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京の夏の旅「大雲院・祇園閣」~大倉喜八郎の夢の跡

2018年08月14日 | お寺・神社・特別公開

八坂神社の南側に祇園祭の鉾のような建物が見えます。2018年の京の夏の旅で公開されている祇園閣(ぎおんかく)です。「鉾を年中見られるように」と、1928年(昭和3)年に実業家の大倉喜八郎(おおくらきはちろう)が、京都別邸・真葛荘(まくずそう)の一部として建設したものです。

最上階まで上ることができ、京都市街の絶景を楽しめます。晴れた空気の綺麗な日には大阪の日本一の高層ビル・あべのハルカスまで見えます。京都の昭和の名建築の一つです。



大倉喜八郎は明治から大正にかけて、軍の御用達商として富を築き、大倉財閥を一代で築き上げた実業家です。大倉財閥に起源のある企業は現在、大成建設やホテルオークラがよく知られています。

実は帝国ホテルも大倉喜八郎が渋沢栄一と共に開業したものですが、終戦直後の財閥解体で大倉家が帝国ホテルの持ち株を手放さざるを得なくなります。ホテル業への情熱を捨てきれなかった喜八郎の長男・喜七郎(きしちろう)が1962年(昭和37)年に開業したのがホテルオークラです。

祇園閣は現在、大雲院(だいうんいん)が管理しています。大雲院は本能寺の変で討たれた織田信忠の菩提を弔うために創建された寺で、1972(昭和47)年までは高島屋京都店の西側の寺町通沿いにありました。高島屋京都店の増床計画に伴い、金融機関の仲介で喜八郎の元別邸敷地と等価交換し、移転してきたものです。

江戸時代半ばには写生画の巨匠・円山応挙のアトリエが大雲院にありました。当時の応挙は京都随一の人気絵師であり、多数の弟子を抱えていたと言われます。大雲院の敷地も大きかったのでしょう。


掃除が行き届いている地蔵さん

祇園閣は、銅閣(どうかく)とも呼ばれます。屋根の素材や喜八郎の思いという様々な説がありますが、正直あまり一般的な名称ではありません。設計は平安神宮や築地本願寺で知られる名建築家・伊東忠太(いとうちゅうた)です。

屋根の上に伸びる細いポールは、祇園祭の鉾の真木を模しています。先端には鶴が羽を広げたモニュメントが据え付けられています。喜八郎は晩年に鶴翁(かくおう)と呼ばれており、自身の人生を重ね合わせたのでしょう。しかし祇園閣の完成を見ることなく、喜八郎はこの世を去ります。

境内には喜八郎の別邸の書院も残されていますが、京の夏の旅では公開されていません。祇園閣と同じく伊東忠太の設計です。八角堂の形をした応接間など、興味津々です。公開の機会を待ちたいものです。

祇園閣は祇園祭の山鉾を模すという、突飛な印象を受けますが周囲の街並みと緑に実によく調和しています。法観寺の八坂の塔と並んですっかり八坂のランドマークのように定着しています。

境内には天下の大泥棒・石川五右衛門の墓もあります。見応えのあるお寺です。


二寧坂、ここがスタバとは知らないと気付かない

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



非公開が多い明治の超お屋敷の魅力が濃密にわかる


京の夏の旅「大雲院・祇園閣」
【主催者による公式サイト】https://www.kyokanko.or.jp/natsu2018/natsutabi18_01.html#04

主催:京都市観光協会
会期:2018年7月7日(土)~9月30日(日)
原則休館日:9/26
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

大雲院 祇園閣
【京都市観光協会サイト】https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=1&ManageCode=1000272

※この寺は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。



おすすめ交通機関:
京都市バス「祇園」バス停下車、徒歩5分
JR京都駅から一般的な下記ルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
烏丸口「京都駅前」D1/D2バスのりば→市バス86/100/106/110/206系統→「祇園」バス停

※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。
※この施設には駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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