白井健康元気村

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旅の効用 【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(59)

2019-11-29 04:46:25 | 【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」

【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(59)

旅の効用                 

 

「誰だろう……雨男がいるんだな」

   と出かける前に悪態をつきながら、ダウンコート、スエットパンツ、毛糸の帽子、そしてブーツにも防水スプレーをかけた。11月22・23日に白井健康元気村(以下、「元気村」)の有志で出かける一泊旅行の目的地は鬼怒川温泉。まさに紅葉シーズンでもある。

   なのに、現地天気予報は気温も低く、しかも雨。起きてすぐの白井も雨だった。でも、駅の集合時間頃には霧雨となったので、携帯する傘をさすまでもなかった。白井駅と西白井駅から男性12人と女性3人の総勢15人が新鎌ヶ谷駅で乗り換えて松戸駅で降りる。

 松戸駅近くから出る伊東園ホテルズのバスに乗り込む。走行中のバスの窓には雨が打ち付けており、ガラスが曇って外の景色もよく見えない。バスの後方の席に乗り込んだ男性諸氏は、いたずらっ子のように、なんだか隠し事を企んでいる様子だ。

   途中、昼食休憩があった。乗ってきたバスを振り返ると、ボディには俳優の柳葉敏郎の顔がペインティングされているではないか。行楽シーズンで多くのバスが停車しているが、これでバスを間違えることはない。そう思うと、なぜか笑えてきた。

   日光が近づくと、雨も小降りに。窓から見える木々が色づいているのが見えた。ところどころのイチョウの真っ黄色になったのや、モミジの色も五色あり、オレンジや深紅を見つけて嬉しくなる。

 鬼怒川ロイヤルホテルの館内は客でごった返していた。到着した我々と帰途のバスを待つ人たちとが、交錯しているようだ。手続きを終えた元気村の玉井秀幸村長から部屋割りと、食事や風呂の場所や時間の説明を受ける。

   午後3時になったので、それぞれの部屋へ。私たち女性3人は同じ部屋だ。すでに布団が敷かれた部屋に入ると、窓からは紅葉した木々が。下の方には緑色をした川の流れが見えた。鬼怒川だ。でも、なぜこの字になったのだろうか。

   毛野国といっていた頃には「毛野川」、優しく絹のような流れから「絹川」、その穏やかな流れが一旦荒れると、鬼が怒ったように荒々しくなるから「鬼怒川」となったとか。ま、諸説いろいろあるようだが……。

   私たち3人はすぐに意気投合して、フロントで選んできた浴衣に着替えることもなく、お風呂も後回しにして、おしゃべりに花が咲いた。いつも優しく微笑みが絶えない上品なNさんは、娘時代も結婚されてからも、何不自由もなく幸せな生活をされてきたようだ。

 ご一緒して来られたご主人も品があり、優しい紳士だ。Nさんの話によると、ご主人の兄弟や義父といった男性全員が女性に対してはとびきりの気遣いと親切をされる方々とのことだ。

 Hさんは、私たちと一緒では気の毒なくらいにお若いのだが、普段はお忙しいので詳しく聞くことは出来ないが、そのお仕事ぶりや勉強ぶりに感嘆するばかり。そして、彼女のお嬢さんもウーマン・オブ・ザイヤーにも関わるお仕事をされているとか。

 Nさんとは違った形ではあるが、厳格なお父さんとお嬢様育ちのお母さんの狭間で、力強く自分らしい生き方を身に着けてこられたのだろう。豊富なお話の中で、Hさんの学生時代の親友との交流とエピソードとして、過酷な運命にも耐えて人生を全うした人の話を聞き、私は思わず涙してしまった。

 また、ご主人と各地を転勤されてきた中で、思い悩むことがあっても、人としての真心を貫いてこられたのだと、彼女の真の賢さを知った。

 私の場合は両親を幼少期に亡くし、常識や優しさ、賢さには欠けているのだが、Hさんから「岩崎さん、大好きよ」と言っていただき、Nさんも穏やかな笑顔を向けてくださった。

 そして、日頃お互いに感じている悩みの話も出た。どんな会も高齢化していて後継者となってくれる人材がいないことだ。長老となれば若手の育成をしなければならないが、往々にして持っている権力を振りかざす人も少なくない。困ったものだ。

 さて、バイキング形式での食事は、今ではどのホテルも採用している。お酒類もその範疇にあって、男性にはきっと大好評だろう。NさんもHさんもご夫婦共に全く飲めない体質とのことだ。私の家系は飲めるが、夫が飲めない人なので、普段はそれに合わせた生活をしているが、こんな時の私はビールをコップ一杯くらいは飲むことにしている。

 食後はカラオケタイムとなった。部屋に入るが、使用許可の時間は1時間もなく、なんと厳しいのだと呆れるが、マイクは常設されておらず、時間で受付での授受をするシステムだ。どんな時も身が軽く気働き抜群のHさんのお陰で始めることが出来た。

 こうした時には、一番に歌うのは誰しも少し抵抗もあるのだが、新会員で同じマンションのFさんが、スペイン語でトリオ・ロス・パンチョスの『ベサメムーチョ』を歌われ、流石だなぁと感心した。人柄が分かるそれぞれの曲の選択に、なるほどと思ったものである。

 私にもリクエストをするように周囲から声が上がったので、東日本大震災のチャリティソング『花は咲く』を選ぶ。これは「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で「嵐」が歌った奉祝曲『Ray of Water』を作曲した菅野よう子(即興ピアニストで作曲家の菅野洋子とは別人)の曲でもある。

 話すときにも抜群の声の良さを発揮されているTさんやHさんも時々一緒に口ずさんで下さったことが嬉しかった。そのTさんの歌声を是非に聞きたいと所望したが、時間切れになってしまったことが、とても残念で仕方がない。

 その後、部屋に戻ったが、集合がかかった。全員が一つの部屋に集まって、駄弁り会が始まったのである。男性陣にはアルコールの追加もされて、それぞれが楽し気に声高に談笑する。

 その場を盛り上げるための気遣いをされてのパフォーマンス、あれやこれやと遠慮のない会話。こうした笑ったり飲んだりが元気村の慰労会であるのを再確認することとなった。

 人は、好きなこと・楽なこと・特になること・都合の良いことだけを追求するものではない。元気村に在籍している人たちは、自分のできる範囲で心身の健康を目的としながら、少しでも何かに貢献できるのを喜びとしているようだ。

 翌日もすっきりと雨が上がることはなかったが、ホテルから歩いてすぐ近くの大吊り橋に出かけた。歩いていくと、橋が微妙に揺れるのを体感しながら、深緑の色をした鬼怒川の流れ、川上も川下も、少し煙ったような趣の風情がある中、美しい紅葉を目に焼き付けた。次の旅が楽しみである。


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