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京都国立博物館「百万遍知恩寺」 ~京博らしい一級品が揃う展覧会

2018年08月16日 | 美術館・展覧会

百万遍(ひゃくまんべん)は、京都人はもとより京都大学関係者にとってはかけがえのない交差点名としてよく知られています。由来は近接する京都における浄土宗の有力寺院・知恩寺(ちおんじ)にあります。

知恩寺は幾度も焼失・移転を繰り返してきたにもかかわらず、文化財がきちんと伝えられていることでも知られています。京都国立博物館では2008年から知恩寺にのこされた「宝物録」をもとに文化財調査を行っており、その成果として数々の名宝をお披露目する展覧会を行っています。近年、快慶作と推定された阿弥陀如来も出展されます。



百万遍の「遍」は回数を意味します。鎌倉時代末期に知恩寺の僧・善阿空円が七昼夜に渡って百万回の念仏を唱えて疫病を鎮め、後醍醐天皇から寺号として「百万遍」を下賜されます。以降は知恩寺よりも百万遍の方が名称としてはよく知られるようになっていきます。

知恩寺は後醍醐天皇の頃は現在の同志社大学および相国寺付近にありましたが、相国寺を創建した足利義満により立ち退きを迫られ、御所の西の一条油小路に移転します。その後も焼失や移転を繰り返し、鴨川の東の現地に落ち着いたのは江戸時代初めの1662(寛文2)年になってからです。

ちなみに一条油小路には「元百万遍町」という住所表示が現在も続いています。京都では移転前の地にその寺社名が地名として残されることはよくあります。

浄土宗(鎮西派)の寺院としては、現在総本山の知恩院と本山争いをしていたこともある中心的な存在です。百万遍知恩寺と知恩院、寺名はとてもよく似ています。いずれも浄土宗の開祖・法然が開山、法然没後に教団を立て直した源智(げんち)を二世(第二代住職)としています。百万遍知恩寺の鎮西派における伝統の重みがよくわかります。



展覧会は平成知新館の2Fを使って行われています。

【公式サイトの画像】 浄土曼荼羅図

「浄土曼荼羅図」は奈良・當麻曼陀羅の鎌倉時代の模本と考えられています。発色が比較的よくのこされており、浄土曼荼羅にかける民衆の思いがひしひしと伝わってくるようです。

【公式サイトの画像】 阿弥陀如来立像

阿弥陀如来立像は、近年になって快慶もしくはその工房の作である可能性が高いと認定されたものです。確かに快慶らしい落ち着きが表現されており、静かに向き合うには絶妙のお顔をした仏様です。

【公式サイトの画像】 蝦蟇鉄拐図

蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)は、宋から元にかけて活躍した顔輝(がんき)の真筆です。室町時代の日本の絵師の多くが模写した絵師で、感情がストレートに伝わってくる写真のようなリアルな人物表現がとても斬新です。800年前の作品とは思えません。保存状態がとても良い一級の名品です。



百万遍知恩寺は、毎月15日のフリーマーケットと秋の古本市の会場として京都人にとても親しまれています。現代の人気と伝わる名品が両立する寺はなかなかありません。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



京都人が大好きな手づくり市(蚤の市、フリマ)の徹底ガイド


京都国立博物館
特集展示「百萬遍知恩寺の名宝」
【美術館による展覧会サイト】

主催:京都国立博物館
会期:2018年8月7日(火)~9月9日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~20:30)

※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。

百万遍知恩寺
【公式サイト】http://chionji.jp/



おすすめ交通機関:
京都市バス「博物館三十三間堂前」下車、徒歩0分
京阪電車・七条駅下車、3,4番出口から徒歩7分
JR京都駅から徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:10分
京都駅烏丸口D1/D2バスのりば→市バス86/88/100/106/110/206/208系統→博物館三十三間堂前

【公式サイト】 アクセス案内

※休日の午前中を中心に、京都駅ではバスが満員になって乗り過ごす場合があります。
※休日の夕方を中心に、渋滞と満員乗り過ごしで、バスは平常時の倍以上時間がかかる場合があります。

※この施設には有料の駐車場があります(公道に停車した入庫待ちは不可)。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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