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高齢者のサギングアイ症候群…手術で治り、人相が良くなるケースも 世界初「斜視」全国調査でわかったこと(4)

2025-07-08 05:30:34 | 健康講座

世界初「斜視」全国調査でわかったこと(4)

高齢者のサギングアイ症候群…手術で治り、人相が良くなるケースも


医療ジャーナリスト・油井香代子

 

▲「年だから仕方ない」と諦めている高齢者も多いが…

「物が二重に見える」と悩んでいる人は多いと思います。もし、60代以上でこの症状があったら、「サギングアイ症候群(SES)」かもしれません。

 高齢者の斜視に詳しい後関利明・国際医療福祉大学医学部教授(兼熱海病院眼科部長)はこう解説します。

「サギングアイ症候群とは、加齢性斜視のひとつで、目の周囲にある眼球を支えている靱帯が、加齢で垂れてしまい、眼球の位置の調節がうまくできなくなる状態です。そのため、眼球の位置がずれてしまい斜視になります。症状は物が二重に見える複視などで、高齢者の複視の原因で最も多いのがこのサギングアイ症候群なのです」

 後関教授によると、複視以外にもさまざまな症状があり、「ぼやける」「焦点が合わない」「距離がつかみにくい」「乱視のように感じる」などで、中には複視がない例もあるそうです。

 白内障や乱視など他の目の病気と症状が重なることもあり、「年だから仕方ない」と諦めている高齢者も多いと思われます。

 また、斜視が小角度で、ずれ幅が小さいため、はっきり2つに見えない症例も多く、ぶれて見えたり、ぼやけて見えたりします。さらに遠くを見る時には斜視になるが、近くを見る時には斜視にならないため診断が難しいそうです。


「年だから仕方ない」と諦めている高齢者も多いが…
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「この症候群はゆっくりと進行し、高齢になるほど増加します。しかし、気づきにくいため潜在患者さんが多いと思われます。診断の助けとなるのが、患者さんの顔貌です。サギング・ライク・フェース(Sagging like Face)と呼ばれている特有の顔つきで、上まぶたのくぼみ、眼瞼下垂(上まぶたが下がって見えにくくなる)、下まぶたのゆるみなどが特徴です。高齢者に多い顔つきですが、それだけ多い可能性があります」(後関教授)

 治療は手術とプリズム眼鏡(屈折を調整する眼鏡)があります。どちらを選択するかは斜視の状態によりますが、60%は手術となります。

「手術は患者さんの状態によって術式を選択して行います。従来は手術ができなかったものでも『段階的垂直直筋切腱術(GVRT)』という術式で可能になりました。私がこれまで行った手術では全例に効果があり、複視が治りました。ただ、13.4%は再手術となりました。患者さんに合わせた治療法を選択することが重要です」(後関教授)

 後関教授の臨床経験では、96歳の男性が手術で複視が治り、人生が楽しくなったと喜ばれたことがあったそうです。

「この方はよく見えるようになっただけでなく、周囲から“人相が良くなった”と言われたそうです。高齢者には斜視による生活の不便さを我慢している人もいますが、高齢でも手術が可能です」(後関教授)

 治療により人とのコミュニケーションも良くなれば、高齢者が元気になり健康寿命の延伸にもつながります。元気で長生きしたければ、まず、目の健康寿命を延ばすのが早道かもしれません。(『日刊ゲンダイDIGITAL』6月13日公開) =おわり

 

【油井香代子さんのプロフィール】 

長野県生まれ。信州大学人文学部卒業後、明治大学大学院修士課程修了。医療・健康・女性問題について新聞や雑誌などに執筆する他テレビ・ラジオなどで医療問題を中心にコメントや解説も行う。2007年よりイー・ウーマン「働く人の円卓会議」議長を務める。著書に「医療過誤で死ぬな」(小学館)、「あなたの歯医者さんは大丈夫か」(双葉社)など多数。


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