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驚きの相国寺コレクション展覧会がII期_承天閣美術館「温故礼賛」3/24まで

2019年01月16日 | 美術館・展覧会

相国寺・金閣寺・銀閣寺が所蔵する名品を一堂に公開する展覧会「温故礼賛」のII期が、京都の承天閣(じょうてんかく)美術館で始まりました。

  • 禅宗美術・茶の湯・江戸絵画では日本有数の質の高いコレクション
  • I期から大幅に展示替えされ、II期でも必見の名品が目白押し
  • 国宝・玳玻散花文天目茶碗と若冲らも江戸絵画はII期の目玉


室町時代に京都の寺で最も厚遇された相国寺には、足利将軍家の所蔵品である御物(ごもつ)も数多く伝わります。京都にのこされた有数のコレクションを鑑賞できる絶好の機会です。


美術館への”参道”

「温故礼賛」展のI期と比べ、II期では江戸時代の名品の展示に力を入れている印象を受けます。相国寺にずっと伝わる伊藤若冲の作品はもちろん、2004年に閉館した大阪の萬野美術館からの寄贈品もII期展示の主役を演じています。

展覧会の順路で最初に訪れる第一展示室では、主に室町時代の禅宗美術が展示されています。

【美術館公式サイトの画像】 夢窓疎石頂相

禅宗の高僧の肖像画である頂相(ちんそう)としては、驚くほど”美しく”描かれているのが「夢窓疎石頂相」です。頂相は、師から法灯を継いだ証として弟子に贈られるもので、威厳を強調して怖いほどにリアルに描かれるのが一般的です。

夢窓疎石は他の頂相でも、美少年のように描かれることが多く、実際に”男前”だった可能性が高いでしょう。南北朝時代の作品としては保存状態もよく、表情をさらに美しく見せています。

「縄衣文殊図」は寒山拾得図を思わせるような怪しげな表情の描写が目を引きます。文殊菩薩の聖地・中国の五台山に童子の姿で現れた文殊菩薩を描いた元時代の中国の名品です。寒山拾得のような怪しげな表情が、童子というよりも腹のすわった老婆のように見えます。観る者を惹きつけるオーラを出すような名品です。

長澤芦雪の「獅子図屏風」は、二匹の獅子が今にも互いに飛びかからんとする一瞬を描いています。獅子というよりも仙人のような顔の表情は、芦雪らしい”奇”なる表現の典型で、迫力よりもユーモアを感じます。描写はリズミカルで、生き生きとしています。見ると元気が出てくる作品です。


美術館へは庫裏横の門をくぐる

第二展示室は、江戸絵画と茶の湯の名品です。中央には常設展示となっている伊藤若冲の金閣寺書院の障壁画があります。若冲の出世作で、画家としての名声を確立するきっかけとなった作品です。

【美術館公式サイトの画像】 伊藤若冲 鹿苑寺大書院 葡萄小禽図

若冲作品では他に「亀図」が目に留まります。若冲88歳、絶筆に近い作品です。首を伸ばして見上げる亀の姿が、若冲の老境地を表しているようです。

【主催者:京都新聞サイトの画像】 佐竹本三十六歌仙絵「源公忠」、俵屋宗達「蔦の細道図屏風」

大正時代に分割された佐竹本三十六歌仙絵で相国寺が唯一所蔵する「源公忠」もII期で展示されています。黒装束が紙の上で輝くように表現されています。鎌倉時代の作品とは思えない保存状態のよさです。

三十六歌仙は岩佐又兵衛の一連の作品も展示されています。頬を豊かに描く”又兵衛フェイス”は、江戸時代の初めに流行した古典において、平安時代をしのばせる表現として人気を博しました。現代人の目で見ても、雅(みやび)でかつ、斬新です。

俵屋宗達「蔦の細道図屏風」は、宗達らしいダイナミックな構図の中で、蔦(つた)の繊細な魅力を引き出すように描いています。川のように流れる漆黒の部分が空間に緊張感を与え、屏風の置かれた部屋をとても凛とした雰囲気にします。


美術館横には京都の庭では人気の蘇鉄

【美術館公式サイトの画像】 野々村仁清「銹絵寒山拾得図茶碗」

茶碗も名品が揃っています。野々村仁清の「銹絵寒山拾得図茶碗」は、仁清のトレードマークともいえる色絵を用いずに寒山拾得を描いています。水墨画のように高尚な趣があります。

「玳玻散花文天目茶碗」は「無学祖元墨蹟」と並んで相国寺が所蔵する国宝です。II期では揃って展示されています。内面の散花文様の怪しげな輝きは、曜変や油滴とは異なる、天目茶碗としての妖艶な魅力を醸し出しています。

本阿弥光悦「赤楽茶碗 加賀」も、独特の赤みが美しい楽茶碗です。玳玻散花文天目と並んで萬野美術館の旧蔵品です。さらに古くは松平不昧(ふまい)が所蔵していました。


相国寺のアカマツ林に同志社の赤レンガが映える

京の冬の旅の特別公開や季節行事など、冬の京都もイベント満載です。ぜひお出かけください。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



在りし日の萬野コレクションを篠山紀信が記録していた

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相国寺 承天閣美術館
温故礼讃 -百花繚乱・相国寺文化圏 II期
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:相国寺承天閣美術館、京都新聞
会期:2019年1月13日(日)~2019年3月24日(日)
原則休館日:期間中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※12/24までのI期展示、1/13以降のII期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、3番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設に駐車場はありません。


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