氷の海をグイグイ進む砕氷船
北海道の網走は、オホーツク海に面し「監獄」と「流氷」で知られる街です。例年2月になると北から流れてきた流氷が北海道のオホーツク海沿岸に到達し、海面が真っ白な氷に覆いつくされます。この流氷は世界で最も南に流れる流氷で、オホーツク海の豊かな大自然がその仕組みを支えています。
砕氷船ツアーで、神秘的な流氷が静かに動く様子が目の当たりにできます。恵みを享受しようとする生き物の営みも目の前で観察することができます。日本国内でこのような大自然の営みと間近に触れ合えることができるとは、とても幸せです。
網走の緯度は欧州のリゾート地・モナコとほぼ同じです。欧州の地中海沿岸は大西洋を北上する温かいメキシコ湾流とアフリカ大陸からの熱波の影響で、緯度の割にとても温かいのです。
一方オホーツク海では、北太平洋から流れる冷たい親潮が南太平洋から流れる温かい黒潮を三陸沖で遮るため、南から熱が入ってくることはありません。そのため北のシベリアの冷気の影響が強くなり、緯度の割にはとても冷たい海になっています。
またオホーツク海には外海からの海水の流入は少ない割に、サハリンの北端あたりでオホーツク海に流れ込む大河・アムール川からの淡水が多くなります。淡水は、塩水より比重が軽いので海面付近にとどまります。流氷は、塩分濃度が低く海面に近いほどできやすくなります。オホーツクの流氷は、アムール川の営みの賜物なのです。
アムール川はまた、シベリアの森で造られたミネラルをたっぷり含んでいます。このミネラルのおかげでオホーツク海は、植物プランクトン→動物プランクトン→小さい魚→大きい魚→肉食動物という食物連鎖が見事に好循環サイクルを形成しています。コンブやカニなど豊かな海の幸も、その根っこはアムール川の恵みなのです。
オオセグロカモメが頻繁に砕氷船で休息を取る
砕氷船からは、鳥や動物が佇んでいる姿を観察することができます。オオセグロカモメはオホーツク海沿岸では最も行く見られるウミドリで、砕氷船にもよく降りてきます。人間が間近にカメラを近づけてもまったく驚きません。
船内の遭遇カレンダー
運が良ければ天然記念物のオオワシやオオジロワシに遭遇します。羽を広げれば2mを超す巨大な鳥で、魚をハントする間に氷の上で休息しています。アザラシがいることもあります。船内ではオオワシ・オオジロエアシ・アザラシが目撃された日をカレンダーに印をし、乗船客に遭遇の目安を情報提供しています。ぜひ公式サイトでも公開してほしいものです。
初めて見た青い氷
氷の密度が濃くなっていくと、氷が青いことに気づきます。印刷物やモニターでは見たことがないような神秘的な青です。実物は写真よりもはるかにはっきりと、バックライトで照らされているように青い色が見えます。私の現在の撮影テクニックではこの写真が限界です。
大自然の流氷の青色を見ていると、視力が回復するのではと思えるくらい見とれてしまいます。科学的には、流氷は青い光を通しやすいので青く見える、空が青く見えるのと同じ原理とのこと。文系の私にはこう説明されても、これ以上突っ込めません。しかし人工的には絶対に作れないと思える色であることだけは間違いありません。
ほとんどの人にとって一生の思い出になると思います。大自然の営みはそれほど圧巻のオーラを発しています。人間は、地球の上ではとても小さい生き物に過ぎないと実感させられます。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
流氷は地球環境の指標
網走流氷観光砕氷船おーろら
https://www.ms-aurora.com/abashiri/
運行期間:毎年1月20日~4月3日
運行期間中休航日:原則なし
※流氷がない場合、乗船料がやや安い海上遊覧になります。
※天候により、運休になる場合があります。
※3/15以降は予約が少ない便は、運休になる場合があります。
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