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京都・鷹峯・源光庵 ~京都を代表する円窓には静寂が最も似合う

2018年06月26日 | お寺・神社・特別公開

京都の北の隅っこ、鷹峯の常照寺のすぐそばに源光庵(げんこうあん)はあります。本阿弥光悦が光悦村を形成する以前からあったため、法華宗ではなく禅寺です。

禅寺らしい趣のある室内空間が素晴らしく、円窓(まるまど)と角窓(かくまど)がツインで並ぶ光景は、京都を代表するグラビア写真としてよく用いられています。この窓は静かに鑑賞してこそ価値があります。混雑する紅葉期を避けることをおすすめします。



源光庵は、室町時代に臨済宗大徳寺の高僧の隠居所として創建されました。江戸時代半ば1694(元禄7)年に曹洞宗の高僧・卍山道白(まんざんどうはく)が再興したため、京都市内では数少ない曹洞宗寺院になっています。

円窓は、禅の悟りの境地を象徴するもので「悟りの窓」と呼ばれます。角窓は、人間が一生逃れられない四苦を象徴するもので「迷いの窓」と呼ばれています。

この部屋は、禅の教えに基づき自己と向き合い、心を軽くするためにあるものです。京都を代表する美しい光景であることは間違いないですが、宗教空間として静かに窓と向き合う(鑑賞する)ことが大切です。京都の寺が美しいのは、こうした一般には見えない宗教的な意義を大切に守っているからです。

そのため混雑する紅葉期はおすすめしません。紅葉期は人が多いのはやむを得ないですが、いただけないのは写真撮影のマナーの悪さです。綺麗な構図を探すことに夢中になり、立入禁止のエリアに入る、苔を踏む、狭い通路に三脚を立てて通行の邪魔になる、静かな部屋でシャッター音を響かせても平気、こんな大人が本当にたくさんいます。

地震などの災害時にだけ強調される日本人のマナーの良さに、疑問を感じざるをえません。欧米と異なり、日本人はマナー教育をされていないため、大人でもわからない人が多いのです。

日本の寺社や美術館で撮影禁止にする理由の一つが「マナーの悪さ」です。「著作権保護」だけでは決してありません。源光庵も、紅葉期だけは写真撮影禁止にしていると聞きます。混雑だけでなくマナーの悪さで嫌な思いをするくらいなら行かない方がましです。



この円窓を見てください。7月に撮影したものですが、生き生きとした緑が抜群に美しいと私は感じます。参拝者が少なく静かに部屋に座って鑑賞できるため、まして美しく見えます。真冬の雪化粧の光景も、きっと同様に見事な美しさを示してくれることでしょう。

円窓と角窓を室内から見るだけでなく、外側の庭も鑑賞しましょう。北山を借景とした豊かな緑はかけがえのない輝きを見せています。禅寺は自己と向き合うために美しい庭を作ります。しっかりと庭とも向き合うと、さらに心が軽くなります。



円窓のある本堂は、卍山道白による再興時の建築です。養源院など京都市内の寺に多く見られる「伏見城の血天井」があることでも知られますが、このエピソードには摩訶不思議なところがあります。

伏見城は1600年の関ケ原の戦い前夜に西軍に攻められて全焼したとされています。源光庵の本堂はその約100年後に建てられたことになります。いずれの寺院も、本物の焼け残った血天井を回収し、伏見城で討死した東軍の将兵を弔うために設置されたものか、何らかの情報を待ちたいところです。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



水野克比古の写真で秋と冬の京都を予習


源光庵
【京都市観光公式サイト】
原則休館日:なし
開館(拝観)受付時間:9:00-16:30
※公開期間が限られている仏像や建物があります。

おすすめ交通機関:
地下鉄烏丸線「北大路」駅バスターミナルから市バス「北1系統」で「鷹峯源光庵前」バス停下車、徒歩1分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:45分
JR京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→市バス→鷹峯源光庵前
※この施設には駐車場があります(紅葉期は利用不可)。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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