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桂離宮を思わせる上質空間 相国寺 慈照院_京の冬の旅 特別公開 3/18まで

2019年01月17日 | お寺・神社・特別公開

普段は非公開の相国寺の塔頭・慈照院(じしょういん)が、京の冬の旅で特別公開されています。

  • 銀閣寺と共に足利義政の菩提所となった伝統のある寺
  • 桂離宮を造営した八条宮家の菩提寺でもあり、空間は桂離宮のように上質
  • ユネスコ「世界の記憶」に登録された江戸時代の朝鮮通信使の史料も美しい


江戸時代の宮家が好んだ上質な空間が見事にのこされています。京都でも天皇家・宮家が実際に使用した建物はあまり残っておらず、室内を鑑賞できるところも限られています。貴重な機会です。



慈照院という寺名を聞くと、やはり銀閣のある慈照寺を思い浮かべます。「慈照」とは足利義政の法号(ほうごう、死後の名前)です。室町時代の相国寺の塔頭は、将軍の位牌を置く菩提所となる際に、その将軍の法号を寺名にする習慣がありました。

慈照院は室町時代半ばの1405(応永12)年に大徳院という名で創建され、1490(延徳2)年に足利義政が死去した際に、慈照院と改称されました。

江戸時代初めの慈照院の住職・昕叔顕啅(きんしゅくけんたく)は、後陽成天皇の弟で一時は次期天皇の候補にもなった八条宮智仁親王(はちじょうのみやとしひとしんのう)と懇意になります。桂離宮を嫡男の智忠(としただ)親王と共に造営し、幕末に桂宮と改称した八条宮家の初代当主です。

1629(寛永6)年に八条宮家の御学問所(おがくもんじょ)として建てられた書院・棲碧軒(せいへきけん)は現存しています。上質な欄間をはじめ、数寄屋空間の趣は桂離宮と共通点があります。オーナーが同じなのである意味当然です。


頤神室

昕叔顕啅は、織田有楽斎や千宗旦らとも親しく、当時の京都で華が咲いていた寛永文化の中心的な人物の一人だったと思われます。茶室・頤神室(いしんしつ)は昕叔顕啅と宗旦の合作です。宗旦好みの茶席と呼ばれ、宗旦狐(そうたんぎつね)伝説の舞台として知られています。

【Wikipediaへのリンク】 宗旦狐

その後も江戸時代を通じて慈照院には、本堂や玄関などが八条宮家と分家の広幡家から寄進され、現在の伽藍につながります。相国寺は京都でも有数の火事の多い寺で、応仁の乱以降も現在まで3度、伽藍がほぼ全焼する憂き目にあっています。相国寺境内の北の端に位置する慈照院はいずれも免れており、相当の強運の持ち主と言えます。

相国寺が動植綵絵を手放すほど苦しんだ明治の廃仏毀釈の嵐も、桂宮家と広幡家の帰依により乗り切ることができたと思われます。こうして現代に、江戸時代の宮家の生活をしのべる稀有な空間がのこされたのです。


外壁と竹林もとても上質

本堂の中には足利義政の木造があります。反対側のコンパクトな庭園は、中央の立派な松が印象的です。狩野派による「帝鑑図屏風」も展示されています。金地に中国皇帝の善政・悪性の様子を描いており、こちらも上質な本堂の空間によく調和しています。帝鑑図は江戸時代の初めに流行した題材です。

朝鮮通信使の史料では、通信使がのこした漢詩文を仕立てた屏風が注目されます。江戸時代の日本では、漢詩文を学べる貴重な機会として、朝鮮通信使がとても重要視されていました。慈照院が高い教養を楽しむ文化サロンであったことがうかがえます。

江戸時代を通じて対馬には、漢文や儒学の知識を生かして朝鮮との外交文書を管理する「修文職」が設置され、京都の禅寺から交代で僧が派遣されていました。慈照院の僧も幾度となくこの職を務めており、多数の史料がのこされました。

ユネスコの「世界の記憶」に指定されている漢詩文集「韓客詞章」は、とても上質な四本の巻物と箱が展示されています。江戸時代の日本の上流階級が憧れた名品であることが一目でわかる品格を感じさせます。

なお私も知らなかったのですが、ユネスコの世界記憶遺産は、現在「世界の記憶」と呼ぶようになっているようです。英語の原題には「遺産」を示す単語が付かないためです。



桂離宮は、庭園は周遊できますが、建物内部は公開されていません。慈照院では桂離宮の空間を疑似体験できます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



楽しむ時間帯に特化した京都本も続々登場

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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
相国寺 慈照院
【主催者による特別公開公式サイト】

主催:京都市観光協会
会場:相国寺 慈照院
会期:2019年1月10日(木)~3月18日(月)
原則休館日:会期中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この寺は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。

相国寺 慈照院
【京都府観光連盟サイト】



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「鞍馬口」駅下車、1番出口から徒歩5分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→地下鉄烏丸線→鞍馬口駅

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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