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大阪市立美術館「ルーヴル肖像芸術」 ~人間模様までもが見える

2018年09月27日 | 美術館・展覧会

大阪市立美術館でルーヴル美術館の肖像画にスポットをあてた展覧会が始まっています。世界最大級の美術館であるフランスのルーヴルには、古今東西の膨大な数の肖像画が収蔵されています。肖像画だけでも充分、歴史や美術の歩みを語ることができるほどです。

展覧会は「肖像画がどのような目的で描かれたのか」を軸に構成されています。歴史の流れとともに、描かれた目的も変わっていく様子からは、肖像画が果たした人間模様の記録と記憶をとても興味深く学び、鑑賞することができます。

全112点の傑作が勢揃いです。当代きっての画家たちが描いた絶妙のモデルの表情を、じっと見つめてしまう作品ばかりです。


自分の肖像画を見れます


展覧会では肖像画が描かれた目的を3通りに分類し、章を構成しています。

第1章 記憶のための肖像

  • 原始的な肖像画の役割で、神に捧げたり子孫に残すために製作された。
  • 20cになると写真にその役割が移る。

第2章 権力の顔:

  • 政治権力者がコインなど様々な媒体を通じて自らの権威を誇示しようとした。
  • 著名な学者や官僚など英雄視される人物も時にモデルとなった。

第3章 コードとモード:

  • ルネサンス以降に市民階級が台頭し、肖像画のモデルは市井の人まで拡がる。
  • 肖像表現のルール(コード)をふまえ、衣服や装飾品で時代の流行(モード)を表現。


江戸時代までの日本の政治権力者は、肖像を権威の誇示に使うようなことは伝統的にしません。姿を見せない方が神秘的に思わせられる、と考える伝統があります。中世には存命中に肖像が出回ると、呪術の対象とされたり、暗殺に狙われやすくなるという理由でも、肖像は避けられていました。

そのため第2章の視点は日本にはなかった価値観としてとても興味深く鑑賞することができます。権威の誇示に肖像を積極的に利用したナポレオンの作品は特に充実しています。

【公式サイトの画像】 プロローグ マスク―肖像の起源

展覧会は、最古の肖像画が残る古代エジプトから始まります。「女性の肖像」はエジプトがローマ帝国の支配下に入っていた2cの作品ですが、エジプトとラテンの両文化が融合した表現が魅力的です。ミイラの頭部を飾る”遺影”として制作されたもので、真珠のイヤリングが落ち着いた表情をさらに美しく見せています。

【公式サイトの画像】 第2章 権力の顔

第2章は最も作品数が多い章です。高名なフランス王・フランソワ1世とルイ14世の肖像からは、性格までもが伝わってきます。ルイ13世の宰相として絶大な権力をふるい、フランス絶対王政の礎を築いたリシュリュー公爵の肖像からは、自身に満ち溢れた鉄の意志が感じられます。

ナポレオンの「戴冠式の正装」彫刻も圧巻です。いわゆる”どや顔”をしていますが、神格化したように見えるため、とても清楚でもあります。作者クロード・ラメの表現力にはほれぼれします。

七月王政の皇太子で国民に絶大な人気のあった「オルレアン公フェルディナン=フィリップ」を、アングルがとても気品のある姿に描いています。温和な人柄が伝わってくるようで、この肖像を見ると国民が期待を寄せることに完璧に納得できます。

一方フランス革命の直前に製作された「王妃マリー=アントワネットの胸像」も、まさに歴史を物語る作品です。気位の高い性格の表現がかえって美しく見えるところに、この作品の魅力があります。

【公式サイトの画像】 第3章 コードとモード

「赤い縁なし帽をかぶった若い男性」は、フィレンツェのボッティチェリの工房で当時よく制作されていた肖像です。市民階級がモデルとなった最初期の作品であり、今見てもかっこいいと感じるファッション・センスに見入ってしまいます。

「スカヴロンスキー伯爵夫人」は、王妃マリー=アントワネットの肖像画家として知られ、フランス革命で母国を脱出していたル・ブランがロシアの伯爵夫人を描いたものです。当時のヨーロッパ中の上流階級の女性に人気のあった彼女は、モデルの気品を温かく柔らかに描きました。展覧会のチラシの表紙にも採用されている”魅惑のまなざし”が印象的です。



ルーヴルのコレクションの奥の深さと幅の広さをあらためて実感できる展覧会です。11月以降には、西洋美術のエース研究者・神戸大の宮下規久朗教授や篠雅廣・大阪市立美術館館長による興味深い講演会も予定されています。こちらもぜひ。

【公式サイト】記念講演会、特別講演会の案内

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



あらゆる人間の営みは欲望によって成り立っている。


大阪市立美術館
ルーヴル美術館展 肖像芸術 一 人は人をどう表現してきたか
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:大阪市立美術館、ルーヴル美術館、読売テレビ、読売新聞社
会期:2018年9月22日(土)~2019年1月14日(月)
原則休館日:月曜日、12/28-1/2
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、2018年9月まで東京・国立新美術館、から巡回してきたものです。

◆マナー教室◆

◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
 手荷物は預ける、リュックは前に抱える、など配慮しましょう。



◆おすすめ交通機関◆

JR・大阪メトロ「天王寺駅」、近鉄「大阪阿部野橋」駅、阪堺電車「天王寺駅前」駅下車
各駅から天王寺公園内を通って徒歩5~10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→天王寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。有料の天王寺公園地下駐車場が利用できます。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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