電子には質量、電荷、運動量などの物質的属性(物理量)のほかに、運動量と関係する波長があります。
この電子の波長という概念は、電磁波の波長の概念とは本質的に違うものです。
電磁波の波長は測定器で直接測定できる物理量ですが、電子の波長にはそのような性格はありません。
しかも、電子の波長には実空間における延長性もないのです。
電子の波長は、干渉縞の情報から間接的に求まるものです。
その意味で、電子の波長は物質的属性ではなく情報的属性として理解すべきものです。
電子の波長λと運動量pとの間にはド・ブロイの関係式p=h/λ(hはプランク定数)があるので、電子の波長はこの式から求まるではないかと思うでしょうが、このときの波長はド・ブロイの関係式によるものであり実験によるものではありません。
電子に波動的性質があることを実証するには電子の干渉縞に頼るしかないのです。
従って、電子には質量、電荷、運動量などの物質的属性(物理量)のほかに波長という情報的属性があることが分かります。
電子にこの情報的属性があるために干渉縞という現象が生じるのです。
量子力学は、この干渉縞を複素ベクトルである波動関数の状態の重なりにより生じるものとしています。
しかし、波動関数は複素ベクトルなので実空間における延長性がない抽象的概念なのです。
二重スリット実験における干渉縞を電磁波のような波の重なりいう力学的モデルで説明することは不可能です。
量子力学は電子に情報的性質があることについて気付いていませんが、私には本質的な意味がある筈だと確信しています。
光子の波長も光子の物質的属性ではなく情報的属性なのです。
量子力学に情報的属性に関する内容がある理由は、粒子と波動という一見矛盾する性質を持つ電子や光子などの量子を統一して扱うためなのです。
近年、量子力学は量子情報科学という分野で大いに注目されていますが、このときの情報概念はシャノン流のものであり、前述の情報概念とは関係ありません。