大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆もらい忘れの厚生年金基金

2014年01月30日 10時25分01秒 | 公的年金等
「ねんきん定期便」を見て、「あれっ? 自分の年金額こんなに少なかった?!」と
驚いた方はいらっしゃいませんか。

日本年金機構から郵送される「ねんきん定期便」には、自分が加入していた(いる)厚生年金基金の
から支給される「代行部分」や基金特有の「上乗せ部分」は記入されていません。

私自身もそうなのですが、若い時に加入していた厚生年金基金があるため、「ねんきん定期便」
に書かれていた年金予想額はごく僅か。

厚生年金基金に加入していた(いる)方の老齢厚生年金は、国の支給部分と基金からの支給部分と
2つありますので、こんなことになってしまうのです。
もちろん、共済組合の加入員であった(である)方も基金の方と同じです。日本年金機構からは
共済組合からの年金額は示されません。

厚生年金基金、共済組合などに加入歴が少しでもある方は、老齢厚生年金の受給権を
得た時に次のことをしなければなりません。

1、日本年金機構と厚生年金基金(企業年金連合会)の双方に年金を請求する。
2、日本年金機構と各共済組合の双方にに年金を請求する。

それをせずに、「自分は基金に少ししか加入していなかったんだから」なんていう
理由で、日本年金機構のみに年金を請求して、それで、自分は全部の年金をもらっている、
なんて勘違いしている例があります。

厚生年金基金の加入期間が10年未満で退職時の年齢が60歳未満(基金によって異なる場合あり)
の方や基金が解散してしまっているような場合は、全国の基金をとりまとめている「企業年金連合会」
に、年金を請求してください。

●厚生労働省発表『厚生年金基金等の未請求状況について』

平成24年度末
1、厚生年金基金への年金の請求忘れの方 13.7万人 全体の4.3%
2、企業年金連合会への年金の請求忘れの方 133万人 全体の16.1%

こうして見てみますと、厚生年金基金の加入期間が短い方が、企業年金連合会に
年金を請求していない例が133万人もいることに驚かされます。
全体の16.1%が年金を請求していない……。これは大変な数字です。

企業年金連合会も住所がわかる方には老齢厚生年金の受給権発生時に、
年金請求書を郵送してくれますが、転居などで住所が変わった場合は、
それができません。

老齢厚生年金の受給権が発生しても企業年金連合会や基金から
年金請求書が届かない場合は、是非、ご自分で問い合わせるなどして、
年金をもらい忘れることのないようにしたいものです。

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◆NHK経営委員の「男は外、女は内」発言に私も一言

2014年01月29日 10時58分19秒 | 近頃思うこと
NHK経営委員の女性大学教授の発言が物議を醸しだしているとききました。
「男は外(会社)、女は家庭」という趣旨の発言をしているとか(朝日新聞)。

ご自身も大学教授をしながら1男1女を育て上げた方ということですので(同)、
立派に「女も会社」で生きてこられた方ですのに。

私自身は、「男は会社、女も会社」の価値観で生きてきて今日に至っていますが、
仕事柄、健康保険の「被扶養者届」を毎日のように作成していて分かるのは、
ほとんどの家庭が「男は会社、女は家庭」だということです。
基本的には、旦那さんが主な稼ぎ頭で、奥さんは家庭と両立し易いパート勤務か
専業主婦の方がほとんど。フルタイムでバリバリ働いている方はごくごくわずかです。

●厚生労働省発表「厚生年金保険・国民年金事業の概況」平成25年10月現在

※1 国民年金第2号被保険者数 39,772,715人

※2 厚生年金保険被保険者の標準報酬月額 男 347,928円 女 234,248円

※3 国民年金第3号被保険者数 女 9,381,596人 男 111,321人

(※1 おおよそ常勤状態にある会社員、公務員の総数)
(※2 会社員の賃金の男女格差は約67%)
(※3「国民年金第3号被保険者」とは、配偶者に扶養されている年収130万円未満の者。
第3号被保険者は、配偶者の加入する健康保険(共済組合)の被扶養者となる。)

私自身は、育児休業法や男女雇用機会均等法のない時代に「子育て」と
「仕事」を両立?? させてきた年齢層なのですが、
うちの子供がまだ小さかった頃、クラスのほとんどのお母さんはパート勤務か専業主婦の方
でした。今でもあまり変わらないですね。

ただ、問題は、そこにはないと思います。

日本では武家社会が長く続き、鎌倉時代から江戸時代初期に至るまで、
男が武器を持って戦場で戦い、ある者は首を取られ、領地を追われ、或いは切腹し、
男が政治・経済を動かしていました。
この長い歴史の中で、女はどうしても社会の一線では活躍しにくく、「家」では
親に従い、夫に従い、舅・姑に従い、老いては子に従うことが「美徳」とされてきました。

そんな「美徳」が明治、大正、昭和と続いてきたのですから、なかなかこの「ハンディ」を
覆すことは至難の業といえましょう。

私自身も暮らしの中で体験するのですが、残念ながら女は世間では軽く見られ、
時にはからかわれ、時には一人前以下に見られるということがしょっちゅうあります。
若い頃はそんな態度に接すると、黙って耐えていたのですが、
今では耐えないことにしています。時には言い返したり(笑)。

ところで、仕事柄、顧問先の多くの従業員さんと接する機会があります。
経理の方、総務の方などが多いのですが、仕事の現場では、男女で実力に差があることは
ありません(きっぱり)。
当然ですが、周りの男性よりも優れている女性も幾人も見てきました。

そういう方を見ていますと、私自身も勇気を与えられ、もう少し頑張ろうかと
少し元気になります。

冒頭の発言の趣旨は、少子化の問題でおっしゃっておられるようですが、
韓国、日本など男女差別が大きい国ほど少子化が問題となっていることを思えば、
やはり、それらの歴史的価値観が解消されない限り、少子化の問題も解決の糸口が
見えにくくなっているのではないでしょうか。

上記の「国民年金第3号被保険者数」の男女別数を見て分かる通り、
現在の日本では、ちゃんと「男は会社、女は家庭」を守っているのですから。


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◆社内運動会参加は「休日労働」?

2014年01月27日 11時29分04秒 | 労働基準
冷凍食品農薬混入事件。報道されていることが事実とすれば、
従業員の内心の問題は、企業・総務部にとって見過ごされない重大な問題を
はらんでいるように思われます。
労働条件などの会社対する「不満」は自己または自己の属する集団の中で日々増幅し、
会社が思ってもみなかった方向性へと発展することもあるのだと、震撼の思いに至ります。

さて、今日のお話は、会社主催の運動会や慰安旅行が、最近息を吹き返してきたという
ことを耳にしますが、総務さんからよく質問を受ける点について、お話したいと思います。

会社主催の運動会を所定休日の日曜日に実施するのですが、この日は「休日労働」
になりますか? また、運動会中に怪我をした場合は「労災保険」は対象となりますか?

ご質問にお答えするには、会社主催の運動会などは、「労働時間」なのか?
という問題を明らかにしなければなりません。

労働時間」とは、使用者の指揮命令下にあって業務に従事することをいいます。
ですから、運動会などが使用者の指揮命令下におかれていて、従業員がその命令下で
自己の労働義務の処分を使用者にゆだねているかどうかで判断されるといってよいでしょう。

もし、そのような支配下であれば「労働時間」と判断され、運動会中の怪我は
労災保険の対象となってきます。

ところで、労災保険の方では、会社主催の運動会中に起きた怪我などの場合の判断基準として、
次のような通達が出ています。

「労働者が事業場内の運動競技会に出場中に被った災害については、
次のすべての条件を満たす場合に限り、業務上の災害として取り扱う。
1、当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業の運営に社会通念上
必要と認められること。
2、当該運動競技会に出場することが、事業主より強制されていること。
出場を強制されているとは、次の要件を満たしていること。
ア、当該運動競技会が事業所属労働者の全員の参加により定期的に行われるものであること。
イ、当該運動協議会出場日は、通常の出勤と同様に扱われ、出場しない者については、
欠勤として取り扱われるものであること。

ただ、一口に運動会といっても、例えば、取引先の運動会に従業員を派遣したとか、
自社の運動会でも、会社命令で運動会実行委員になった者の大会準備行為中とか、
会社の命令ではなく、労働者の自主的な意思で運動会の準備行為をしていた場合など、
「労働時間」かどうかの判断に微妙な問題をはらんでいる部分もあります。

日曜日などの所定休日に社内運動会を実施する場合などは、
その日を労働日=労働時間とするのかしないのか、あらかじめ明確に決定しておかなければ
ならないことはいうまでもありませんし、実行委員の準備後始末行為や任意の
準備行為手伝い者などが出た場合などを想定して、社内ルールを定めておく
ことが求められます。運動会中の怪我は少なくないと思われるからです。

運動会当日を「労働日」とするのかしないのか、それは、運動会を開く会社の意図と
深くかかわってくることですので、とても大切な問題です。

当事務所でも、同じような質問をいただいた場合は、上記労災保険の通達をご紹介し、
前もって労働日とするのかしないのか等、きっちりと決めていただくよう、
お話するようにしています。

運動会や社内旅行などは、普段疎遠な他部署同士の思わぬ「交流」のきっかけとなったり、
結構、従業員さんの心のバランスにもいい影響を与えたりするかもしれません。
見直されていい行事だと思います。

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◆65歳以上で退職された方の高年齢求職者給付金

2014年01月24日 18時57分24秒 | 退職、解雇
先日、顧問先さんで、「あわや、手続き漏れ!」に遭遇しました。

「遭遇」といいますのも、へんな話ですが、
長い間顧問になっていただいている会社さんの、とある超ベテランの従業員さんが退職されました。

実は、「長い間お世話になりましたが、私、退職しました」と、
ご本人から当事務所にご挨拶のお電話をいただいておりました。

その時は、「本当ですか! それはそれは淋しいことですね。長い間お疲れ様でした。」
なんて申し上げて、そのまま何も考えずに「いよいよ○○さんも、退職か・・・」なんて
感慨にふけっていたものでした。

数日後、ふと思い返しました。

その従業員さんは、65歳以上の高齢の方で、勤務時間も短くなり、社会保険は
とうの昔に喪失していましたが、週20時間以上の勤務時間でしたので、
雇用保険の資格はそのまま残っていたのでした。

「あれ、○○さんの雇用保険の資格喪失届を出さなきゃいけなかったんだ」
なんて、ふと思い返して、その会社さんの総務の方へ電話しました。

「えっ? 雇用保険の資格喪失手続ですか?。」と総務さん。
「そうなんです。○○さんは雇用保険の加入は続いていましたので。」

すると、「でも、65歳以上だから雇用保険料は給料から引いていませんよ。
○○さんは、雇用保険の資格はないんですよ。」(きっぱり)と申しますので、
「いえ、いえ、高年齢だから雇用保険料は労使共に免除になっていますが、
それは保険料が免除になっているだけで、雇用保険の資格自体は続いているのですよ」と私。

「え、そうなんですか! 気が付きませんでした。」

ということで、ようやくご理解をしていただき、その従業員さんの雇用保険の資格喪失書類を
作成いたしました。

65歳前から雇用保険に加入している方は、そのまま継続して65歳以後も勤務を
続けている場合は資格は続いているのです(週所定労働時間が20時間以上の場合)。
ただ、4月1日において64歳に達している人は、4月分から雇用保険料が労使共に免除になっています。

実際に給料から雇用保険料が引かれていないのですから、65歳以上も勤務継続している
方でも、総務さんは、なんとなく、雇用保険の資格も喪失しているような錯覚に
陥ってしまうのでしょう。

ちなみに、今回退職された65歳以上の従業員さんの場合は、
退職後失業していれば、「高年齢求職者給付金」を受給できます。
被保険者期間が1年未満の方で「30日分」、1年以上で「50日分」。
今回、高年齢求職者給付金を計算してみましたところ、
詳しくは書けませんが、20数万円あまりでした。

さっそく、離職票を提出し、ご本人へお送りいたしました。
なんだか、会社さんからのいいプレゼントですね。

65歳以降の高齢で退職された方の中には、会社さんも雇用保険の資格喪失を出し忘れて、
結構、そのままになっているケースがあるかもしれません。
ご本人も「高年齢求職者給付金」が受給できる場合があるなど思いもよらなかったり……。
もらい忘れも、結構あるのではないでしょうか。

私も仕事をしていく中で、顧問先の従業員さんから学ぶこともあり、
長いお付き合いの間には、労基署や年金事務所の調査などもあったりでと、
大袈裟に言えば、○○さんとは、一緒に荒波をくぐってきたようなところもあります。

本当にご苦労様でした。これからもお元気で。

離職票を作りながら、こんな想いにひたったのも、なんだか初めてのような気がします。


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