近年、人工意識を作るに関する研究が盛んなようです。
例えば、人工知能学会. Vol 33 No.4(2018年07月号)に「意識とメタ過程」という特集があります。
トノーニの統合情報理論は、人工意識研究の基礎になっているようです。
トノーニ、外(花本知子訳)『意識はいつ生まれるのか-脳の謎に挑む統合情報理論-』、亜紀書房(2016.2)
神経生理学的見地から意識には二つの基本的特性”情報の豊富さ”と”情報の統合”とがあり、その両者をまとめて意識を数値化するという極めて大胆な発想です。
意識の単位をΦビットで表し、この数値Φと意識の間に相関があるという仮説です。
訳者あとがきによると、トノーニの本の原題は『これほど偉大なものはないー覚醒から睡眠、昏睡から夢まで。意識の秘密とその測定』です。
なので、翻訳書の”意識はいつ生まれるのか”というタイトルは、誤解を招きます。
トノーニは、数値Φの値がどのくらい大きくなれば意識が生じるかについては、全く触れていません。
同著は、学術書の類ではありません。
文献リストもありません。
数値Φの計算式や理論的記述もありません。
なので、翻訳書のタイトルだけをみて購入すると期待外れになるでしょう。
統合情報理論は、クオリアを扱うことは出来ません。
何故なら、トノーニの二つの基本的特性”情報の豊富さ”と”情報の統合”という概念はクオリアそのものを扱えないからです。
クオリアは、意識の原始的形態です。
高度な意識はその上に構築されているものなので、クオリアを無視した意識の定義は片手落ちになります。
人工知能がコンピュータで実現されているからといって人工意識もコンピュータで実現されるとは限りません。