美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

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福井・永平寺 ~独特の空間美と禅体験メニューは格別

2018年09月28日 | お寺・神社・特別公開

曹洞宗のダブル大本山の一つ、永平寺(えいへいじ)は福井県の山深い里にあります。現在も数多くの雲水(うんすい、修行僧)が修行に励む境内は、山の斜面に張り付くように造られています。延々と連なり階段もある廻廊が永平寺独特の景観を形成しています。

参拝する際は、夏でも冷たい廻廊の板張りを進んでいきます。仏殿・法堂を目指し階段を上がっていくにつれ、曹洞宗らしいシンプルで厳格な空間が広がってきます。この厳格さが永平寺の最大の魅力でもあります。

廻廊はひっきりなしに雲水が通行していきます。かなりの人数がここで修行していることがわかります。一般の参拝者向けにも、座禅など豊富な禅寺体験メニューが用意されています。参拝はもちろん、体験も大いにおすすめできる、日本を代表する仏教寺院です。


階段状の回廊は永平寺らしさの象徴

永平寺は、京都で既存仏教から迫害された曹洞宗の開祖・道元(どうげん)が、越前の支援者から提供された現在地に1244(寛元2)年に開きました。能登の総持寺と共に曹洞宗の大本山として栄え、ひたすら無心になって座り続ける只管打坐(しかんたざ)の聖地として現在に至っています。

伽藍は幾度も火災に見舞われており、すべての建物が江戸時代半ばから昭和にかけての比較的新しい建築です。建築としての国の文化財指定はありませんが、厳格な曹洞宗を具現化したような静寂な空間にはここにしかない見応えがあります。


境内への入口

吉祥閣(きちじょうかく)で拝観受付を済ませると、次に進む傘松閣(さんしょうかく)の大広間で、川合玉堂ら昭和初期の100名以上の日本画家たちが描いた天井画を目にします。永平寺の参拝コースの中では唯一のきらびやかな空間で、花鳥を中心にとても精緻に描かれた作品ばかりです。参拝に訪れた人たちをもてなす場として造られたのでしょう。


廻廊がひたすら続く

永平寺の各建物を連結する廻廊はすべて屋根付きで、雨や雪が降っても参拝に支障がありません。この屋根が永平寺の独特の空間を巧みに演出しています。昼間でも暗い廻廊は延々とつながっており、冷たい板張りの廊下をきしませながら歩いていきます。神聖な世界にどんどん入り込んでいく高揚心が刺激されます。

時折、経を唱える雲水の声も聞こえてきます。京都にも禅寺は数多くありますが、このような”ライブ感”を体感できる寺はそうそうありません。廻廊からは境内を取り囲む木々の緑がとても美しく見えます。真冬の雪景色はさらに格別の趣があるでしょう。


斜面に張り付く境内の緑が美しい

参拝には1時間ほどかかります。拝観できる建物は多く、廻廊もかなりの距離になります。参拝コースを一周して最初の吉祥閣に戻ってくると、興味深い立て札が目に入ります。出入り自由で座禅ができる部屋が用意されており、数人の外国人が座禅をしていました。私は時間の都合でできなかったのですが、もう少し余裕のある予定にしていれば、と後悔しました。



永平寺にのこされた文化財は、吉祥閣に隣接する聖宝閣(しょうぼうかく)で公開されています。ただ拝観コースからは離れており、拝観者は少ないと言わざるを得ません。

永平寺は、座禅・写経・宿泊による修行体験など、一般向けの体験メニューがとても充実しています。独特の空間と体験メニューの豊富さは他の寺にはなかなか見られません。

【公式サイト】 体験メニューの案内

曹洞宗の禅を広く知ってもらうとする永平寺の姿勢には好感が持てます。厳格なイメージの強い曹洞宗ですが、マーケティングにもきちんと努力されているようです。

ただし公式サイトの情報発信には課題も見られます。拝観時に配布される紙リーフレットでは詳しく堂宇の説明がなされていますが、公式サイトでは説明されていません。訪問前に永平寺のことを予習したいニーズには応えられていません。素晴らしい禅空間を持っているだけに、今後の対応を願ってやみません。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



その日、僕は出家した。


永平寺
【公式サイト】https://daihonzan-eiheiji.com/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~17:30(11~4月は8:30~17:00)

※行持の都合により、拝観時間が変わる場合があります。
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。

◆マナー教室◆

◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
 手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。
◇庭を散策する場合、通路以外は立ち入り禁止!コケや芝生がふまれて死んでしまいます。



◆おすすめ交通機関◆

JR福井駅から京福バス「特急永平寺ライナー」で「永平寺」バス停下車、徒歩5分
JR福井駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
福井駅東口永平寺行きバスのりば→特急永平寺ライナー→永平寺

福井駅まで
東京駅から東海道新幹線・米原駅で在来線特急に乗換て3時間20分
大阪駅から在来線特急で2時間

【公式サイト】 アクセス案内

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には駐車場はありません。有料の永平寺町営駐車場が利用できます。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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