足立借地借家人組合

足立区興野一丁目13番22号 石川方
電話 (03)6806-4393

賃料増額請求を受けた借地人は相当と判断する金額の地代を払えばよい

2014-01-11 10:28:40 | 借地・借家 判例紹介
 地主から賃料増額請求を受けた借地人が相当と考える地代を供託していたが、その地代額
が後に裁判所で確認された相当賃料より低い額たったとしても債務不履行(契約違反)とならないとした事例(最高裁平成5年2月18日判決)。


  【事案の概要】
 借地人は昭和45年に本件土地を地代676O円で賃借した。地生は昭和57年に3万6
052円に、昭和61年に4万8821円に、それぞれ地代増額請求をした。借地人は67
60円を支払おうとしたが地主か受領を拒否したので、昭和59年6月まで昭和62年7月
以降2万3000円を供託した。
地主は借地人が請求どおりの地代を支払わないため昭和62年7月に支払いを催告し、支払
わなければ賃貸借契約を解除する旨通知したが、借地人が応じなかったため土地開け渡しを
求める訴訟を提起した。1審、2審とも地主の上地開け渡し請求を認めた。

  【判旨】
 2審判決取消し、地主の請求棄却。
①借地人が相当と考える地代を供託しているので、賃貸借契約解除の理由となる債務不履行
 はない。
②借地人が固定資産税等、本件土地の公租公課の額を知りながら、それを下回る額を供託し
ている場合は、その額は著しく不相当であり債務不履行(契約違反)ともなりうる。
③借地人が供託した額は公租公課の額を上回っているから、本件土他の地代が隣地の地代に
比べてはるかに低額であると知っていても債務不履行(契約違反)とはならない。

  【寸評】
 借地借家法11条2頂は地代が「近傍類似の上地の地代等に比較して不相当」となったと
きは地代の増額または減額請求ができると定め(減額請求しないとの特約は無効)、同条3
頂は増額について地主と借地人の協議が調わないときは、借地人は裁判で増額が决まるまで
は「相当と認める額の地代」を払えば足りると定めている。
本件は「相当」の判断は借他人が相当と考える額でよいとする一方、その額が公租公課を下
回る額であることを知っていた場合は借地人が相当と考えていても債務不履行(契約違反)
となるとしたものである。
 なお、借地人が相当と考える地代に減額請求しても、地主は相当と考える地代を請求でき
る(借地借家法11条3項)ので注意されたい。
      (弁護士 大竹 寿幸)


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保証会社の組織的な追い出し行為が不法行為として慰謝料を命じた事例

2014-01-11 10:02:40 | 借地・借家 判例紹介
  借家人が、家賃支払を遅滞した場合に、保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新
され、その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約におけ
る特約が消費者契約法10条により無効とされるとともに、保証会社が根拠不明の金銭を含
め借家人に過分な支払をさせる行為や退去勧告を組織的に行っていたことが不法行為に該当
するとされた事例(名古屋地裁平成23年4月27日判決)


【事案の概要】
 甲(借主とA(貸主)は、平成19年11月、マンション一室の賃貸借契約を締結した。
この契約に際し、賃貸住宅等の入居者の保証人受託業務等を目的とする株式会社乙が甲との
間で保証委託契約を締結して甲の連帯保証人となったが、同契約には、甲が賃料の支払を1
回でも滞納した場合、保証委託契約が無催告で自動的に債務不履行解除された上で、自動的
に同一条件で更新され、乙に対して、その都度一万円の更新保証委託料を支払うという条項
(解除更新料特約)が含まれていた。この特約に基づき甲は乙へ解除更新料として合計10
万円を支払った。また、乙は、「手数料」名目での金銭請求や約5分間に10回以上の不在
着信を残すなどの甲への執拗な督促や退去の勧告を何度も行った。

 【判旨】
解除更新料特約は、甲(委託者)が初回保証委託料を支払って乙(受託者)に対する債務を
履行しているのに、乙が自ら受託した保証債務を履行する前に自動的に債務不履行解除られ
ることになり、明らかに契約の趣旨及び信義則に反するから、消費者契約法10条により無
効である(既払解除更新料10万円の返還を認める)。
2、乙が、根拠の明らかでない金銭も合め甲に過分な支払をさせていたことや、甲とAとの
問の儀頼関係が破壊されたと認められる状況には至っていないにもかかわらず賃貸物件から
出て行くように働きかける行為等を組織的に行っていたことは、社会通念上許容される限度
を超え不法行為に該当する(慰謝料として20万円の支払いを認める)。

      【寸評】
 物件を借りるに際して、迎帯保証人を用意することができない賃借人のための賃貸保証委
託会社が急増しているが、賃借人の立場の弱さにつけ込み賃借人に、過大な義務を負わせた
り、不当な要求に及ぶ業者は少なくない。本事例は、そのような業者の行為を組織的な違法
行為と認め慰謝料の支払いを命じたものであり、悪質業者への警鐘となると思われる。  


       (弁護士 松山耕平)

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一義的で具体的更新料特約は高額でなければ有効と判断した最高裁判決

2014-01-11 09:49:38 | 借地・借家 判例紹介
 更新料特約を有効と判断した最高裁判所例(平成23年7月15日第2小法廷判決)

 これまで裁判所の結論が分かれていた更新料条頂について、最高最刊所が有効と判斷した
事例を紹介します。ただ、この判例の射程は限定的ですので誤った理解をしないよう往意し
て下さい。
 この事件は、京都市内の共同住宅の1室についての借家契約が問題題となっています。契
約は、賃貸期間1年・賃料月3万8000円となっており、更新の際は更新料として賃料の
2ヵ月分を支払うことが契約書に記載されていました。契約は4回更新された(最後の1回
は法定更新を主張して更新料を支払っていない)ところ、賃借人が3回の更新料の際に支払
っだ合計22万8000円の返還を求めたのに対し、賃貸入が法定更新の際にも更新料を支
払べきと主張して最後の1回の法定更新の際の更新料の支払いを求めました。この更新料条
項が消費者契約法10条に反するかが争点です。 
 この事案に対し、最高裁は、更新料の性質について、「更新料は、賃料と共に賃貸人の事
業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継
続することができることからすると、更新料は一般にに、賃料の補充ないし後払い、賃賃借
契約を継続するための対価等の趣旨を含む総合的な性質を有する」としています。 その上
で更新料は、民法等の規定に比べて、消費者である賃借人の義務を加重するものとして、消
費者契約法10条の要件の一つに該当することは認めました。しかし、賃貸借契約書に一義
的かつ具体的に記載された東新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される
期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条のいう「消
費者の利益を一方的に害するもの」とはいえないとし、もう一つの要件は満たさないとしま
した。つまり、契約書に明確に更新科の金類まで記載されている場合、その更新料の合意は
消賢者契約法に反せず、法定更新を選択した場合でも更新料を支払う義務があるとしたのです。
 この判例は今後の借地借家の問題に強い影響を及ぼことは明らかです。一般的に借家契約
では、更新料条頂として金額が明示されている場合が多く、首都圏では2年ごとに1~1・
5ヵ月の更新料条項というのが多いので、著しく高額とまでも言えず、契約書の更新料条項
を無効とするのは難しいと思います。他方、借地契約の場合、そもそも契約書に更新料条項
がなかったり、あっても、金額まで記載されていなかったりする事例がほとんどです。とす
ると、最高裁が指摘する「一義的かつ具体的な更新料の合意がありませんから、従来どおり
法律上も慣習上も支払義務のない更新料を払う必要ありません。また、最高裁の判断だと、
仮に更新料条頂が明確に規定されていたとしても、更新料が著しく高額な場合は無効となる
余地がありますので、この点も注意して下さい。
        
        (弁護士 西田穣)

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更新料支払請求権は客観的に金額を算出できる具体的基準の定めが必要

2014-01-10 09:30:15 | 借地・借家 判例紹介
 借地の更新料請求が棄却された事例
 (東京地裁平23・3・31判決・控訴なし)


 事案の概要
 (I)木件は、昭和63年12月、更新料350万円を支払って合意更新をした借地人Yが
地主Xから20年の期間満了による更新料393万8170円の支払請求の訴訟を提起され
た事案。Xの支払請求の根拠は、昭和63年12月の更新の際、20年後の更新の際にも、
更新料を支払う旨の合意があったというもの。
 (2)訴え提起前、YはXの代理人弁護士と金額について交渉、いったん175万円の
支払意思を示したが拒否され、その後北借組と相談の上、更新料の法的性質についての正
しい知識を得て法定更新を選択することにしてこの意思表示を撤回していた。

 《判旨》
 (1)判決は、原告・被告の各本人尋問を踏まえ、昭和63年12月の契約時点では「Y
も期間満了時に更新料の支払及び額についてXと協議することは念頭にあったと認められ
るが、更斯料を支払う旨の合意(黙示の合意を含む)があったとまでは認められない」と
してX主張の合意を否定し、Xの請求を棄却した。 
(2)これで裁判官の役目は終ったはずであるが、判決では「あえて付言する」として次
のように判示した。「仮に、賃貸借契約の当事者間で更新料の支払につき合意がされたと
しても、その法的性質については種々の考え方があり得るところであって、更新料の法的
性質からその算出基準ないし算出根拠が一義的に導かれるものではないから、更新料の支
払請求権が具体的権利性を有するためには、少なくとも、更新料支払の合意をする際に、
裁判所において客観的に更新料の額を算出することができる程度の具体的基準を定めるこ
とが必要であって、そのような基準が定められていない合意は、更新料支払請求権の発生
原因とはなり得ないものと解される」。そして、本件ではその「具体的基準についての合
意は成立していない」として、この点でもXの請求は理由がないとした。

《寸評》
本件は私かYさんの代理人としてかかわった事件です。Yさんの勝訴は当然ですが、この
判決で意義のあるのは、判旨の(2)です。
「更新料を払って下さい。はい、払います」程度の「支払合意」ではまだ「更新料支払請
求権の発生原因」にはならないが、さらに「客観的に額を算出できる具体的基準」が定め
られていると更新料支払請求権が「具体的権利性」を帯びてくるということで、そうする
と地主が勝訴することになります。例えば「借地権価格の5%」などとに載されていると
「客観的に額を算出できる具体的基準」になる可能性があります。既存契約書の解釈、更
新契約書の作成に当っては注意が必要です。

       (弁護士 白石 光征)

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増改築禁止特約に違反しても契約解除が認められなかった事例

2014-01-10 09:19:32 | 借地・借家 判例紹介
増改築禁止特約に違反しても契約解除が認められなかった事例。
【最判昭和41年4月21日民 集21巻4号720頁】


増改築禁止条約とは、通常、借地上の建物につき増改築する場合には予め地主の承諾を要
し、違反した場合は催告なしで契約解除できるという特約です。このような特約に違反す
れば債務不履行(契約違反)として契約の解除が認められそうです。しかし、継続的な契
約である借地借家契約においては、賃借人に債務不履行があったとしても、債務不履行の
内容が、当事者間の信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事情がある場合
は、賃借契約の解除け認められないとの理論(信頼関係破壊理論)が判例上確立していま
す。このの理論は賃料不払いやむ無断転借の場合にも録用されています。
 裁例の事案は、建物一階のの根太(床の下地部分)及柱を交換し、2階部分を取り壊し
たうえ、従前より広い2階を増築したというものです。
 一審では解除が認められましたが、控訴審では「この修理は家屋維持確保のため普通の
ことてあるから特約をもってこれを禁止することはできない」とし、2階の増築について
は、この程度の増築は借地の効率的利用のため通常予想される合理的な範囲を出ない」と
し、特約に基づく解除は認めらかないとし、最高裁も控訴審の判断を支持しました。
 ところで、この特約は建物の増改築をする場合の特約ですから、工事の内容前建物の維
持保全を目的とする修繕工事にとどまるのであれば、増改築禁止特約には違反しません。
 また、増改築禁止特約がある場合で、『土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき
当事者問に協議が整わないとき』は、裁判所に地主の承諾に変わる許可を求めることがで
きます(借地借家法17条2項、借地法8条の2第2頂)。しかし、修繕については地主の
承諾に変わる許可が、予定されていませんので、修繕工事に地主の承諾を要するとの特約
は、上記規定に反する借地権者に不利な特約とし無効と解されます(借地借家法21条、
借地法11条参照)

 他方、「修繕」か「改築」か微妙な場合まずは地主の承諾を求めて協議が整わない場合
には裁判所に地主の承諾に変わる許可を求めることをおすすめします。以上

  (弁護人 大竹寿幸)

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