私達の育てた小さな緑が失われようとしています

緑のまちを望んで、私たちは緑を育てました。その小さな緑が失われようとしています。

NPOのお金の使い方

2005年04月09日 | 資金調達
 資金ゼロからスタートした私たちの活動は、会費や財団からの助成金や企業からの寄付だけでは足りなかったため、必要な物品を持ち出すか、もらってくるかして始まった。物を運ぶ軽トラックもスタッフから借り、畑を耕す道具をそれぞれ持ち出し、仕事場で不要になった備品を集め、手弁当で活動をした。何もないことがかえってメンバーの結束を生み、組織に『持ち寄り文化』をつくった。『持ち寄り文化』は、主体性と組織の結束を生むという良い側面もあるが、立ち上げ期を過ぎ、資金的にも運営が安定しつつある段階においては、『持ち寄り文化』に依存することが返って問題になることもある。
 スタッフのⅠさんは立ち上げ期から活動に関わっていて、昨年からは役員も引き受けてもらっている。月1回の定例会では、トン汁やおにぎりなどを作ってきてくれるので大変ありがたい。みんなが喜んで食べてくれるもので、Iさんも毎回大ナベ一杯につくってくれる。
 ところが、いささか困ったことは、Iさんが料理の材料費を受け取ってくれないことだ。定例会の予算はあらかじめ計上してあるので、それを使ってほしいと頼んでいるのだが
「みんなが喜んでくれればそれでいい」
と言って聞かない。太っ腹なのはうれしいのだが、ありがとうで済ませられるレベルをあきらかに超えている。材料費はバカにならないし、会費を払っているにもかかわらず、Iさんの自腹で料理を食べていると知れば、かえってみんなが食べづらくなってしまう。Iさんの組織を思う気持ちは大変ありがたく思いつつも、やはり組織の事業費を個人の財布が肩代わりする状況はよくない。
自分の財布の使い方はどうしようがその人の自由だ。しかしNPOの場合、どこから資金が入ってきて、それをどう使ったかはとても大切なことだ。会費・助成金・寄付・事業収入など、様々な資金源からお金が集まっているNPOにおいては「組織」と「個人」の財布がごっちゃになることは、かえって問題を抱える結果になりかねない。
 NPOのお金の使い方でもっとも大切なのは
『いかに説明のつく活用をしたか』
である。資金や労力を提供してくれた関係者(ステークホルダーともいう)に対し、
「私たちは集めたお金をこのような活動に使い、その結果このような成果を上げることができました」
と説明する責任がNPOには求められる。
 実際、私たちの活動でも資金に関しては、説明責任という観点から厳しいチェック体制を整えている。会計さんは伝票・現金出納帳・レシート保管ファイル・口座記帳などを管理し、いつでも説明責任を果たせる状況をつくってもらうようにお願いしている。さらにホームページなどではどのような活動をしているかをできるだけ情報公開している。せっかくいいことをしているのだから、財源や支出に関してもその根拠を明確にし、情報公開していきたい。
そんなわけで申し訳ないが、Iさんにはなんとか材料費を受け取ってもらうことを了承してもらった。
 そうとはいえ、そもそもボランティアと『持ち出しの文化』は不可分であり、またすべての経費を出すことなど私たちの組織にはできない。自腹を切って活動するからこそ、組織への思い入れも強くなるのだ。その気持ちも痛いほどよくわかる。
 そこで
「定例会で料理を作るときの材料費は計上するが手間や家での調理はボランティア」
「買い物に行くときにつかう車のガソリン代は持ち出し」
「1000円以上の出費は計上するので会計と相談する」
など、スタッフ間でのルールを決めることにした。基準を決めることでボランティアもすっきりとしたようだ。

 『関係者(ステークホルダー)に説明できるお金の使い方』に慣れるまで、スタッフの一部は時間がかかっているようだ。しかしその悩む姿が、NPO運営への共通理解を深めると同時に、組織としての成長を感じさせもするのである。