大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆10月からの育児休業2歳まで延長可。注意点は

2017年10月25日 10時09分31秒 | 産前産後・育児休業等
平成29年10月1日より、育児・介護休業法が改正され、以下の3点が施行されている。

<改正内容>
① 保育所に入所できない等特別の事情がある場合に限り、1歳6か月まで育児休業をした労働者について、
当該育児休業を2歳まで延長することができる。(義務)
② 本人又は配偶者が妊娠等した労働者に、育児休業制度等を個別に周知するよう努めなければならない。(努力義務)
③ 小学校就学の始期に達する子を養育する労働者について、「育児」を目的とする休暇制度を設けるよう
努めなければならない。(努力義務)

改正内容①については、待機児童問題から発する認可保育所への入所困難等を反映した改正だ。
最大2歳までの育児休業が可能となった。
しかし、あまり知られていないが、育児休業については、次の人は、法令上、育児休業の適用が除外されている。
①期間雇用者で入社1年未満の者
②期間雇用者で、子が1歳から育休延長する場合は、当該子が1歳6か月に達するまでの間に
雇用関係が終了することが明らかな者
③期間雇用者で子が1歳6か月から育休延長する場合は、当該子が2歳に達するまでの間に
雇用関係が終了することが明らかな者

また、労使協定を結べば、正社員や無期雇用の者であっても、次の人は育児休業の適用から除外することができる。
①入社1年未満の者
②申出日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者
③1歳から1歳6か月に達するまで育休延長する場合は、延長申出日から6か月以内に
雇用関係が終了することが明らかな者
④1歳6か月から2歳に達するまで育休延長する場合は、延長申出日から6か月以内に
雇用関係が終了することが明らかな者

「育児・介護休業規程」を改正し、労使協定を結び直すなどの措置も必要となる。

<育休延長と雇用保険の育児休業給付金>
育児休業が1歳6か月から2歳まで延長できることになったことにより、
雇用保険の育児休業給付金も2歳到達の前日まで延長して支給される。

ただし、1歳6か月前までに市町村の保育所に入所を申し込んでおり、かつ、
定員超過等により入所できなかった旨の市町村長発行の「保育所入所不承諾通知書」等が必要
なのは、1歳から1歳6か月まで育休を延長する場合と同様だ。

市町村によっては、不承諾通知書の有効期限の関係で、新たに不承諾通知書を発行しない市町村もあるようだ。

このような場合は、職安に不承諾通知書を提出できない理由を記した「申立書」を提出できるようだから、
所轄の職安に確認しておきたい。

今後、育児休業者が出る予定の会社は、育休前に制度の注意事項を本人にしっかりと伝えておきたい。


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◆社会保険の産休、育休支援制度

2015年01月29日 10時15分51秒 | 産前産後・育児休業等
昨年4月から「産前産後休業中」の社会保険料の免除も始まり、
産休・育休期間中のいそいろな支援制度が出揃ってきています。

中でも、細かくて分かりづらいのが社会保険(健康保険・厚生年金保険)の支援制度です。

①産前産後休業期間中の社会保険料の免除
産前産後休業期間中(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日)のうち、
妊娠又は出産を理由として労務に従事しなかった期間の保険料が労使共に免除。

産前産後期間中に、申出(「産前産後休業取得者申出書」の提出)が必要です。

②育児休業期間中の社会保険料の免除
育児・介護休業法に基づく育児休業期間中(3歳未満の子を養育する
場合に限る)の保険料が労使共に免除

育児休業期間中に申出(「育児休業等取得者申出書」の提出)が必要です。

③保険給付
出産(妊娠85日以上での出産、死産を含む。以下同じ。)したときは「出産育児一時金」が、
出産のため会社を休んで賃金を受けられないときは「出産手当金」が支給されます。

④産前産後休業終了後の標準報酬月額の改定
産前産後休業の終了後職場復帰しても、どうしても給与が下がりがち。
給与が下がったのに随時改定(2等級差)に該当しない場合、低い給与から
産休前の高い保険料が控除されます。
そこで、産前産後休業の終了後に報酬が下がった場合、随時改定に該当しなくても、
終了後の3か月間の報酬月額の平均額をもって標準報酬月額を改定できます。

「産前産後休業終了時報酬月額変更届」により申出が必要です。

ただし、産前産後休業終了日の翌日から引き続いて育児休業を
開始した場合は申出ができません。

⑤育児休業終了後の標準報酬月額の改定
育児休業の終了日に3歳未満の子を養育しており、報酬が下がった場合、
随時改定(2等級差)に該当しなくても、申出により標準報酬月額を改定できます。

「育児休業等終了時報酬月額変更届」により申出が必要です。

⑥標準報酬月額の特例措置(厚生年金保険のみ)
3歳未満の子を養育する期間において、標準報酬月額が、養育開始前よりも
下がったとしても、申出により、養育開始前の標準報酬月額のままで
年金額を算定してもらえます。
育児休業終了後などに職場復帰しても、従前よりも勤務時間が短くなるなどして
給与が下がった場合などを想定しています。保険料が下がっても、
年金額を算定する際に使う標準報酬月額は高いままで計算してもらえます。

「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出が必要です。
申出には、養育している子との身分関係や養育の事実確認のため、
戸籍謄本、住民票などの添付が必要です。

顧問先さんの従業員さんの産休・育休の各種手続きをしていると、
本当に、今の時代は、経済的に子育て世代に優遇なことだと思います。

まず、収入は、産休期間中は3分の2が補償。
育休期間中は、雇用保険から育児休業給付金が50%支給されます。
子供が生まれると、3歳までは児童手当15,000円など。

例えば、出産前の女性の給与が20万円だった場合、
育休中は、毎月10万円の育児休業給付金をもらい続け(最大1歳6か月まで)、
市町村からは児童手当をもらい続け(額は異なるが最大中学生まで)、
育休中の社会保険料はただ。

育児休業制度や育児休業給付金制度がなかった世代から見ると、
本当に羨ましい限りです。


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◆分かりにくい産前産後休業の保険料免除

2014年02月03日 14時52分45秒 | 産前産後・育児休業等
平成26年4月1日より産前産後休業中の健康保険・厚生年金保険料が
事業主の申出により免除となります。

元々、育児休業中の社会保険料の免除は先行して実施されていますので、
これで産前産後休業中から育児休業期間中まで通しで社会保険料が
免除になることになります。

先週、その詳細が厚生労働省から発表されたのですが、
とても分かりにくいですね……。

実務では迷われる方も多いのではないでしょうか。
私など、エクセル表で産後休業終了日別「早見表」作りました……。

問題は、平成26年4月以前から産前産後休業に入っている方達。

その方達は、人によっては産休の途中から社会保険料が免除になります。

そのトップバッターは、4月30日に産後休業が終了する方(4月分が免除)。
「出産日」に換算すると、3月5日。
(3月4日以前に出産した方は対象外となります。)

次が5月1日~5月31日までに産後休業が終了する方(4月分、5月分が免除)。
次が6月1日~6月30日までに産後休業が終了する方(4月分、5月分、6月分が免除)。

また、話を「産前休業の開始日」に絞って考えますと、
ますます分からなくなるんです。

問題は、「出産日」が「出産予定日」より早まった方達。

当初「産前休業開始日」とされていた日と、
出産後に判明した「産前休業開始日」とされる日との間が
「月をまたがった場合」は、
給与計算時の社会保険料の控除関係に狂いが生じることがあります……

●参照条文
「産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所事業主が…申出をしたときは、
産前産後休業を開始した日の属する月から
産前産後休業を終了した日の翌日が属する月の前月分までの期間
保険料を徴収しない」(健保法159条の3。厚年法81条の2の2も同様の主旨)

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◆支給率アップに耐えられない。育児休業給付

2013年11月01日 20時27分39秒 | 産前産後・育児休業等
またも育児休業給付が引き上げられる可能性とか……。

制度が出来た当初の支給率は休業前賃金の25%、次に40%に上がり、現在は50%。
休んでて50%もらえるというのは、かなりいい率です。

今度の支給率の案は、育休最初の6か月間を67%にするというもの。
(厚生労働省 第93回雇用保険部会)
この67%というのは、健康保険から支給される「出産手当金」の支給率を
踏襲したものといいます。

育児休業給付は、他の雇用保険の手当(失業給付等)から比べても
ダントツの多さです。
厚生労働省の発表によれば、平成24年の育児休業給付の平均月額は111,932円。
これを原則として6か月分もらえるのですから、大盤振る舞いです。
仕事をしないで家でゆっくりしていて、11万からのお金がもらえるのですから、
へたなパートに出るよりもずっといいですね。
その上、社会保険料はタダ。子ども手当ももらえる。非課税。

気持ちは分かりますが、雇用する側の企業はどうでしょう。
子供を産んでない人はどうでしょう。

企業には、せいぜい、育休期間中の社会保険料が免除になるくらい。
一定の期間欠員が生じたら、それを何らかの手段で穴埋めしなければなりません。
或いは他の従業員にしわ寄せがいくかもしれません。
更に、会社は、2か月に1回、職安に育児休業給付の申請に行っています。

出産・子育てと縁のない方もいらしゃいます。
雇用保険料は、被保険者と事業主とで折半で負担していますので、
そういう方たちや企業も育児休業給付の一部を負担していることになります。
もらえる人ともらえない人の「格差」が広がるわけですね、

保護されるのは、育休取得者のみ。

企業などにも奨励金などの何らかの手当をすべきではないでしょうか。

中小企業では、公務員や大企業のように
「はい。どうぞ、どんどん育休取ってください」
とまでは言い難い面もあります。

当事務所で手続きした育休取得者の方々は、かなりの率で、育休が
終わると辞めてしまいます。厚生労働省がその数字を発表しないので
そのような離職者がどのくらいいるか分かりませんが。

受給要件の面では、疾病、他の子の出産や育休などで、欠勤が多い人の
賃金登録の場合もありますので、結構、最初の書類作成が複雑な場合があります。
当事務所では、受給要件をとことん追求し、もらえるかもらえないか
微妙な事例でも、最大限の努力をして職安に主張して手続しているつもりです。

そんな私でも、今以上の給付率アップが必要性があるのか、とても疑問に
思うのです。


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◆産前産後休暇の与え方 ~「初めての産前産後・育児休業」連載 その2~

2013年10月10日 18時55分18秒 | 産前産後・育児休業等
人事パーソンのための産前産後休暇の与え方

従業員さんから、「産前産後休暇」を取りたいと申出があった場合、
会社は、どのように産前産後休暇を与えたらいいのでしょうか。

●産前産後休暇の与え方
産前産後休暇は、労働基準法で次のように定められています。

「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に
出産する予定の女性が請求した場合においては、その者を就業させては
ならない。
2 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。
ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、
その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、
差支えない。・・・」(労働基準法65条第1項・第2項)

「産前6週間は自然の分娩予定日を基準として計算し、産後8週間の期間は
現実の出産日(又は人工流産を行った日)を基準として計算する。」
(S26.4.2婦発113号)

●産前休暇とは
産前休暇は、労働者が「請求した場合には」与えなければなりません。
産前休暇はいつから与えなければならないのでしょうか。上記によれば、
出産予定日の6週間(42日)前からです。この場合、出産予定日は産前休暇に含まれます。
例えば、出産予定日が5月12日の場合、産前休暇の開始日は4月1日となります。

●「出産」とは
労働基準法で「出産」とは、妊娠4か月(4×28日=85日)以上の分娩とし、
生産のみならず、死産(人工妊娠中絶は含まれる。)も含みます(S23.12.23基発1885号)。

●実務上の産前休暇の与え方
実務上は、「出産予定日」から起算して42日前から休み始め、
「出産日」までが産前休暇です。

ところで、出産が予定日より早まったり遅れたりする場合があります。
その場合、労基法上の産前休暇はどうなるのでしょうか。

産前休暇の原則は、出産日以前42日間ですが、
「出産日」が出産予定日より早まったら、その分産前休暇は短くなり、
反対に「出産日」が遅れたら、その分、産前休暇は長くなります。
例をみてみましょう。

・出産予定日:5月12日 出産日:5月12日 産前休暇:4月1日~5月12日(42日間)
・出産予定日:5月12日 出産日:5月10日 産前休暇:4月1日~5月10日(40日間)
・出産予定日:5月12日 出産日:5月14日 産前休暇:4月1日~5月14日(44日間)

●産後休暇
産後休暇は、原則として出産日後8週間(56日間)です。
こちらは、出産日を含まず、その翌日から起算します。

・出産予定日:5月12日 出産日:5月12日 産後休暇:5月13日~7月7日(56日間)
・出産予定日:5月12日 出産日:5月10日 産後休暇:5月11日~7月5日(56日間)
・出産予定日:5月12日 出産日:5月14日 産後休暇:5月15日~7月9日(56日間)

ただし、労働者が希望し、医師が支障がないと認める業務に就かせる場合は、
産後6週間(42日)後から就労させても差し支えありません。こういう事例は滅多に
ないと思いますが。

●注意点
・女性の場合は、労基法の産前産後休暇が終わった翌日から育児休業が始まることになります。
・産前産後休暇中の賃金の支払いにつては、労使の自由です。
・産前産後休暇期間中とその後30日間は解雇できません(労基法19条1項)。
・産前産後休暇期間は、平成26年4月1日より申出により労使共に社会保険料が免除となります。
・健康保険法の「出産手当金」の支給対象期間は、「出産日」以前42日間となります。

労働基準法65条の産前産後休暇の期間は、他の制度にも影響を与える
大切な期間といえましょう。

次回は、妊産婦の健康保持について述べてみましょう。

続く。

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◆統計から見る育児休業(「初めての産前産後・育児休業」連載その1))

2013年09月26日 11時05分45秒 | 産前産後・育児休業等
最近、人事パーソンの方から、
「当社で初めて産前産後・育児休業取得の社員が出ることになりました。
どのような手続きをしたらいいのかアドバイスください。」
とのご質問を受ける機会が多くなってきました。

そこで、少しずつ、それらの注意点や手続きのコツなどを
書き溜めていきたいと思います。

●はじめに

最近、育児休業を取得する人が増えてきたと感じています。
当事務所での手続実績では、健康保険の出産手当金を受給する人は、
ほとんどの人が雇用保険の育児休業給付を受給しています。
そこで、まず、雇用保険制度の統計から、どのくらいの人が
育児休業を取得しているのかみてみることにしました。

厚生労働省「労働統計要覧」を見ますと、「J 社会保障」の項目の中に
雇用保険の「育児休業給付」を受給した人の数や受給総額などが載っています。

全雇用保険の被保険者数約3,857万人(H23)に対し、育児休業給付を受給した
被保険者数は約22.4万人(同)、育児休業給付の支給総額263,161百万円(同)。

同じく平成23年の数字で、雇用保険の一般被保険者が失業し、
失業給付(基本手当)を受給した人の数を見てみますと、
受給者数は約1,643万人、支給総額904,702百万円です。

雇用保険制度では
・全被保険者数と育児休業給付の受給者数の割合 3,857対22.4(100対0.5)
・基本手当受給者と育児休業給付受給者の割合 1,643対22.4(100:1.3)
・基本手当総額と育児休業給付総額の割合 904,702対263,161(100:29)

と、こんな風に比べてみますと、いかに育児休業給付の支給額が
大きいかがわかります。
ちなみに、育児休業給付の支給額は、育児休業前賃金の50%。
育児休業は最大で1年6か月受給できますので、
90日分とか150日分などという失業給付(基本手当)に比べると、
大変厚遇されているといえます。

続く


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