観測問題の混乱は、測定器の特異な性格を無視していることに起因します。
以下で、測定器に関する現象はシュレディンガー方程式に従わないことを証明します。
シュレーディンガー猫の生死の観測という問題は次のように簡略化できます。
猫の生死は、毒ガスの有無と対応しています。
そこで、猫の生死の観測を箱内部の毒ガス分子の有無の検出に置き換えます。
毒ガス分子無→猫は生きている
毒ガス分子有→猫は死んでいる
粒子情報の測定器は、4つの部分から構成されるものとします。
(1)捕獲器: 窓を一瞬開けて毒ガス分子を取り込みます。
この瞬間に何個の毒ガス分子が捕獲器入るかは不明です。
このときから粒子と測定器との相互作用が始まります。
(2)増幅器: 相互作用で生じる現象を電気信号として増幅します。
(3)比較器: 増幅信号と比較器のしきい値とを比較します。
このときのしきい値は恣意的なものです。
(4)出力器: 信号がしきい値以上のとき毒ガス”有り”の情報を出力します。
分子の数は0個以上ですから、出力器における入出力関係は多対一になります。
これは、出力器における現象が不可逆過程であることを示します。
このときの不可逆性は確率とは無関係なので、絶対不可逆過程と名付けます。
不可逆過程は時間に関して非対称です。
一方、シュレーディンガー方程式は時間に関して対称です。
従って、比較器を含む測定器はシュレーディンガー方程式に従わないことが分かります。
ということは、毒ガス分子が測定器に入ってから測定値という情報が出力されるまでの過程をシュレーディンガー方程式で記述することは原理的に不可能であることを意味します。
言い換えると、シュレーディンガー方程式を用いた観測問題自体が無意味であり擬似問題であることを意味します。
更に言えば、測定器が出力する測定値という情報概念も物理学の対象には含まれません。
このことも観測問題が擬似問題であることを裏付けています。