私達の育てた小さな緑が失われようとしています

緑のまちを望んで、私たちは緑を育てました。その小さな緑が失われようとしています。

キアゲハを守るためのプログラム開発

2005年04月26日 | NPO設立・事業企画・運営
「姪っ子が学校の授業でアゲハの観察をしたいっていうんだけれど、エコプチにアゲハの幼虫っているかなあ?」
と友人から連絡があった。以前ブログでも書いたが、わが組織内有志で立ち上げた『キアゲハ救出隊(現在隊員はたったの3名)』は、畑の害虫をわざわざ保護して繁殖させるフトドキ者としてエコ農園利用者から非難の目で見られている。キアゲハの食事用ニンジンが順調に育っているだけに、小さな賛同者がいることはウレシイ。うれしいことは続くもので、また数日後今度は別の親御さんから同じ話を持ちかけられた。
「?」
急に人気のキアゲハたち。この動きはなんだ?
聞けば、この時期小学校では環境学習の一環として、昆虫の観察などがはやっているようだ。
これは子供たちを絡めながら、組織内における『キアゲハ救出隊』のプレゼンスを高めるチャンスかもしれない。
「子供たちのためですから」
といえば、かわいい孫のようでスタッフたちも無下にはできまい。子供たちに環境学習の機会が提供でき、スタッフたちも子供と触れ合えて喜び、キアゲハが害虫扱いされずに育てられる、これぞ三方よしではないか!
ということで、さっそくキアゲハ救出隊で相談をして子供向けの環境学習プログラム『キアゲハ救出大作戦!』の事業企画をした。

エコボランティアで近隣の小学校でPTAをしているⅠさんを通じて先生に打診し、クラス単位(30~40名)での課外授業とする。時間は1時間。場所はエコ・プチテラス。
主な流れとしては
1、この作戦の趣旨説明。なぜキアゲハが減っているか?何を食べているか?など
2、エコ農園内でキアゲハを探して捕獲
3、かごの中にニンジン、パセリなどを入れて幼虫を育てる環境をつくる
4、飼育方法の説明
5、観察ノートをつけ、HPなどでフィードバックする
といった具合だ。
資料の作成は、去年のキアゲハの飼育したときのものを参考にしながら自前でつくる。
「本当はプロジェクターでもあれば、子供たちに写真を見せながらわかりやすく説明できていいのにね」
との意見が出たので、財団に機材の助成申請を行った。今年は初回なので、小規模の講座にして一連の流れを確認し、来年以降プログラムを本格化することとした。
昨年から現場を活用した小規模プログラム(リース作り、キムチ作りなど)は試験的に実施していて、準備や運営の仕方は慣れつつある。
これが成功すれば、またひとつ外部との交流を兼ねた環境学習プログラムが増えることになる。
私たちは地域に現場を持って活動しているので、その強みを最大限に活かすためにも、こうしたプログラムを少しずつ開発中である。
それもこれも『キアゲハ救出隊』の活動を正当化するためのものだ、ということは救出隊3名だけのヒミツであるが・・・。

花いっぱいコンクール審査会

2005年04月19日 | 現場から
 春の花いっぱいコンクール審査会が無事終わった。昨年に続き、今回で2回目のコンクール応募になる。昨年も悪くなかったが、今年の花壇の出来はかなり出来栄えだ(昨年の様子はこちら)。
花のボリュームはもちろん、配置や個々の花の生育状況もよかった。菜の花の黄色いじゅうたんの下に広がるチューリップ、さらにその下に広がるムスカリの紫色の帯のコントラストがよい。道行く人も思わず立ち止るようなすばらしい花壇になった。このすばらしい花壇は、園芸部スタッフの日々の世話の賜物だ。議論を重ねてレイアウトを決め(人それぞれ好みが違うので、この話し合いは大変だったようだ)、水遣りや花柄つみなど地道な作業を積み重ねてきた。
「きれいねー」
と言ってもらえることが、園芸部スタッフにはなによりの褒美だ。
 そしてもうひとつ、園芸部のモチベーションを保つのに大きな役割を果たしているのが、区が毎年行っているコンクールの審査会だ。第3者が現地を訪れ、作業の成果を客観的に評価するという作業は、なかなか緊張感がある。昨年は努力の甲斐なく19団体中16位であった。結果を聞いたときのスタッフの落ち込みようは可愛そうだったが、同時期にもうひとつ別のコンクールに応募したところ、最優秀賞を受賞し、落胆のあとの大喜びをした。
 今年は、昨年の経験により、緊張の中にも自信と余裕が感じられる。コンクールなどに応募することは受賞の喜びもあるが、他流試合をすることで活動を外に開いていく意識をスタッフに持ってもらうという効果もある様子。
 今年のコンクールの結果が楽しみだ。

SWOTで状況を分析する

2005年04月12日 | NPO設立・事業企画・運営
 「今年はキウイが4000個なるかもしれないなあ」
 キウイ栽培指導のTさんが、出たばかりの新芽を見ながら呟いた。
 昨年、エコプチテラス(以下エコプチ)では約80個のキウイがなったが、植樹から3年目を迎える今年は幹も充実し、いよいよ本格的な収穫の年を迎える。通常、キウイ成木は1本で500~600個の実をつける。そのうち半分を摘んで(摘果という)300個ほどにすると、スーパーで売っているような大粒の実が収穫できる。エコプチには22本のメスの木があるので、計算上は約7000個のキウイがなるわけだが、今年はまだそこまでいかないだろう。私の予測はTさんの半分、2000個とみている。
 余談だが、そもそもエコプチに植えられた雌雄26本キウイは、収穫のために植えられたものではない。つる性の特色を生かして大きな葉を四方に広げて木陰を作ると同時に、葉の蒸散作用により気温を下げる『ヒートアイランド現象抑制効果』を狙ったものだ。ヒートアイランド抑制のための緑化は解決方法のひとつであるが、どうせ緑を植えるなら、成長が早く、世話が楽で、虫がつかず、自分たちも楽しめたほうがいい。という理由でキウイを選んだ。
 『石の上にも3年』
 植樹から3年目の今年、キウイは見事に茂って木陰を作り、たわわに実をつける、・・・あくまで予定であるが。

 「さて、このキウイを使って何をしようか・・・」
 今はまだ葉が出始めたばかりのキウイを見ながら、取らぬ狸の皮算用で、秋に向けた事業の戦略を練り始めた。
 今年は、私たちにとって3つの意味で特別な年だ。ひとつめは3年前企画したとおり、ヒートアイランド対策とキウイの収穫が実現化すること(事業の完成)、2つめは京都議定書発効・愛地球博の開催と社会の環境への関心が高まる機運があること、3つめは8月24日につくばエクスプレスが開通し、歩いて3分のところに駅ができることだ。
 この3要素をうまく組み合わせて事業を企画することはできないだろうか?

 事業を企画する際、成功を高めるための情報分析方法としてSWOTという手法がある。
 組織内部の強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境のチャンス(Opportunity)と脅威(Threat)の4つに分類し、企画の方向性を分析する方法だ。SWOTはそれぞれの頭文字をとったものである。
 SWOTはある程度企画がかたまった段階で、情報を整理し、第3者に説明するために使うと効果的である。SWOTを使って、「キウイ」をキーワードにわが組織の状況分類をすると・・・

1、組織の強み(S)
 キウイが収穫できる(売るほどの品質ではないが収穫体験は可能)、キウイを商品(キウイパン)にするネットワークを持っている、現場を持っている、メディアや地元ネットワークを活用したPRが得意だ、現場を活用したイベント・講座ができる体制が整っている

2、組織の弱み(W)
 現場はトイレがなく屋外なので天候に左右される、参加者個人(現場を持たない人)への行動提案ができていない、キウイ栽培をヒートアイランド抑制と結びつけるプレゼン力が弱い、組織の規模上リスクの少ない小規模な企画しかできない、外部からの参加者をコーディネートできる人材が限られている、「楽しい」ことを重要視するあまり、「環境」がどこかに飛んでしまう(これは強みかなあ?)

3、外部環境のチャンス(O)
 つくばエクスプレスの開通によりアクセス状況UP、環境への関心の高まり、各自治体が具体的な対策を望んでいる、健康食&食育ブーム、昨年足立区は観測至上最高の42.7度を記録し、今年も東京は熱い(かも?)

4、外部環境の脅威(T)
 拠点が区画整理事業用地なので、いつまで事業を継続できるか不明、したがって中・長期的な戦略が立てられない

といった分類ができる。強みやチャンスを活かした企画となると、
『つくばエクスプレスを活用して現場へ足を運んでもらい、キウイを味わってもらう』
ような事業が望ましい。しかも過去に実績があって、スタッフが動き方をわかっているもの。
 以上のことを踏まえて、ざっと出てくる企画は・・・

●葉っぱ祭り8月7日(日):
葉っぱ(8月8日)にちなんで、夏の一番暑い時期にキウイ棚の下でヒートアイランド対策を実感するイベントの実施。

●秋の収穫祭およびキウイパン販売(11月中旬):
キウイ狩りに加えヤーコンなどの収穫体験とからめ、食育に関する講座を開催。『ヒートアイランド対策キウイパン』の現地販売(昨年の300個試験販売は成功)。

●リース作り体験教室(12月上旬):
講師を招いて、キウイのつるなどの植物を利用したリース作りを開催

●ホームページ上でのキウイを活用したヒートアイランド対策の特集ページの充実

●メディアへの取材依頼

・・・などなど。

 こう書き出してみると過去の事業とそれほど変わり映えのないものだが、この程度の忙しさなら『想定内』である。得てしてこういう企画以外に、突発的なことが出てきて振り回されるものだ。
そもそも、もし本当にキウイが2000個実るなら、毎日何もせずぶらぶらするキウイを眺めては、ニヤニヤしていたいものである(これが結論ならSWOTなどいらなかったか)。

NPOのお金の使い方

2005年04月09日 | 資金調達
 資金ゼロからスタートした私たちの活動は、会費や財団からの助成金や企業からの寄付だけでは足りなかったため、必要な物品を持ち出すか、もらってくるかして始まった。物を運ぶ軽トラックもスタッフから借り、畑を耕す道具をそれぞれ持ち出し、仕事場で不要になった備品を集め、手弁当で活動をした。何もないことがかえってメンバーの結束を生み、組織に『持ち寄り文化』をつくった。『持ち寄り文化』は、主体性と組織の結束を生むという良い側面もあるが、立ち上げ期を過ぎ、資金的にも運営が安定しつつある段階においては、『持ち寄り文化』に依存することが返って問題になることもある。
 スタッフのⅠさんは立ち上げ期から活動に関わっていて、昨年からは役員も引き受けてもらっている。月1回の定例会では、トン汁やおにぎりなどを作ってきてくれるので大変ありがたい。みんなが喜んで食べてくれるもので、Iさんも毎回大ナベ一杯につくってくれる。
 ところが、いささか困ったことは、Iさんが料理の材料費を受け取ってくれないことだ。定例会の予算はあらかじめ計上してあるので、それを使ってほしいと頼んでいるのだが
「みんなが喜んでくれればそれでいい」
と言って聞かない。太っ腹なのはうれしいのだが、ありがとうで済ませられるレベルをあきらかに超えている。材料費はバカにならないし、会費を払っているにもかかわらず、Iさんの自腹で料理を食べていると知れば、かえってみんなが食べづらくなってしまう。Iさんの組織を思う気持ちは大変ありがたく思いつつも、やはり組織の事業費を個人の財布が肩代わりする状況はよくない。
自分の財布の使い方はどうしようがその人の自由だ。しかしNPOの場合、どこから資金が入ってきて、それをどう使ったかはとても大切なことだ。会費・助成金・寄付・事業収入など、様々な資金源からお金が集まっているNPOにおいては「組織」と「個人」の財布がごっちゃになることは、かえって問題を抱える結果になりかねない。
 NPOのお金の使い方でもっとも大切なのは
『いかに説明のつく活用をしたか』
である。資金や労力を提供してくれた関係者(ステークホルダーともいう)に対し、
「私たちは集めたお金をこのような活動に使い、その結果このような成果を上げることができました」
と説明する責任がNPOには求められる。
 実際、私たちの活動でも資金に関しては、説明責任という観点から厳しいチェック体制を整えている。会計さんは伝票・現金出納帳・レシート保管ファイル・口座記帳などを管理し、いつでも説明責任を果たせる状況をつくってもらうようにお願いしている。さらにホームページなどではどのような活動をしているかをできるだけ情報公開している。せっかくいいことをしているのだから、財源や支出に関してもその根拠を明確にし、情報公開していきたい。
そんなわけで申し訳ないが、Iさんにはなんとか材料費を受け取ってもらうことを了承してもらった。
 そうとはいえ、そもそもボランティアと『持ち出しの文化』は不可分であり、またすべての経費を出すことなど私たちの組織にはできない。自腹を切って活動するからこそ、組織への思い入れも強くなるのだ。その気持ちも痛いほどよくわかる。
 そこで
「定例会で料理を作るときの材料費は計上するが手間や家での調理はボランティア」
「買い物に行くときにつかう車のガソリン代は持ち出し」
「1000円以上の出費は計上するので会計と相談する」
など、スタッフ間でのルールを決めることにした。基準を決めることでボランティアもすっきりとしたようだ。

 『関係者(ステークホルダー)に説明できるお金の使い方』に慣れるまで、スタッフの一部は時間がかかっているようだ。しかしその悩む姿が、NPO運営への共通理解を深めると同時に、組織としての成長を感じさせもするのである。

得意なこと・好きなことを活かす

2005年04月08日 | ボランティアマネジメント
今年で3回目を迎える菜の花祭りは、大成功に終わった。
スタッフが朝から場所作りやバーベキューの準備に精を出してくれた。とくに広報をしていないとはいえ、50名以上の方が参加し、肉や野菜を焼くスタッフは大忙しだった。園芸部が苦労して育てた菜の花の黄色のじゅうたんが咲き乱れていた。

今回のメインイベントは、ボランティアのMさんのハーモニカとI さんのウクレレがユニット『森と松』を結成し、菜の花をバックに生演奏を行うことだ。
I さんのウクレレの腕前は評判だったが、M さんがハーモニカ演奏者だとは知らなかった。若い頃、全国大会まで出場したという。
「吹くのはハーモニカじゃなくてホラでしょ?」
と私がいうとムキになって怒った。当日は懐かしい曲を4曲演奏し、手作り歌詞カードを配ってみんなで合唱した。I さん・Mさんは今回の演奏のために何度も練習をしたという。鳴り止まない拍手とアンコールの声、さらにはおひねりまで飛び交い、二人は満足げな様子だった。手作りで暖かいミニコンサートであった。

今回のコンサートは、ボランティアマネジメントについて学ぶべきことが多くあった。
ボランティアの持つ特徴に
「やりたいこと」を「やりたいとき」に「やりたいだけ」
活動する性質があると以前書いた。それがNPOを運営する側にとって時に予測不能な状態を産み、事業を安定的に行う障害になることもある。
しかしその逆に、得意な分野、好きなことについては予測をはるかに超えた能力を発揮することもある。『森と松』のふたりはまさに後者であった。
社員に対して賃金という対価を支払う企業とは違う観点を、NPO運営者は持つ必要がある。ボランティアが『対価』と感じるものは多種多様、有形無形である。ボランティアの潜在能力を引き出し、それを表現する『場』をつくることがどうすればできるか?ボランティアマネジメントのコツはそこにある。
キムチ作り教室、リース作り教室、アルミ缶リサイクル、施設整備、花壇整備など、グリーンプロジェクトの活動を支える担当者は、いずれもそれが好きであったり得意であったりする。その人の好きなこと・得意なことを聞いて、その人を軸に『エコ』というフィルターをかけながら事業を作っていくといってもいいかもしれない。ボランティアには相応の責任とプレッシャーを与え、責任以上の「ありがとう」や「笑顔」を対価として提供する。そういう関係が理想的だ。

ただし、ボランティアの技術や専門性を開花させるだけでは、ミッションを持つ組織は方向性を維持できない。そこにはボランティアを束ねるコーディネーターの存在が欠かせない。わが組織では副代表や幹事などがその役目を果たしている。話をよく聞き、意思を尊重し、組織の方向性とすりあわせるきめ細かな調整を日常的に行っている。組織の中で5%のコーディネーターが、95%のスペシャリストの舞台づくりをしている。
コーディネーターは裏方のたいへんなポジションだが、面白いことにその役割を果たす副代表や幹事は、それを苦にせず、むしろ得意としていることだ。
企業であれNPOであれ、組織には適材適所というものがあるのだろう。