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金沢と共通点の多い「高松」の至宝 ~栗林公園

2017年01月28日 | 城・屋敷・歴史遺産

栗林公園 東門


香川県は海に面した穏やかな土地で、陽の光の柔らかさがすがすがしい。今ではすっかり「うどん県」として有名で、郊外に点在する製麺所がイートインを供する「製麺所系」と言われるお店には、週末には関西・中国・四国全域のナンバーの車が今でもひっきりなしにやってくる。田んぼの真ん中でイリコ出汁のうどんをすすると、ここでしか体験できない味わいを感じて、確かに幸せになる。

日本人の関心はグルメに向いてしまっていることも多いが、地方でも増加の著しい外国人観光客は別の魅力に注目する。特に欧米系の観光客には「栗林(りつりん)公園」と「直島・豊島の美術館」が人気だ。

栗林公園は高松藩主による「大名庭園」で、欧米系の観光客にはそこにしかない固有の文化として関心が強い。2009年にはミシュランガイドで三ツ星、2011年にはアメリカの日本庭園専門誌として著名な「The Journal of Japanese Gardening」で、島根県の足立美術館、桂離宮に次いで3位にランクされている。

海に面した高松駅と高松城址「玉藻公園」の間からまっすぐ南に延びる高松のメインストリート「中央通り」に面した正門「東門」に立つと、この庭の大きな魅力の一つが自然と目に入る。借景となっている紫雲山だ。庭の西側ほぼすべての借景として、美しい稜線と木々の彩りの奥深さを見せており、ワイドな視界がこれから散策しようとする者の心をワクワクさせてくれる。

それもそのはず、この庭園は文化財指定された庭園では日本一の大きさで、南北650m、東西300mあり、園内には池が6つもある。散策所要時間は3時間以上みたほうがいい。大きさがこの庭の2つ目の大きな魅力で、スペースを活かした実に多様な景観と木々の植生が表現され、観る者の目を飽きさせない。

園の南側に位置する池「南湖(なんこ)」は、最初期に作られた園地で、歴代藩主がこよなく愛した場所だ。築山「飛来峰(ひらいほう)」からは、この池泉回遊式庭園で最も警官に映える建物「掬月亭」が、南湖の水面に優雅な姿を映し出しているのを見ることができる。公式サイトでも“園内随一のビューポイント”と紹介しており、だれでもそのすすめには納得するだろう。

「掬月亭」は、床が低く作られており、湖面との距離を近く感じさせ、低い視界から庭を見せるのが珍しい。茶席も供されているので是非お勧めする。建物は大きく、空間は凛としている。時が過ぎるのを忘れさせてくれる。


南湖に映える掬月亭


南湖には殿様の舟遊びに風情を体験できる「和船(わせん)」も運行されている。船からの眺めも楽しめば、この庭園の実力を一層実感できる。


和船(うどん県旅ネット)


この庭園は、幕末まで納めた「高松松平家」の初代藩主「松平頼重(よりしげ)」により、前領主が残した庭を元に本格的な造園が始められ、以降100年にわたって5代藩主頼恭(よりたか)の代まで造り続けられた。

松平頼重は、水戸黄門のモデルとして知られる水戸徳川家2代藩主「徳川光圀」の兄で、水戸藩主の父・頼房がなぜかの嫡男にしなかったため、若いころは不遇だった。しかし3代将軍家光におそらく信頼されたのだろう、四国の交通の要所である高松に12万石で入封される。頼重には“文化を愛する”血が流れていた。

茶道の武者小路千家の初代となる千宗守を迎え、武者小路千家を茶道指南役とした。三千家の他の二家は紀州徳川藩と加賀前田藩の茶道指南役となっており、親藩ではあるが石高がかなり小さい高松松平家に招くことができたのは、頼重がひとかどの人物であったからだろう。

あまり知られていないが、高松は金沢と共通点が多い。

・共に一級の庭がある、兼六園と栗林公園。
・共に三千家を茶頭に招いている。
・共に伝統工芸の漆器が秀逸、金沢漆器は比較的著名、現在10人いる人間国宝の内4人は高松。
・共に現代アートで人気の高い美術館がある、金沢21世紀美術館と直島・豊島の美術館群。

高松の松平頼重、金沢の前田綱紀、同時代の文化を愛した名君が生んだアイデンティティが今に受け継がれている。


日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。

栗林公園
休館日 なし(例外が発生する可能性もあるので訪問前にご確認ください)
公式サイト http://www.my-kagawa.jp/ritsuringarden

 

 


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