立人)は裁判所から地代代払許可を得た上で、
X側に対し、本件解除前に地代代払の意向を何回も電話で伝え、平22・6・22には遅
延損害金も含め全額供託し、その後も供託をしており、背信性は認められない。また、X
がAに賃料支払の催告をすれば、Aを通じて借地契約解除の可能性があることを抵当権者
が知り、賃料の代払いをすることも十分考えられるのであるから催告をする実益がないと
は言えない。以上によれば、賃料支払の催告をしないことが不合理とは認められないよう
な事情があったということはできないから、本件解除は無効である。
 ①破産または競売を理由とする解除について
 破産又は競売を理由とする無催告解除の特約が事情の如何を問わず無条件に賃貸人に契
約解除権を認めるものであるとすれば借地借家9条(借地権の存続に関する借地借家法の
規定で借地人に不利なものは無効)この点についても1と同じ理由で、無催告で解除して
も不合理であるとは認められないような事情があるとも言えないから、本件解除は無効で
ある。
(寸評)  この判決は、借地・倍家契約書にほとんど必ずと言ってよいばど記載のある
無催告解除特約について、確立された判例理論に従うものであり、もとより正当である。
要するに、無催告解除の特約をそのまま適用すれば不合理である場合はその効力を認めな
いというものである。「特約」に怯えることはない。

       (弁護士 白石光征)

足立借地借家組合
足立区千住1-26-7 棚網方
電話   (03)3882-0055
FAX (03)3882ー0078
定例相談会 毎月第2日曜日午後1時から
通常業務 月から金 午前10:00~午後4:00
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借地権の基本ー借地の一部を駐車場

2014-02-06 15:30:06 | 借地・借家 判例紹介
 借地権の基本ー借地の一部を駐車場
として第三者に貸すのは転貸しかなど


 そもそも借地権とはなにかー東京地方裁判所平成22年3月15日判決
 借地権は、「建物の所有を目的とする」地上権又は上地の賃借権といいます(借地借家法
第二条一頂)。「建物の所有の目的」でなければ、借地借家法の適用がなく、民法の賃貸借
になるので、借地借家法の法定更新等の保護は受けられません。
 事案は、契約書には「鋼材及び駐車場」と書かれていましたが、「プレハブ構造の仮設建
物」がありました。判決は「借地権ではない」として次のように判断をしました。
「被告が設置した仮設建物も、いわゆるプレハブ構造のものであり、徹去も容易である上、
建物の登記を経由しておらず、本件土地の所有権を取得した者に対して対抗要件を備えてい
なかったこと、本件土地の主たる目的は『鋼材置場及び駐車場』であり、仮設建物の敷地の
広さも約1190坪の本件士地に比して僅少であり、本件土地が建物所有目的であるとは認
めるに足りない。したがって、本件賃貸借契約につき借地借家法の適用がないことが明らか
である。」

 借地の一部を駐車場して第三者に貸すのは転貸か(地主の承諾がいるか)
ー東京地方裁判所平成5年3月29日判決
 事案は、駐車場の面積は約15ないし18平万メートル程度で、土地全体の面積125.
48平方メートルの12ないし15パーセント程度でした。駐車場の契約内容は、自動車1
台の駐車場として賃料を月額2万5000円ないし2万6000円と定めるほか、敷金第三
者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期問については1年間で
合意による更新可能としています。判例は「地主の承諾は必要」と判断しました。 「民法
612条(賃貸人の承諾なく貸借人が借地権を譲渡し目的物を転貸することを禁じ、これに
反したときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができるものと規定)の趣旨に照らせば、
第三者に使用収益をさせた対象が賃貸権の目対物である借地の一部であるからといって民法
612条にいう「転貸」に該当しないということはできない。
 本件においては、契約内容及び利用形態であることに照らせば、本件駐車場部分を駐車場
として使用させたことは転貸に該当する。たしかに、借地上に商店、飲食店、劇場等の、不
特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合において、自動車を利用する顧
客の来訪を容易ならしめるために、右建物に付属して不特定多数の顧客を対象とするいわゆ
る特問貸しの駐車場を設置するような場合には、第三者を対象とする駐車場として借地の一
部を使用することが、社会通念上右建物所有ないし管理の目的の範囲内の利用行為と認めら
れ、転貸に該当しないものと認められることもあり得るものといえる。しかし、特定の賃借
人を対象として賃貸期間1年間しかも更新を前提とする駐車場契約を締結しているのであっ
て、本件駐車場部分を第三者に駐車場として使用させたここについては、社会通念上本件建
物所有の目的の範囲内の使用と認めることは到底できないものであり、転貸に当たることは
明らかである。

    (弁護士 黒岩哲彦)

足立借地借家組合
足立区千住1-26-7 棚網方
電話   (03)3882-0055
FAX (03)3882ー0078
定例相談会 毎月第2日曜日午後1時から
通常業務 月から金 午前10:00~午後4:00
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

管理会社従業員の不法な追い出し行為に165万円の賠償が認められた事例

2014-02-06 15:20:10 | 借地・借家 判例紹介
      管理会社従業員の不法な追い出し行為に165万円の賠償が認められた事例

本件は、賃貸人から貸室の管理を委託されている管理会社の従業員が、当該貸室内にあった
賃借人の家財道具等を搬出し、玄関鍵のシリンダーを交換して賃借人を追い出した行為(以
下本件行為と言います)について、①管理会社の当該従業員の不法行為について管理会社に
使用者責任を、及び②賃貸人に共同不法行為責任を認めた事例です(大阪高裁平成23年6月
10日判例2145、32)。
 賃借人は本件貸室を賃料月額3万5000円で賃借したものの、平成21年5月からの6か
月分の賃料を滞納しました。これに対し管理会社は「入金の無い場合は、鍵をロックして解
約させていただきます)との督促状を3回に渡り送りつけました。賃借人は当時、失業中で
あり、同年9月には生活保護開始決定を受けました。そのような中、同年10月管理会社の従
業員(賃貸人の子でもある)は、同行しリフォーム業者とともに本件行為に及びました。
 大阪地裁は、本件行為につき不法行為を認め管理会社の使用者責任を肯定したものの、賃
貸人の共同不法行為責任を否定しました。また損害として、家財道具について4万300円
慰謝料として15万円の限度で認めたにすぎませんでした。
 控訴審である大阪高裁は、原審同様、従業員の本件行為が不法行為に該当するのは明らか
とし、管理会社の使用者責任を肯定しました。
 他方で原審と異なり、賃貸人が本件貸室を含むマンションの所有者であり、管理会社に管
理を委託し、本件賃貸借契約について管理会社にその管理権を行使するのに必安な代理役を
包括的に授与していたこと、従業員が賃貸人の子であり、賃貸人が管理会社の取締役に就任
していることを考慮し、管理会社が賃貸人から授与されていた包括的な代理権に基づき賃貸
人の子が管理会社の従業員として本件行為に及んだごとについて、賃貸人も事前に包指的な
承諾を与えていたと認められるとし、賃貸人の共同不法行為責任を認めました。また損害に
ついては、家財道具の損害について詳細に検討し計70万、慰謝料についても80万円を認容し
、弁護士費用15万円とあわせ合計165万円を認めました。
 上記引用判例時報の判例解説では、違法な自力救済(賃貸借契約が解除されている場合の
実力行使)、違法な不動産侵奪(賃貸借契約が解除されていない場合の実力行使)が社会問
題になるほど頻発しているとし、その違法はいうまでないことであり、「私人間の紛争であ
っても法治国家である以上、その責任の厳然とした追及とその防止に向けた毅然とした対応
とが求められるはず」(引用判時33頁)としています。
このような中、上記事実関係をもとに共同不法行為責任を認めた点は、裁判所として本件問
題に「毅然とした対応」を示したものと言えるでしょう。そもそも法治国家である以上、違
法な実力行使が許されるわけでないことは言うまでもないことです。また本件の賃借人のよ
うな状況に置かれている人は、いまのご時世、決して珍しくありません。本件行為はその弱
みにつけ込む行為とも言えます。「厳然とした追及」と「毅然とした対応」がなされた事案
として紹介します。

  (弁護士 枝川充志)

足立借地借家組合
足立区千住1-26-7 棚網方
電話   (03)3882-0055
FAX (03)3882ー0078
定例相談会 毎月第2日曜日午後1時から
通常業務 月から金 午前10:00~午後4:00
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする