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京都国立近代美術館「バウハウスへの応答」~モダニズムの原点

2018年08月15日 | 美術館・展覧会

デザインの世界では世界的に知られるドイツの芸術学校BAUHAUS(バウハウス)は、来年2019年に創設100周年を迎えます。現在世界中でバウハウスの意義を再考するプロジェクト「bauhaus imaginista(創造のバウハウス)」が行われています。

日本では京都国立近代美術館で、日本とインドを例にバウハウスの教育理念がどのように受容されていったかを振り返る展覧会が行われています。バウハウスのデザインや造形に関する教育理念がいかに斬新であったかがよくわかる展覧会です。その教育理念は100年たった現在も脈々と受け継がれています。本当に驚きです。



バウハウスは、1919(大正8)年、工芸と美術の国立の学校としてドイツ中央部の都市・ヴァイマールで設立されました。ヴァイマールは、第一次大戦敗戦後に共和制を敷いたドイツの新憲法が制定され、バッハやゲーテといったドイツを代表する文化人が活躍した場所でもあります。第一次大戦終結からナチスの政権奪取までの間のドイツ国家を、通称としてヴァイマール共和国と呼ぶのはこの都市に由来します。

初代校長のWalter Gropius(ヴァルター・グロピウス)は、学校の創設に際し教育理念をうたったマニフェスト・バウハウス宣言を出します。デザインの世界ではとても有名な宣言です。

  • 建築・彫刻・絵画を志す者は手工業の原点に回帰すべき
  • 芸術は手工業が高められてこそ花開く
  • あらゆる造形活動の最終目標は建築である

グロピウスはものづくりの基本の上にデザインがあると説いています。20世紀に入ると大量の建造物や消費者向け製品が出回るようになり、モノとしての合理性や機能性とデザインによる芸術性のバランスをより高めるべきと考えたのでしょう。私はデザインの専門家ではありませんが、この考えは現代で見事に通用すると思えてなりません。


展覧会チラシ裏面
【画像出典】展覧会公式サイト

バウハウスの教育理念を日本でいち早く実践したのが1932(昭和7)年に建築家・川喜田煉七郎(かわきだれんしちろう)が東京に創設した新建築工芸学院です。川喜田自身はバウハウスで学んでいませんが、水谷武彦(みつたにたけひこ)らのバウハウス留学生を講師に招き、とても斬新な教育を行いました。

しかしドイツでも日本でも戦争の影が覆いかぶさります。ドイツのバウハウスは1933(昭和8)年にナチスにより廃校されます。日本の新建築工芸学院も1936(昭和11)年以降、活動中止に追い込まれていきます。

現代の日本でデザイン教育機関として最もよく知られる桑沢デザイン研究所は、新建築工芸学院の卒業生・桑沢洋子が1954(昭和29)年、バウハウスの教育理念をあらためて実践する場として設立した専門学校です。桑沢洋子は大学として東京造形大学も設立しています。新建築工芸学院が日本にまいたバウハウスの種の育成は、桑沢デザイン研究所が受け継いだとも解釈できます。

【bauhaus imaginista公式サイトの画像】 会場内の展示の様子

会場内の新建築工芸学院時代のデザインをしのばせる展示は、今見ても斬新さを感じさせます。モダニズムという表現がとてもフィットするような作品がほとんどです。戦争の影が忍び寄る時代に学生たちが情熱をもって学んでいた様子がとてもよくわかります。

ものづくりにと造形のバランスがとれているからこそ、落ち着きとかっこよさが両立したモノや建築が生み出される。あらためて感じさせられた展覧会です。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



カンディンスキーがコンポジションを語った古典的名著


京都国立近代美術館
「バウハウスへの応答」
【美術館による展覧会サイト】

主催:京都国立近代美術館、バウハウス協会ベルリン・デッサウ・ヴァイマール、ゲーテ・インスティトゥート、世界文化の家
会期:2018年8月4日(土)~ 10月8日(月)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~20:30)

※展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、今後国内の他会場への巡回はありません。



おすすめ交通機関:地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→東山駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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