ベルによる電話の発明からマルコーニによる無線通信の発明に至るまで、
「情報を運ぶのは電流/電圧の波形」
と考えられていました。
そのため、通信技術の主な目的は波形の忠実な伝送でした。
これに対してシャノンは、
「情報を運ぶのは波形ではなく情報量という確率的概念である」と考え、
(1)エントロピー/伝送速度/相互情報量/通信路容量/
通信路モデル/符号化/復号化/誤り訂正符号/データ圧縮などの基礎概念を確立し、
(2)「シャノンの三大基本定理」を証明して「通信の数学的理論」を構築しました。
情報理論は、それまで個々に蓄積されていた通信技術を科学の一分野にしたのです。
情報理論における情報は確率量であり、情報が持つ意味を無視します。
情報理論では「情報=情報量で定義される確率的対象」なのです。
「情報理論」という名称は、固体物理学のブリュアン帯で知られるブリュアンによります。
因みに、シャノンの論文名は”通信の数学的理論”であり、情報理論という用語はありません。
シャノンは、この名称を嫌いっていました。
「情報学」のように文系の印象を与えるためでしょうか。
情報理論は、20世紀半ばの科学に多大な影響を及ぼしました。
そのため、情報は物質およびエネルギーと共に現代科学の基礎概念とされています。
物質とエネルギーの概念は、物理学で厳密に定義されています。
一方、情報理論のものを除けば情報の科学的定義は確立していません。
情報概念は、単にその場限りの便利な用語として極めて曖昧に使われているのです。
それでも何の不都合も起きていないのは現代科学のミステリーです。
情報概念をフロギストンやエーテルになぞらえる人もいます。
「情報とは何か」に対する議論は、社会学者/哲学者によるものが殆どです。
計算機科学/人工知能/認知科学/脳科学/生物学では
「情報とは何か」を議論することは殆どありません。
その種の議論は、言葉の遊び/時間の浪費とされています。
計算機科学/人工知能は、数字/文字/記号/図形を前提にするのでこの態度は当然です。
しかし、生物や脳においては初めから情報が存在している訳ではありません。
認知科学/脳科学/生物学において情報の定義を放置することは到底許されません。
生物や脳における情報は、
(1)生物や脳における物質現象との関わりで定義する必要があり
(2)その点が文系における情報の定義と違います。
理系の分野で情報概念に関する真剣な議論がなされない理由は、
情報理論の成功に幻惑されて「情報とは何か」に関心がないからでしょう。
詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!