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江戸東京たてもの園 ~歴史・レトロ・自然が一緒に味わえる

2017年12月20日 | 城・屋敷・歴史遺産

2・26事件の高橋是清暗殺の現場

 

 

江戸東京たてもの園は、東京で失われつつあった歴史的建造物を、武蔵野の面影が残る小金井に移築して展示している野外博物館である。広大な森を有する小金井公園と、会員権価格が日本トップクラスのゴルフ場である小金井カントリー倶楽部が隣接している。四季を通じて植生が豊かでとても静かに散策を楽しむことができる。旧帝国ホテルの移築で著名な愛知県の明治村は明治時代の建築が中心だ。しかしこちらは昭和の戦前建築が中心になる。2・26事件の現場など、昭和史の生き証人となる建築も多い。

 

東京からJR中央線もしくは西武新宿線に乗って西に向かうと、少しずつ緑が増えてくるのがわかる。春には小金井公園の圧巻の桜並木がよく知られており、大変な賑わいとなる。現在のたてもの園は、この小金井公園に1954(昭和29)年に開設された、古代住居や江戸時代の農家を移築・展示する「武蔵野郷土館」が前身だ。

 

1993年には、江戸と東京の歴史や文化を伝える博物館として両国に「江戸東京博物館」が開館し、たてもの園はその分館として建造物を展示する博物館に位置付けられた。同年に武蔵野郷土館を拡充する形で改めて開園して少しずつ移築を続け、2013年に全30棟の移築を完了した。江戸や東京の歴史を、両国の江戸博で“美術品”から学び、小金井のたてもの園で“建造物”から学ぶことをおすすめしたい。

 

園の入口のビジターセンターの右手のセンターゾーンには歴史的な建造物が並ぶ。中でも目玉は、明治末から戦前の昭和にかけて大蔵大臣や首相として金融政策に辣腕を振るった高橋是清(たかはしこれきよ)の赤坂にあった旧宅だ。1902(明治35)年の建築で、当時は超高級品だったガラス窓を通じて揺らいで見える木々の緑がとても美しい。景色が揺らいで見えるのは、ガラスを手作業で板状に延ばしておりガラスの厚さが均質でないためだ。しかしその歪みを通じた光はとてもレトロで、一枚一枚異なる絶妙な色の変化を感じさせてくれる。現在では手延べの技術が機械化によって失われているため、当時のガラスが割れてしまったら二度と再現できないと言う。歪んだガラスを通じて見える光は、洋館よりも和風建築の方がなぜか美しい。都内で歪んだガラスを鑑賞できる数少ないスポットである。

 

高橋是清はこの建物の2Fで銃弾を受けて暗殺された。建築場所は変わったが部屋は当時のままである。とても静かな部屋で、80年前の惨劇から時が止まったようでもある。館内には是清ゆかりの品や写真も展示されている。実に感慨深い建物だ。

 

センターゾーンからさらに右手に進むとレトロな商家が立ち並ぶ東ゾーンに入る。ジブリものアニメの世界だ。下谷にあった居酒屋の「鍵屋」は幕末の建築で、壊滅状態の下町にありながら奇跡的に震災と戦災の両方を生き延びてきた。明治末期頃建築の根津の串カツ屋「はん亭」の建物とどこか趣が似ている。「はん亭」のように営業を再開できないものかと、つい不届きに思ってしまう。

 

「鍵屋」の隣にある、千住にあった1929(昭和4)年建築の「子宝湯」も見応えがある。玄関の破風屋根が堂々とした典型的な銭湯建築で、天井がとても高い室内もすがすがしい。ここも不届きにも、営業再開すれば大行列間違いなしと思える素晴らしいレトロデザインが楽しめる。

 

 

【公式サイトの画像】 鍵屋

 

【公式サイトの画像】 子宝湯

 

 

 

 

四季の彩りも美しい園内

 

 

園内はゆっくり歩いてほしい。レトロで美しい建物を見ると目の保養になり、新鮮な植物イオンで体がリフレッシュされる。隣接する小金井公園とともにピクニック気分で訪れることができる。歴史と文化と自然が三位一体で味わえる園である。

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

2014年に園で開催された展覧会の公式図録 

江戸東京たてもの園

http://www.tatemonoen.jp/

原則休館日:月曜日、年末年始

※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。

 

 


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