別冊日経サイエンス、No.186、『実在とは何か』(2012)にM.テグマーク、”並行宇宙は実在する”という記事があります。
この中で、”地球のほかにも生物がいる惑星が無数といってよいほどあり、その中には姿も名前もあなたとそっくりな人が住んでいる惑星がたくさんある。”としています。
しかし、どの宇宙論も一般相対性理論、量子力学やひも理論などに基づいています。
これらの理論は物理量に関連する現象を扱うものです。
物理学にある情報に関する概念はエントロピーだけです。
測定器、通信、コンピューター、人工知能、脳神経回路、生物などにおける情報概念は物理学の対象ではありません。
これらの情報概念にはシステム依存性があるので非客観的なものになり物理学では扱えないのです。
物理法則は現象がおきる必要条件を示すだけであり、十分条件を示すことはできません。
物理法則の説明対象は自然現象だけです。
並行宇宙論やマルチバース宇宙論なども自然現象の範囲であれば物理法則で予測や説明が可能です。
しかし、生物は無機質な自然現象ではないので物理法則だけで説明することは不可能です。
生物が物理法則に従うことは必要条件ですが、物理法則は生物を説明できる十分条件ではありません。
従って、物理主義に基づくテグマークの主張はナンセンス以外の何物でもありません。
そもそも、物理学には生命の定義がないのです。
まして、物理学には人間の定義がありません。
それにも拘わらず”同じ人間が他の宇宙にいる”などと主張することは論理的に矛盾しているのです。
最先端の宇宙物理学者のこのような主張には開いた口が塞がりません。