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妙心寺 麟祥院 江戸美術の名品が目白押し_京の冬の旅 特別公開 3/18まで

2019年01月21日 | お寺・神社・特別公開

妙心寺の塔頭3か所で行われている2019年の京の冬の旅の特別公開。春日局ゆかりの麟祥院(りんしょういん)にもぜひお出かけください。

  • 三代将軍・家光の乳母を務めた春日局の京都の菩提寺、ゆかりの建物や屏風が美しい
  • 海北友雪(かいほうゆうせつ)の雲龍図は雄雌ペアの日本最大級の龍の襖絵
  • ちょうどよい大きさの苔の枯山水の庭との距離が近く、女性的な空間


江戸時代初期の美術品が数多く大切に伝えられている寺です。前回レポートした龍泉菴とは対照的に境内はコンパクトですが、どこか肩肘張らずに時間を過ごせます。



麟祥院の創建は1634(寛永11)年で、家光もしくは春日局のいずれかを開基としたと考えられています。家光が春日局の京都における菩提寺を生前から設けた、春日局が1634年に早世した子・稲葉正勝の冥福を祈った、など創建の理由には複数の説があります。

いずれにしろ将軍の肝いりの寺であることは間違いありません。山城・淀10万石の藩主として明治まで続いた稲葉家が墓所としたこともあり、寺は大切に守られてきました。麟祥院の寺門は「三の字」で、稲葉家の家紋と同じです。

東京にお住まいの方は、麟祥院と聞くと湯島にある寺を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。江戸・湯島の麟祥院の方が京都より早く、1624(寛永元)年に春日局の隠居所として家光が創建しました。創建時は天澤寺と号していましたが、1643(寛永20)年に春日局が亡くなった際に、法号をとって麟祥院に改めました。寺の前の通りが春日通と呼ばれるのは、付近一帯が春日局に下賜されたことに由来します。

京都と湯島の麟祥院は、寺名・ゆかり・寺紋が同じで、宗派も同じ臨済宗妙心寺派です。一方違いもあります。京都の麟祥院が、春日局が亡くなる際に寺名を改めたのかはよくわかっていません。また春日局の墓は、湯島の麟祥院にありますが、京都の麟祥院にはありません。京都の墓は金戒光明寺にあります。


方丈と庭園

京都の麟祥院は伝来する美術品の多さが目立ちます。海北友雪の方丈障壁画・雲龍図は胴体をすべて描けないほど巨大です。雄雌のペアで描いている点も希少です。巨体の割には瞳が小さく描かれており、どこか愛嬌のある龍に仕上がっています。展示の一部は複製です。

春日局はよく知られるように、父が明智光秀の重臣だった斎藤利三です。利三が天王山の戦いで秀吉に敗れ処刑された際に、まだ3歳だった春日局を厚く庇護したのが、利三と親しかった友雪の父・友松(ゆうしょう)です。

春日局はこの恩を強く感じていたようで、友松の子・友雪を家光に紹介し、友雪が中央画壇にデビューするお膳立てを整えます。麟祥院の障壁画「雲龍図」「瀟湘八景図」「西湖図」は、友雪の出世作となった記念碑的作品です。なお友雪は友松の実子ではなく養子という説もあります。

狩野派による「百椿図屏風」は様々な品種の椿をとても美しく描いています。麟祥院の空間が女性的に感じられるのはこの名品の存在も大きいでしょう。


御霊屋横の坪庭

方丈に連結された御霊屋(おたまや)は、仙洞御所にあった建物を後水尾天皇から下賜されたもので、王朝文化の香りがする格調高いデザインです。中央には春日局の木造が安置されています。

方丈と御霊屋にL字型に囲まれた庭園は、緩やかな高さの庭園が設けられており、鑑賞者から見やすくなっています。鑑賞疲れしないちょうどよい大きさにしつらえられています。麟祥院は明治時代に境内が近くから移転しましたが、建物はすべて移築されています。江戸時代の趣はしっかりとのこっています。



麟祥院は伝来品の質の高さが目立ちます。稲葉家による庇護のおかげでしょう。

日本にしか現存しない曜変天目茶碗の内、静嘉堂文庫美術館所蔵の国宝は、稲葉家に伝わったため、稲葉天目の通称でも知られています。家光が病に伏せる春日局に下賜し、稲葉家に伝わったとされています。稲葉天目はもしかしたら麟祥院に伝わることになった可能性もあります。そんなロマンが拡がる名刹です。


こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



「行こう」ではなく「住もう」です

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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
妙心寺 麟祥院
【主催者による特別公開公式サイト】

主催:京都市観光協会
会場:妙心寺 麟祥院
会期:2019年1月10日(木)~3月18日(月)
原則休館日:会期中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※1/20 10:55~12:15、1/27 10:25~11:45、13:25~14:45、2/10 10:25~11:45、2/ 17 12:55~14:15は、法要により拝観休止

※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この寺・堂宇は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。
※海北友雪「雲龍図」は一部が複製です。

妙心寺 麟祥院
【京都市観光協会サイト】



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「花園」駅下車、北口から徒歩12分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR嵯峨野線→花園駅

【妙心寺公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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