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新川千本桜 【連載】腹ふくるるわざ㉙

2022-07-02 05:27:44 | 【連載】腹ふくるるわざ

【連載】腹ふくるるわざ㉙

新川千本桜

桑原玉樹(まちづくり家) 

 

 

 

新川遊歩道ウォーキング

 体調不十分で中断していた家内とのウォーキングを6月30日に再開した。今朝のコースは、車で約10分の八千代道の駅に駐車して、歩いたのは新川沿い。国道16号線から県道千葉竜ケ崎線までの区間2.5㎞の両岸を往復した。
 昭和40年代から千葉市の花見川(花見川サイクリングロード)~八千代市新川(新川遊歩道)~印旛沼(印旛沼自転車道)にかけてサイクリング道路が整備された。全長約50㎞にもなる。今朝歩いたのは、そのごく一部区間だ。
 川岸には総数で千本を超す多種の桜が植樹されている。その日、歩いた区間は河津桜だ。あちこちの桜から鶯が「ホーホケキョ」と啼いては、「ケキョケキョケキョ」と木から木への谷渡り。「蝉時雨」ならぬ「鶯時雨」である。
 時折サイクリングの自転車が通り過ぎ、また川面に糸を垂れる釣り人をチラホラ見かけるのんびりしたコースだ。

▲新川遊歩道

 

「利根川東遷事業」と「印旛放水路」

 以前のこのブログで「印旛捷水路(しょうすいろ)」について書いたことがある。江戸時代、江戸の洪水対策、水運のために江戸湾に流れていた利根川を銚子の方に流すように切り替える「利根川東遷事業」が幕府により行われた。
 江戸が洪水から救われた一方、印旛沼は利根川の氾濫のたびに利根川の水が沼に逆流し、多大な洪水被害を蒙ることになった。

▲「利根川東遷」前後の利根川の流路(国交省ホームページの図より作成)

 そこで江戸幕府は、印旛沼の水を江戸湾に流すための河川掘削を三度試みた。新川は、印旛捷水路と同じく印旛沼の放水路で、花見川を経由して印旛沼と東京湾をショートカットする水路なのだ。
 しかし、花見川と連結する丘陵部分は軟弱な泥炭層がある難工事ということもあり、三度とも全て頓挫した。

▲利根川から東京湾まで(一般社団法人 農業農村整備情報総合センター資料を基に作成)

▲河川開削工事区間(八千代市郷土博物館資料とGoogle Mapより作成)

 

二宮尊徳も挫折

 1回目は千葉郡平戸村(現八千代市平戸)の染谷源右衛門が、幕府に申し出、幕府の補助金だけでなく、私財も投じて試みた。彼は、千葉県の小学校教科書にも載っていて郷土の偉人とされている。
 2回目は老中田沼意次の時。そして3回目は老中水野忠邦の時で、あの二宮尊徳も工事に関わった。水野は5つの藩(鳥取藩・庄内藩・沼津藩・秋月藩・貝淵藩)に御手伝普請を命じ、6万人の人員と23万両の費用をかけて工事を行ったが、水野の失脚によって3回目も挫折した。
 なお3回目はペリーが黒船で来た頃のこと。外国船によって浦賀が封鎖された時に備えて、北関東や銚子から江戸までの水路を確保するという目的もあったという。
 3回目の工事中には、印旛沼に怪物が現れる事件もあったそうだ。今は「印旛沼の怪獣」と呼ばれるこの怪物は、全身が真っ黒で手はヒレのようで爪があり、鼻は低く猿のような顔つき、全長約4.8m、顔回り約3m、爪の長さ約30㎝、手の長さ約1.8m、目の大きさは四斗樽ほどもあり、口の大きさは約1.5mもあったとの記録も残っているらしい。
 怪物は、水路工事をしていた者たちの前に嵐とともに突如出現。化け物が雷のような大きな音を立てると現場にいた役人ら13人が即死したという。

▲印旛沼の怪獣(東スポ記事より)

 
  さて工事が完成したのはなんと昭和44(1969)年。水資源開発公団によってだった。普段は新川→印旛沼→利根川と流れているが、利根川が増水したときには逆に印旛沼→新川→花見川→東京湾、と流している。こうしてやっと印旛沼周辺は長年悩まされ続けた洪水から解放されることになった。

新川千本桜の会

 平成13(2001)年、八千代市は新川沿いに桜を植樹することとし、「新川千本桜植栽事業委員会」を設立、桜の植樹費用を分担する里親募集を開始した。里親たちが植樹に込めた願いはプレートに印刷され、今も桜ごとに取り付けられている。

▲植樹記念プレート

 

 また平成15(2003)年、桜の維持管理のためのボランティアを市が募集し、「新川千本桜の会」が発足した。現在は9班、約130人が両岸に植えられた1230本の桜の管理、除草、支柱補修、ごみ収集などの活動をしている。近年は桜祭りでのライトアップも話題を呼んでいる。

▲新川沿い河津桜のライトアップ(「新川千本桜の会」ホームページより)

 

 その日の朝7時過ぎには20人ほどの会員が草刈り機での除草作業に汗を流していた。会は、平成17年から19年にかけて「イオン環境財団」から合計約800万円の助成を受け、機材を整備。さらに令和3年にセブンイレブン記念財団から21万円余の助成金を受けて機材を補充・拡充している。
 河川と防災調節池の違いこそあれ、白井市の南山公園で活動を始めたばかりの「グリーンレンジャー」の大先輩だ。今は細々とした活動しかできていない「グリーンレンジャー」だが、見習って活動が拡がるよう頑張りたい。


▲除草中の「新川千本桜の会」の皆さん

 

 

【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】

昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。


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