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旧朝倉家住宅・代官山 ~東京都心に現存する大正モダニズム空間

2017年12月21日 | 城・屋敷・歴史遺産

代官山にこんなところがあったのだ

 

 

旧朝倉家住宅は、東京・代官山にある大正時代の和風建築で、関東大震災と戦災の両方を生き残った、数少ない強運の持ち主である。近年は建築ファンも多くなり、今までは正直低かった知名度も少しずつ上昇しているだろう。高台にある代官山の地形の高低差を活かした庭園と、大正モダニズムを謳歌した上流階級の数寄屋風屋敷の設えがとても美しい。東京都心で20世紀初頭の日本文化の先端を体感できる貴重な遺構であり、大切な友人やお客様を落ち着いて案内できるスポットとしておすすめできる。

 

 

 

どこか洒脱だが気品も感じさせる玄関

 

 

朝倉家は、江戸時代から続く渋谷近辺の大地主で、戦前には当主が東京府議会議長を務めた上流階級だ。敗戦で本宅(現在の旧朝倉家住宅)とともに多くの土地を手放さざるをえなくなったが、現在は隣接するヒルサイドテラスのオーナーとして、旧朝倉家住宅の保存とともに時代に応じた建物や街づくりに引き続き貢献している。

 

高台にある旧朝倉家住宅の南側は崖になっており、下には桜並木が美しい目黒川が流れている。昭和の半ば頃までだろうか、高層建築がなかった時代は富士山がよく見えたと言う。東京は全国でも丘陵に都心が広がる数少ない大都市であり、高低差を活かした眺望を楽しむ庭園が美しい。京都には見下ろして楽しむ庭園はほとんどないが、逆に東京には(京都のように)借景を見上げて楽しむ庭園はほとんどない。またかなり距離はあるが、富士山が見えるのも東京の庭園の魅力である。東西新旧の日本の“みやこ”で、地形による庭園の魅力の違いはとても興味深い。

 

 

 

杉の間から南の庭園を望む

 

 

庭に突き出た1Fの「杉の間」は、当主が私的な時間を楽しんだ部屋だ。杉の木目の模様に凝ったデザインから名がつけられた部屋で、くつろいだ空間から三方のパノラマで庭の景色を楽しむことができる。障子のデザインが和洋折衷の斬新さを楽しんだ大正モダニズムを感じさせる。まさに戦前に繁栄を謳歌した時代の東京都心の「市中の山居」だ。

 

 

 

庭から見た杉の間の障子のデザイン

 

 

近年はここも欧米の外国人観光客が多いようだ。欧米の外国人観光客は訪れた国の歴史や文化に興味を持つ。旧朝倉家住宅はそうしたニーズに都心で応えることができるためうってつけなのだろう。東京にもこんなところが残されている。

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

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旧朝倉家住宅(渋谷区サイト)

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/asakura.html

原則休館日:月曜日、年末年始

 

 

 


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