美濃国、現在の岐阜県南部は、古くから都と東国を結ぶ東山道(江戸時代の中山道)が通っていたこともあり、古刹の宝庫です。美濃西部の中心都市、大垣から北へ25kmほどのところにある華厳寺(けごんじ)は、そうした見事な古刹の一つです。
西国三十三所の観音巡礼では唯一近畿地方以外にあります。札所番号も最終の33番であることから、この寺で満願(まんがん、33か所全部を巡礼し終えること)を達成する人々に昔から愛されてきました。
岐阜県を代表する桜と紅葉の名所でもあります。
仁王門が額縁として緑に映える
寺伝によると華厳寺は、平安時代初期の798(延暦17)年に創建され、まもなく桓武天皇の勅願時として官寺になります。花山法皇や後白河法皇など巡礼好きの法皇もたびたび訪れています。平安時代には最終札所ではなかった記録もありますが、三十三所巡礼が庶民の間にも広がり始めた室町時代には現代の札所順が定まった可能性が高いでしょう。
いにしえの趣を残す参道
県道から華厳寺へ向かう入口には総門があり、駐車場・バス停も設けられた参拝ステーションエリアになっています。境内入口である仁王門へは1kmほど参道が続き、飲食店や土産物店が軒を連ねます。
昔の雰囲気をこわさないようデザインされた建物が多く、江戸時代の街道を歩いているような気分にさせてくれます。サクラとモミジが並木として植えられており、春秋のピーク時以外にも美しい緑のトンネルを作ってくれています。
仁王門には山号である「谷汲山(たにぐみさん)」の提灯がかかげられ、門としての風格を引き締めています。仁王門から先の境内はさらに緑が濃くなります。まっすぐ本堂へ向かう参道が途中から石段になり、本堂が見え始めるあたりでは特にパワースポット感が強くなります。
本堂の本尊・十一面観音は秘仏で以前は33年毎に開帳されていたようですが、現在は定期的な開帳は行われていません。お寺の秘仏は近年、開帳頻度が高まるのが一般的ですので、何か理由があるのでしょう。またいつか定期開帳が復活することを待ちたいと思います。
本堂では他の仏像も公開されていませんが、最終札所としての見どころがあります。柱にピカピカの青銅の鯉が付けられています。三十三所巡礼の満願を迎えた者が、この鯉に触れて精進落とし(しょうじんおとし)をする習わしがあります。俗世間に戻って普通の生活に戻ることになります。
笈摺堂の千羽鶴
本堂の裏には笈摺堂(おいづるどう)があります。笈摺とは、巡礼者が身に着けていた白い法被のようなもので、満願を迎えた者が無事を感謝してこのお堂へ身に着けていた笈摺を奉納します。千羽鶴は笈摺の読みが折り鶴に通じることから、よく奉納されているそうです。満願に感謝する巡礼者たちにとても愛されている寺であることがわかります。
四国八十八か所の最初と最後の札所にも特別な雰囲気がありますが、西国三十三所もしかりです。西国三十三所の1番札所は和歌山県のほぼ南端、那智の滝のそばにある青岸渡寺です。大阪京都からの距離はありますが、パワースポット感は最高クラスです。最初と最後、ぜひ訪れてみてください。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
みうらじゅんが心を奪われた美仏たち
華厳寺
【公式サイト】http://www.kegonji.or.jp/
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00=17:00
※公開期間が限られている仏像や建物があります。
おすすめ交通機関:
JR大垣駅から車で50分
名神高速「関ケ原」IC、東海北陸道「岐阜各務原」ICから車で60分
JR東海道線「大垣」駅→養老鉄道「揖斐」駅→揖斐川町コミュニティバス「谷汲山」下車、徒歩10分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場があります(休日や特定期間のみ有料)。
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
________________________________
→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal
「お寺・神社・特別公開」カテゴリの最新記事
あの本能寺は今どうなっているか?_光秀と信長の夢の跡
黄不動の彫像、世界最古のビザ_大津 三井寺の至宝が特別公開
世界最高峰の天平彫刻と静かに向き合える_東大寺 戒壇堂 四天王
里山風景の中に美少年のような十一面観音_京田辺 観音寺
南山城に不思議な魅力の白鳳仏_カニがいっぱい蟹満寺
福岡 宗像大社_大陸との交流が封印された沖ノ島は素晴らしい世界遺産
今しか見れない仁和寺の魅力_観音堂&御殿 特別公開 7/15まで
京都の”端っこ”はやはり素晴らしい_嵯峨野 愛宕念仏寺 ほのぼの石仏
琵琶湖疎水の脇にたたずむ安祥寺、驚きの国宝美仏が伝わる
京都 大覚寺 王朝文化を伝える美仏と書_「天皇と大覚寺」展 5/13まで