娘の初節句に母が七段かざりのお雛さまを遠い大阪から私たちの住む北海道に送ってくれた。33歳から女で一つで私たち姉妹を
育てた母。空襲で焼けてしまった私のお雛様は祖母のひな人形でその当時で70年前の立派な雛だった。
家もなく蓄えもない母には孫へのひな人形は相当な出費だっただろう。焼けてしまったひな人形、遠くへ私を嫁がせた
思いを込めての贈り物だったに違いない。娘の七段飾り雛は娘と共に嫁いだ。
娘が嫁いだ年のひな祭りに母からこの木目込みひな人形が贈られてきた。親の思いは海よりも深く山よりも高いというが
親不孝な私は何ひとつ親孝行もしなかった。毎年この人形を飾って母を偲ぶ。