麻雀戦略調査室

麻雀戦略をデータや計算で考えます。毎週土曜更新。一部のカテゴリーについては、冒頭の目次をご利用下さい。

ペンチャンvs浮き牌 その3

2005年10月29日 21時04分21秒 | 麻雀戦略
 今回の内容は麻雀戦略としては、大して役に立たないでしょう。
ただ「へぇ、そうなんだ。」という感じです。

 前回はペンチャン待ちシミュレーションプログラムをちょこっといじって、2枚待ちシミュレーションプログラムにしました。
今回はペンチャン待ちシミュレーションを何回もいじって、1枚待ちから国士13面待ちまでをシミュレートしてみました。その結果を紹介しようと思います。


1.1枚待ちから8枚待ち、三面張
1~8枚待ちのそれぞれと三面待ち(つまり11枚待ち)について
18巡ツモって何巡目までに待っている牌をツモったかを、
1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間にツモれなかった場合は、流局として記録する。
シミュレーション回数は5万回。
あがったときの点数や他家のあがりは考慮しない。

その結果をグラフにしたものが図1-1です。
参考のために浮き牌が面子になっている確率も載せました。

図1-1 各待ち数での待ち牌を引いている確率と巡目の関係

ちょっと色が見にくいと思いますが、一番上の線が三面張で、0%から出発して最後の巡目に4枚待ちと同じになるのが浮き牌です。
浮き牌以外は、巡目が少ない内は直線ですが確率が増えるほど曲線になっていきます。

図1-2は各待ち数についての詳しい数字を載せた表です。

図1-2 各待ち数での待ち牌を引いている確率と巡目の関係の詳細


・待ち牌の数とツモっている確率
 図1-2をよく見るとわかるのですが、待ち牌が2倍になっているからといって、待っている牌をツモる確率は2倍になっていません。
[例えば18巡目の4枚待ちと(47.622%)8枚待ち(73.448%)]
3~8枚待ちあたりだと
巡目の浅い内は、「待ち牌2倍だとツモっている確率2倍」と言ってもいいでしょうが
巡目が深くなると、段々「待ち牌2倍だとツモっている確率2倍」が成り立たなくなります。
また、1枚待ちや2枚待ちだと巡目の浅い内でさえ成り立っていません。
このことは別にシミュレートなんかしなくても、簡単な麻雀の確率計算をやったことがある人ならすぐにわかることです。
ただ、未だに「待ち牌2倍だとツモっている確率2倍」と思っている人がいるので触れておきました。

・なぜこのデータが役に立たないのか
 例えば両面待ち(8枚待ち)のときに、既に他家の河に2枚待ち牌が見えているからといって、
今回のデータを使ってこれからツモれる確率を6枚待ちで計算するのは正しくありません。
なぜなら、河には牌がランダムに捨てられるのではなく、人為的に牌が捨てられているからです。
字牌、端牌は多く切られ、中張牌は少なく切られるのです。
よって、正しく牌をツモっている確率を計算するには、他家の河と山に残っている牌の関係を事前に調べておかなければいけません。
他家の河について全体的に調べた結果は報告されているのですが、[1]
http://www.ix3.jp/hiii/02mahken/2-04paikouritsu.htm
現実には巡目依存性が高いと思うので、(序盤は字牌ばかり捨てられる、終盤は中張牌もそこそこ出てくるようになる)序盤、中盤、終盤での河の研究が必要です。
河の研究が途上である現在のところ、下手に河を見るより全く河を見ない方が、むしろ牌効率は良いようです。[2]
 よって現時点では多くの場合、2枚待ち、4枚待ち(ペンチャン、カンチャン、シャボなど),6枚待ち(両面と単騎の複合待ち、図1-3)
7枚待ち(変則待ち、図1-4)、8枚待ち(両面)、11枚待ち(三面張)のデータくらいしか役立たないと思います。

  待ち牌
図1-3 両面と単騎待ちの複合

  待ち牌
図1-4 変則7枚待ち


2.国士13面待ちの威力
 麻雀において最強の待ち数を誇るのは、国士13面の39枚待ちです。
余興で国士13面待ちの場合を調べてみましょう。
 
 国士13面待ち(39枚待ち)に関して同様に
18巡ツモって何巡目までに待っている牌をツモったかを、
1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間にツモれなかった場合は、流局として記録する。
シミュレーション回数は5万回。
あがったときの点数や他家のあがりは考慮しない。

その結果をグラフにしたのが図2-1です。参考のために三面張(11枚待ち)の場合も載せておきました。

図2-1 国士13面待ちをツモっている確率と巡目の関係

 国士13面が三面張を圧倒しているのがわかります。

 図2-2は詳細な数字です。

図2-2 国士13面待ちと巡目の関係の詳細

 配牌時に国士13面を聴牌していた場合、ツモ専でも流局率は0.05%です。
こんなので流局したら、河でタンピン三色ができてそうです。
まあ、実際に国士13面のダブリーがあったら一発で出るとは思いますが。

 参照
[1]ひいい 「ひいいの麻雀研究HP
[2]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年

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ペンチャンvs浮き牌 その2

2005年10月22日 23時38分00秒 | 麻雀戦略
1.序論
     ドラ
                      図1-1 トイツ3つの手牌

 
 さて、何を切りますか?
 図1-1には、7索、1筒、西(客風)の3種類のトイツがあります。
聴牌まで突き進む際、2トイツは実質4枚の受け入れが残ります。
しかし、3トイツになると6枚の受け入れで1面子、その後の4枚の受け入れで2面子となり、
これはカンチャン2つより効率が悪いです。[1]
よって、面前で手を進めるなら3つ目のトイツをほぐすことを考えたほうが良さそうです。
そう考えると、図1-1ではシュンツにならない「西」を切るのが最善な気がしてきます。
 ところが、例えば残り巡目があと2巡しかないなら、6筒を切らなければあがれません。
次巡の受け入れ枚数を考えるなら、6筒が一番多いのです。

 ここで、2つの選択肢が出てきます。
1.西切り  西2枚分の受け入れは減るけど、最終的には一番早くあがれそう。
2.6筒切り 目の前の西2枚分の受け入れは大事。
       「ペンチャンvs浮き牌 その1」で見たように、浮き牌が面子になるのは意外と遅い。

 そこで、次のようなプログラムを組んでまたシミュレートしてみましょう。
また、1からプログラムを組むのはめんどくさい?大丈夫です。
実はこれ、「ペンチャンvs浮き牌 その1」で使ったプログラムを1文字変えるだけで、できてしまうのです。


2.方法
図1-1で西切りと6筒切りのどちらが早く1面子を作れるかを考える。
鳴きや七対子は考えない。
あがり点数は考えない。
他家のあがりは考えない。

1.西切り すなわち、浮き牌残し
 「ペンチャンvs浮き牌 その1」のBの結果と同じ
2.6筒切り
 西2枚の受け入れの速さを考える。
 「ペンチャンvs浮き牌 その1」のAでは、ペンチャンの三万待ちをシミュレートした。
これは、受け入れ4枚を何巡目までにツモるかというプログラムであった。
今回は「ペンチャンvs浮き牌 その1」のAのプログラムの受け入れを2枚と変えて、シミュレートを行う。

つまり、以下のプログラムによるシミュレーションをそれぞれ5万回行った。

A'.受け入れ数2枚(西2枚待ち)
18巡ツモって何巡目までに西をツモったかを、1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間にツモれなかった場合は、流局として記録する。

B.浮き牌(「ペンチャンvs浮き牌 その1」のBと同一) 
 18巡ツモって何巡目までに6筒から面子になったかを、1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間に面子にならなかった場合は、流局として記録する。
手変わりは考慮する。
(4筒をツモったあとに3筒をツモり両面待ちになり、2筒をツモった場合なども考える。)
暗刻になる可能性は考慮しない。
また、他家のあがりは考えないものとする。


3.結果
図3-1はA'、Bそれぞれで何順目までに面子ができたのかをグラフ化したものです。

図3-1 西2枚待ちと浮き牌の巡目ごとの面子ができている確率
1巡目に上の線(黒)が西2枚待ち 1巡目に下の線(赤)が浮き牌

詳しい数値を表にしたものが、下の図3-2です。


図3-2 西2枚待ちと浮き牌の巡目ごとの面子ができている確率詳細

 7巡目までは西2枚待ちが有利ですが、8巡目で逆転します。
「7巡目まで西2枚待ち、8巡目以降は浮き牌」という結果を実戦でどう生かせばよいのかは、
今後調査していかなければいけません。
ただとりあえず確実に言えるのは、残りツモ回数があと7回以内なら
西を残して6筒を切ったほうがよいということです。

4.まとめ
7巡目以内なら2枚待ちの方が面子になりやすい。
8巡目以降なら浮き牌の方が面子になりやすい。

参照
[1]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年

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ペンチャンvs浮き牌 その1

2005年10月15日 22時05分59秒 | 麻雀戦略
「ペンチャン待ちは面子になりにくいので、浮き牌を残せ。」と言いますが
では、具体的に何巡目までならペンチャンを嫌えばよいのでしょうか?
簡単なシミュレーション・プログラムを組んでみました。



1.方法
 A.ペンチャン   B.浮き牌  
          図1-1 ペンチャン待ちと浮き牌


A、Bについて次のようなプログラムを作り、それぞれ5万回シミュレーションを行った。

A.ペンチャン
 18巡ツモって何巡目までに三万をツモったかを、1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間にツモれなかった場合は、流局として記録する。
手変わりは考慮しない。(四万をツモった後に五万をツモって両面待ちになったとかは無し。)
暗刻になる可能性は考慮しない。
また、他家のあがりは考えないものとする。

B.浮き牌
 18巡ツモって何巡目までに四筒から面子になったかを、1回のシミュレーションにつき1回記録した。
18巡の間に面子にならなかった場合は、流局として記録する。
手変わりは考慮する
(六筒をツモったあとに七筒をツモり両面待ちになり、八筒をツモった場合なども考える。)
暗刻になる可能性は考慮しない。
また、他家のあがりは考えないものとする。


2.結果
図2-1はA、Bそれぞれで何順目までに面子ができたのかをグラフ化したものです。


図2-1 ペンチャンと浮き牌の巡目ごとの面子ができている確率
上線(黒)がペンチャン 下線(赤)が浮き牌

詳しい数値を表にしたものが、下の図2-2です。


図2-2 ペンチャンと浮き牌の巡目ごとの面子ができている確率詳細

A.ペンチャン
 1巡につき約3%ずつ面子ができるている確率が上がっていく。
B.浮き牌
 ペンチャンに比べなかなか面子ができず、18巡目にようやく追いつく。

 少なくとも面前で手を進めるときは、ペンチャンは嫌わないほうがよいと思います。
今回のシミュレーションはあくまで自分のツモ山だけで面子を完成させることを考えていますが、実際には4つ目の面子を作るときはロンをすることができるという点で異なってきます。
とはいえ、
・4面子中3面子は自力で作らなければならないこと
・愚形聴牌は手変わりを待たずに即リーチする方が、ほぼ全ての場合で正しいこと[1]
を考えると、恐らくペンチャン残しが有利かと考えています。

また、鳴きが可能な場合についてはさらに考察が必要ですが、
多くの場合序盤のうちは上家は字牌ばかり捨てることから、
結局中盤までは自力で面子を作らざるをえないので、
(しかも平均して9巡目あたりには、他家からリーチが入ってしまう。)
同じ結論になる気がします。


3.まとめ
当blogでは、いかなる場合でも浮き牌よりペンチャン残しを推奨します。

課題
・ロンを考慮したときの具体的な数値比較
・鳴きを考慮したときの具体的な数値比較
 (これは、他家のリーチデータをまとめれば概算できるかも。まだ、まとめてませんが…。)

 参照
[1]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年


 追記(2005年 11月6日)
上記の内容について一つ見落としがあり、それについて考察し直しました。
「ペンチャンvs浮き牌 その4」

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当blogでの麻雀を打つ目的

2005年10月08日 21時57分51秒 | 麻雀戦略
 あなたにとって麻雀が強いとは、どういうことですか?
 
 ルールによって、人によって答えは違います。
「平均点棒収支が大きく黒字であること。」
「ラスが多少増えようが、とにかくトップをとりまくること。」
「雀荘に通って場代を払っても、浮いていること。」
「東風荘でレートが高いこと。」
「何かの大会で優勝すること。」 etc

何を目的とするかで、戦略というのはちょっとずつ変わってきます。
そこで戦略をお話する前に、このblogでの強さを定義しておきたいと思います。

当blogでの強さの定義は
「不特定多数と打ったときの1000戦レベルでの平均順位が2.5位よりはるかに小さいこと」
とします。
このblogでのお話は、すべて上記を念頭において進めていきます。


・平均順位とは?
 平均順位というのは、
(1位回数×1)+(2位回数×2)+(3位回数×3)+(4位回数×4)を総試合数で割ったものです。
例えば、100戦中 1位30回 2位28回 3位22回 4位20回 なら
(30×1)+(28×2)+(22×3)+(20×4)=232  232÷100=2.32 なので
平均順位2.32位となります。
1位から4位までをすべて同じ回数とると平均順位は2.50位なので、
平均順位2.32位は結構良い成績といえます。(対戦相手の質にもよりますが)

・何で平均順位なの?
 ルールによっては平均順位より大切なものがある場合があります。
 例えば、一般的なフリー雀荘では平均順位よりトップ率やチップが重要になります。しかし、トップ率やチップ獲得を向上させようとすると、結局平均順位も上げなければいけないようです。
 麻雀での勝ち負けの取り決めには色々なものがあります。
しかし、どんな取り決めにせよ平均順位と連動している場合が多く、
平均順位を良くするための打ち方を知っていれば、他の取り決めにも応用できると考えられます。

・不特定多数
 ネットワーク麻雀やフリー雀荘のように対戦相手の打ち筋がわからない所で、いかに強くなるかを主にここでは考えます。
仲間内のように打ち筋がわかっている場合は個人の癖を利用できるので、不特定多数の場合の戦略とは若干異なってくるでしょう。

・1000戦レベル
 どんなに強い人でも少ない試合数では、ルールを覚えたての初心者にも負け越し得るのが麻雀です。
平均順位もわずか数試合では、ツキ不ヅキで「その人の真の平均順位」から大きくずれる可能性が十分あります。
平均順位は試合数を重ねるほど「真の平均順位」からのずれが小さくなり、
1000東風だと最大でも±0.58位以内に95%の確率でおさまります。[1]
(真の平均順位からのずれは、実力によって異なります。
一般的に平均順位が2.50位から遠いほど、ずれは小さくなります。[1])

 参照
[1]とつげき東北 システマティック麻雀工学HP

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まえがき

2005年10月05日 00時13分41秒 | はじめに
 端から宣言などという堅苦しい文章を書いてしまいました。
まず、blog開設の動機からお話したいと思います。
 
 僕はここのところずっとデータを取りながら、麻雀を打ってきました。
そして、今ではデータを取り始めてから1500半荘ほどになりました。
サンプル量としては十分と言っていいでしょう。
ただ、取ったデータ結果を見て、「へー、なるほど。」と一人でにやついていても仕方ないので、Web上で公開することにしました。
また、それに合わせて簡単な確率計算の結果や麻雀に関して自分が思うことなども
書いておくことにしました。

1.当blogに記すデータや計算結果などによって,
 読んだ方の実力向上のお手伝いができたり
2.当blogに記すデータや計算結果などに対するご意見やご質問を頂くことで
 さらに有効な戦略を造るための足がかりになったり
できればと願っております。

 
 すべてのデータの処理がまだ終わっていない(てか、いっぱい残ってる)のであまり更新のペースは早くできません。あと、あんまり早いとネタ切れしちゃう。(取ったデータは有限だから)
このような事情がありますが、最遅で週1ペースでの更新を、考えています。

設立宣言

2005年10月03日 02時12分09秒 | はじめに
古今東西、麻雀戦術に関して白熱した議論が行われてきた。
しかし、議論の多くは各人が持論をくりかえすだけで、決着をみることはほとんどなかった。
なぜならば、各人の主張はきわめて定性的で、優劣の比較が困難であったからである。
このことは、麻雀戦術の発展を大きく妨げてきただけでなく、数多くの誤った認識を麻雀界にもたらしてきた。

私は、麻雀戦術論は優劣比較できるよう定量的に行わらなければならないと、痛感した。
そこで当調査室では、統計データや計算を用いて定量的に戦略を考察していく。
ここで用いられるデータや計算は、大して複雑ではないかもしれない。
しかし、簡単な計算やデータ取得さえ今まであまり行われてこなかったのではないか?
私はこのような現状を問う意味で、麻雀戦略調査室の設立をここに高らかに宣言する。