情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

「意識は情報処理結果の読取り現象である」説

2022-01-25 09:46:34 | 人工知能・意識・脳科学
先のブログ「クオリアは感覚野による受容器情報の読み取り結果である」を参考にして今回は感覚以外の意識全体について考察します。

神経回路網で情報処理をしていることは周知の事実です。
脳は、この情報処理の結果を読み取る必要があります。
この読み取り結果が意識という現象となって現れると推測できます。

そこで、これを「意識は情報処理結果の読取り現象である」説として提唱します。

チャーマーズらの意識に関する議論は抽象的なものでしたが、今回提唱する説は意識の現象に合理的な裏付けがあることを示しています。

脳と意識とは情報を介した機能的因果関係にある

2022-01-24 09:12:12 | 人工知能・意識・脳科学
ロボット内部では物質と情報とが相互作用しています。
ということは、物質と情報とが何らかの因果関係にあることを示唆します。

物質と情報とは異質な存在なので直接的な因果関係は成り立ちません。
この因果関係はロボットの機構によるものです。
ロボットの機構が物質と情報という異質なもの同士の因果関係を作り出しています。
このような因果関係を機能的因果関係と名付けます。

実は、脳と意識とはこのような機能的因果関係にあると推測できます。
この場合、脳と意識との間には直接的な因果関係は有りません。
両者の間には情報が介在しています。

脳は、情報を介して意識と機能的因果関係にあるのです。

代表的哲学者であるチャーマーズは、脳と意識とを直接的な因果関係で理解しようとするので意識をハードプロブレムと呼んでいるのです。

脳は、情報を介在して意識と機能的因果関係にあると捉えれば意識の謎はいくらか解けるのではないでしょうか。




脳やコンピューターはただの物質ではない!!!

2022-01-22 10:52:48 | 人工知能・意識・脳科学
脳科学などの本には「脳はただの物質である。その物質から何故意識が生じるのか」という記述が頻繁に登場します。

しかし、脳はただの物質ではありません。
生きている物質なのです。
この自明な事実を脳科学者たちは無視しています。
これでは、脳に関する謎を解くことは決してできません。

因みに、コンピューターもただの物質ではありません。
コンピューター内部には非物質的な情報が存在しています。
それなのに科学者はなぜ「ただの物質であるコンピューターから非物質的な情報が生じるのか」を問わないのでしょうか。
科学者にとって情報概念はあまりにも日常過ぎて空気のような存在であるからなのでしょうか。


精神と脳の二元論に対するクリストフ・コッホの誤解

2022-01-20 19:52:28 | 人工知能・意識・脳科学
クリストフ・コッホ(土谷、金井共訳)『意識の探究(上)』、岩波書店(2008)の12頁に精神物質二元論について次のように述べています(一部抜粋)。

二元論は論理上一貫している一方で、科学的な見解からすると不満が残る。
魂と脳とがどのように相互に影響し合っているのかという問題である。
どうやってその相互作用は起こるのか。
この相互作用は、物理学の法則と両立していなければならないだろう。
ところが、もしそのような相互作用を仮定すると、魂と脳の間でのエネルギーの交換がなければならない。(引用終わり)

ここで問題になるのは私が付けた下線の部分です。
コッホの相互作用に対する見解は矮小化されています。
その理由を示します。

ロボット内部には物質と情報とが共存しているので、物資と情報の二元論が成り立ちます。

情報はロボットの行動を制御します。
その行動によってロボット内部の情報も変化します。
つまり、ロボットの物質と内部の情報とが相互作用しているのです。
しかし、言うまでもなく物質と情報との間でエネルギーの交換はありません。

では、何故このような相互作用が成り立つのでしょうか。
それは、ロボットがこの相互作用を実現するように作られているからです。

魂と脳との相互作用はコッホが言うような直接的なものではなく、ロボットにおける物質と情報との相互作用のように間接的なものなのです。
このような相互作用が可能なのは脳がそのように作られているからです。
正に脳の進化によるものです。




「脳という物質から何故意識が生じるのか」という問いはナンセンス!

2022-01-08 10:50:45 | 人工知能・意識・脳科学
哲学や脳科学の分野では「単なる物質である脳から何故意識が生まれるのか」という問題提起をします。
チャーマーズはこれをハードプロブレムと呼んで、この問題に取り組むべきだと主張しています。

しかし、脳は単なる物質ではありません。
生きている物質です。

科学は、未だに生命の謎を解明していません。
人間は、生命体です。
脳は、その生命体の一部です。

物質から何故生命が生じるのかという問題が解けていないのに、生きている脳から何故意識が生じるのかを問うのはナンセンスそのものです。

科学者は、意識の謎に取り組む前に生命の謎に取り込むべきです。
そうしないと本末転倒になるからです。

哲学者や脳科学者はこのような状況をどう捉えているのでしょうか。