麻雀戦略調査室

麻雀戦略をデータや計算で考えます。毎週土曜更新。一部のカテゴリーについては、冒頭の目次をご利用下さい。

2.1 方法

2006年01月28日 17時56分47秒 | 麻雀戦略
2.1.1 前提
2.1.1.1 自分と他家がテンパイかノーテンか
押し引きを論じる際、
大雑把に以下の状況に分けて考える必要があります。

自分 テンパイ  他家 テンパイ
自分 テンパイ  他家 ノーテン
自分 ノーテン  他家 テンパイ
自分 ノーテン  他家 ノーテン

以上のうち、自分と他家がテンパイしている場合以外は
赤なしと赤ありで大差がありません。
赤なしについての押し引きは既に公表されているので[1]
このブログでは、赤なしとは判断基準が異なってくるであろう
赤ありでの「自分と他家がテンパイしている場合」についてのみ扱います。

2.1.1.2 押し引きの具体的な内容
他家からはっきりとした攻撃を受けたときの対応には、
全ツッパとベタオリ、回し打ちの3種類があります。
しかし、他家の攻撃を回避しかつ自分があがる確率というのはきわめて低く
回し打ちは有効とはいえないと現在では考えられています。
よって、全ツッパとベタオリの2通りを考え、
回し打ちは考慮しません。

但し、ベタオリは100%成功するものと仮定します。


2.1.2 方法
1.他家のあがり点数を以下のあがり方に分けて記録する。
 (バイアスを避けるため、自分のあがり点数は含めていない。)

 先制リーチ
 追いかけリーチ
 面前ダマ
 喰いタンヤオ
 ドラポン
 染め手
 対々和
 以上に挙げたもの以外の鳴き手

 ・ドラの種類ごとに場合分けした。

 ドラが1,9のとき
 ドラが2,8のとき
 ドラが3,7のとき
 ドラが4,6のとき
 ドラが5のとき
 ドラが三元牌のとき
 ドラが場風牌のとき
 ドラが客風牌のとき

 ・親子の区別はなし
 ・局による区別はなし
 ・点数状況による区別はなし
 ・対戦相手による区別はなし
 ・データを取った場所は、
  麻雀格闘倶楽部3,4の半荘A1リーグと
  黄龍闘技場AAA半荘である。
  対戦相手の質は保証されていると考えられる。
  詳しくはこちら。
  →戦績公開・目標設定
 ・自分がゲームをしながら、対戦相手があがる度に
  筆記であがり点数を記録した。
 ・データ取得対象とした局数は、データ表示の際に付記する。

2.記録した他家のあがり点数を集計し、
 各あがり方ごとに平均点数を求める。

3.他家のあがり点数の平均と
 既に別の人のシミュレーションによって解明されている
 巡目ごとのあがり率、振込み率、ツモられ率、流局率を用いて、
 自分の手牌の点数、待ちの良さの違いごとに
 全ツッパしたときの期待値とベタオリしたときの期待値を計算し、
 押すべきか引くべきかを判断する。

 参照
[1]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年

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1.3 統計データの扱い

2006年01月21日 18時42分14秒 | 麻雀戦略
赤ドラ麻雀での押し引きを考察する際
統計データを用います。
ここで、統計データの取り扱いについて
補足しておきます。


1.3.1 統計データに必要なこと
麻雀戦術において統計データを用いる場合、
より多くの局についてデータを取り
その平均値を用いるという方法が一般的です。
しかし、本来平均値を用いる前提として
平均値からどの程度ゆらぐかという情報が必要です。

統計データに必要なもの
・平均値
・ゆらぎ(分散)

ゆらぎが大きい場合、より細かい条件で統計データを取らないと
人間が感覚で打牌するほうがマシになってしまう可能性があります。
(「1.3.2 具体例」を参考のこと)

ただ実際には、平均値を取るのは簡単でも
どのくらいゆらぐのかを定量化するのは
多くの場合難しいことです。
今回のデータは平均値は取りましたが、
どの位ゆらぐかは不明です。
その点を考慮したうえで、読んで下さい。
ただ、自分が何枚ドラを持っていれば
平均的な場であるかについては、後に論じようと思います。


1.3.2 具体例
統計的には「平和のみは手替わりを待つダマよりリーチ」という結果が
公表されています。[1]
しかし、例えば待ち牌が河に全て出た状況でも
「平和のみはリーチ」が正しいかというと、これは違います。
つまり、「統計的には『平和のみはリーチ』が正しい」という結論は
100回平和のみを聴牌したら、
0回リーチするよりは100回リーチする方が良いということで
100回リーチするのと90回リーチする方のどちらがよいかについては
わからないということです。



1.3.3 統計データへの反論に対する反論
 反論1
麻雀には時代ごとに打ち手のトレンドがあるので
統計データは時間が経つと使えなくなる。

 反論1への反論
時間が経ったらまたそのときにデータを取ればよい。


 反論2
麻雀は打ち手の心理や癖にも打牌は影響される。
統計データはこのような麻雀というゲームの性質を
表すことができない。

 反論2に対する反論
全くの誤り。
統計データは一般的な打ち手の心理や癖といったトレンドを
含めた情報である。
なお、当ブログが想定している不特定多数との対戦でなく、
特定の相手との対戦の場合には
統計データには特定の相手のトレンドが反映されないため
統計データが使えなくなる可能性はある。


 参照
[1]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年

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1.2 期待値の導入

2006年01月14日 18時14分18秒 | 麻雀戦略
1.2.1 期待順位値の導入

麻雀は選択の連続です。
「どの牌を切るか?」
「鳴くか、鳴かないか?」
「リーチか、ダマか?」 etc
そして、より優れていると思った選択肢を
我々は選んでいくわけです。
では、「より優れている選択肢」とはどういうことでしょうか?
それは、
「ゲーム終了時に良い順位であるために最良な選択肢」
と言い換えられます。
つまり、麻雀における最良の選択肢を判断するには
ある選択肢を選んだと仮定した場合に
最終的な順位がどれくらいになるかを、
全ての選択肢について正しく把握しなければいけません。

この「最終的な順位がどれくらいになるか」を表す値を
期待順位値と呼ぶことにします。
期待順位値は以下のように定義できます。

 期待順位値
=(1×1位を取る確率)+(2×2位を取る確率)+(3×3位を取る確率)+(4×4位を取る確率)
 式(1.2.1.)

例えば、ゲーム開始直後で配牌を見る直前は
1位をとる確率も2位を取る確率も3位を取る確率も4位を取る確率も
全て等しく25%なので(厳密には違いますが、ここでは考慮せず。)
期待順位値は

1×0.25+2×0.25+3×0.25+4×0.25=2.5 式(1.2.2)
 よって、期待順位値 2.50位

となります。

ここで、東一局で8000点をあがったとすると、
1位や2位を取る確率が上がり、3位や4位を取る確率は下がるので
期待順位値は2.50位より良くなります。
反対に東一局で8000点を振り込むと、
1位や2位を取る確率が下がり、3位や4位を取る確率は上がるので
期待順位値は2.50位より悪くなります


1.2.2 期待順位値と他家との点数差

では、点棒移動が生じると期待順位値は
具体的にどのように変化するのでしょうか?
図1.2.1は、自分とある一人の他家との点差と
期待順位値の変化量の関係を表したグラフです。[1]


図1.2.1 ある一人の他家との点差と期待順位値の変化量の関係[1]
(他の局のグラフを知りたければ、
 引用元の「科学する麻雀」(講談社)をご覧下さい。)

例えば、東一局一本場開始時に
ある一人の他家に16000点差をつけていると、
期待順位値は2.50位から0.25位ほど良くなります。
同様に、他の二人の他家にも16000点差をつけているとしましょう。
(これは開局で4000オールをあがった場合に相当)
そうすると、他の他家に対してもそれぞれ0.25位ほど有利になるので
他家三人合計で、
 0.25×3=0.75位分の期待順位が良くなります。


1.2.3 平場の定義と期待値

さて、ここでもう一度図1.2.1をご覧下さい。
東一局なら±20000点くらいまで
南二局なら±10000点くらいまでは、
他家一人との点差と期待順位値の変化量は
比例しているといえます。
つまり、局にもよりますが
点差が競っているときは、
他家との点差がそのまま期待順位値の変化を示す

ということができます。
これが点差が開いてしまっている状況、
例えば、南二局で18000点差の場合
大きくあがっても期待順位値はあまり向上しないことが
グラフから読み取れます。

今回、押し引きを論じるにあたっては
点差が競っていて、点差がそのまま期待順位値の
変化量を表す場合について考えていきます。
また、他家三人の点差と期待順位値の変化量が比例している状況を
平場と呼ぶことにします。 

さて、平場においては他家三人との点差の合計が
そのまま2.50位からの期待順位値の変化になるのですが、
麻雀は四人の点数の合計が常に一定であることから
他家三人との点差の合計が決定されると
一意的に自分の持ち点が決まります。
簡単なことですが、一応証明しておきます。


原点をX点とする。つまり、4人の点数の合計は4X点。
ある任意の局の他家三人にリードしている分の点数差を
それぞれa点、b点、c点とおき
自分の持ち点をY点とおくと、
4人の合計点数は 4Y-(a+b+c)点。
今、4X=4Y-(a+b+c)より
  Y=X+(1/4)(a+b+c)
ゆえに、三人との点数差の合計a+b+cが決定されると
自分の持ち点Y点が決まる。              //

よって、平場においては
「自分の持ち点の変化が
そのまま期待順位値の変化につながる」

といえます。

ここから、平場での押すか引くかの判断はそれぞれの場合で
どの程度の持ち点の変化が見込まれるか
すなわち、それぞれの期待値を計算し
期待値が高い方を選択すればよいわけです。



 参照
[1]とつげき東北 「科学する麻雀」 講談社 2004年

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1.1 麻雀での押し引き研究の歴史

2006年01月07日 17時16分36秒 | 麻雀戦略
麻雀において、他家の攻撃に対して押すか引くかの判断は
成績に大きな影響を与えると言われています。
ところが、押し引きの判断ははっきりとした指標がないために
個人によって判断基準がバラバラで、
かつ、よりよい押し引きとは何かがわかりづらいものです。
そこで、少しでもよりよい押し引きの追究のために
「流れ」や「対戦相手の心理を読む」といったアプローチが
取られていましたが、これらはきわめて定性的で
雀士にとって、何の役にも立たない代物でした。

このような状況に一石を投じたのが、とつげき東北さんでした。
2004年に出版した「科学する麻雀」(講談社)の中で
赤無し麻雀における押し引きについて論じています。
データやシミュレーションを用いて押し引きを定量的に論じたことは
麻雀界の歴史において大きな一歩となりました。

しかし、現在の麻雀は赤入りルールが主流となっており
赤無しに比べ他家の攻撃力が上がることから
赤無しでの場合の押し引きの判断と異なると考えられ、
赤入りでの押し引きの判断こそ知りたいという方が多いと思います。
僕が知る限り、現在赤入りでの押し引きの研究結果を公開した者はおらず、
押し引き判断を今までのように定性的な勘に頼っているのが現状です。

そこで、僕は赤入り麻雀における押し引き判断を定量的に論じるために
必要なデータを一部取ったので、
これらを元に赤入り麻雀での押し引きを考察してみました。

正直、まだまだ不備な点もあり、これからさらに調査は必要ですが
自分がわかったことを書き込んでいこうと思います。

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