
SPTメソッド5 主体性確立のプロセスの自己理解でも説明したようにSPTメソッドの自己理解にはSPの集合体としてのパーソナリティ特性、パーソナリティ類型(タイプ)そして行いや言動に現れる行動特性を知ることと個々のSPを知る2つがあります。ここでは前者のSPの集合体であるパーソナリティ特性を知ることについての使用方法について説明します。
1、SPトランプで自己を理解する(自分のパーソナリティ特性並びに行動特性の理解)
1)箱の中からSPトランプをとり出して、自分に該当するSP(自分の持
ち札)と該当しないSP(非持ち札)の二つに分ける。
自分に該当するSP(持ち札)のマーク毎の枚数を記録しておく、
(例 ハー ト5枚、ダイヤ8枚、クラブ6枚、スペード2枚 合計21枚)
非持ち札についての意味についてはあらためて説明します。
この自分の中にあるSPのことを「パーソナルSP」と称します。
2)次に上記の持ち札のSPの中から仕事等の場面で出しているSPを10枚選ぶ.
.(使用目的によっては勉学、学校、就職活動、対人関係、スポーツ等がある)
*限られた時間で実施する場合は2)からスタートしてもよい。
52枚のカードで自分自身のパーソナリティを表現できない場合はジョーカーの白紙にニックネームやイラストを記述する
この10枚のSPを「ワーキングSP」と称します。
3)選んだら机の上に配置し説明する。
配置の仕方: 距離、方向、絵の向きなど自分にピッタリくるように表向けて配置
2、ペア、グループワークの場合 他者からのフィードバックを行う
研修グループの場合は時間の関係上最大6名が望ましい
1)グループの中で順番に配置したSPトランプの内容と配置の仕方について発表を行なう。
2)他のメンバーは発表者が選んでいないSPトランプ(発表者の残りのカード)から1枚選びその理由を説明する。ジョーカーを選んでもよい。その場合は名
前(ニックネーム)をつける。
3)発表者はフィードバックされたSPトランプを10枚につけ加え、配置しなおす。
4)フィードバックされたカードが受け入れにくい、認めたくない場合は裏返しておいてもよい。自分の中で受容できるようになれば表向ける。
3.グループワークのまとめ
「SPトランプメソッド その4 SPトランプを使った主体(主我)と客体(客我)の関係」参照
1)SPは自分の分身(客体)である。よって「I am SP」ではなく「I have SP」である。私は多くの分身(SP)を持っている。
I have SP.
私はいじけ屋さんではなく、私の心の中にいじけ屋さんがある。
SPは自分を決めつけるものでも、人を決めつけるものでもない。
SPTメソッドはSPに振り回されない主体である「I」を確立していくことである。
2)他者からのフィードバックも加えたものを4象限に再配置する。
赤色、黒色どちらのカードが多かったか、左右どちらが多かったか、どのマークが多くて何のマークが少ないかで自分のSP特性並びに行動特性を知る。
注)下図は本人が選んだ10枚のみの4象限配置になっています。
解説
1、各軸の特徴
SPトランプの各マークの軸はデービット・メリルとロジャーリードのソーシャルスタイル並びにユングの類型論である内向、外向並びに感覚、思考の考え方が背景になっています。主だった軸の特徴を説明すると下記のようになります。どちらの傾向が強いかを知ってください。
【受動的・内向】♦♣(左側)
1)関心や興味が内界の主観的要因(個人の気持ち、考え方、知的関心事)に重きをおく
2)反応に時間がかかる
3)新しい場面は当惑する(自分にとって気の合った安心できる環境の中で能力が発揮できる)
4)フラストレーション(葛藤)時 最初は心の中で逃げる、最後は心の中で責める
【能動的・外向】♥♠(右側)
1)関心や興味が外界の事物や人に向けられる(相手からの期待や外界の状況)
2)反応が早い(リアクションが早い)
3)新しい場面でも適当に行動ができる(能力が発揮できる)
4)フラストレーション(葛藤)時、最初は心の中で責める、最後は心の中で逃げる
【感覚的人間志向】♦♥(上側)
1)関心や興味が人や気持ちに重きをおく
2)好き・嫌い、快・不快での判断や表現できる感情機能が発達している
3)コミュニケーションは感覚的(擬音・擬態語が多い)
4)時間の捉え方は感覚的(午前・午後・夜?)
5)経験重視で学ぶ
6)フラストレーション(葛藤)時 最初は感情的になり、最後は論理的になる
【論理的・課題志向】♣♠(下側)
1)関心や興味が事物や課題に向けられる
2)知識や経験を概念化し、判断、推理、把握する思考機能が発達している
3)コミュニケーションは論理的(事実、データベース)
4)時間の捉え方は正確
5)論理重視で学ぶ
6)フラストレーション(葛藤)時、最初は論理的(理屈ぽく)になり、最後は感情的になる
2、各象限の根底にある基本的欲求
SPの背景には欲求があります。そして各マークのSP群の背景には共通した基本的欲求があります。これはソーシャルスタイルの研究者であるドナルド・シエパードの考え方とマズローの欲求の考え方(ただし生理的欲求と自己実現欲求は含まず)が背景になっています。マズローは欲求の「段階説」を唱えましたがSPトランプメソッドは欲求の「強弱説」の考え方に立っています。誰でも次の4つの欲求を持っています。自分の中でどの欲求が強いかでSPや行動特性が違ってきます。各マークの基本的欲求を説明すると下記のようになります。
【賞賛・承認欲求】♥
自分が社会や集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。他者からの尊敬、地位への渇望、名声、注目されたいのが基本的欲求。新しいことや刺激のあることを好む。
【受容・所属欲求】♦
自分が社会や集団に必要とされ、社会的・集団的役割を果たしたい欲求。情緒的な人間関係、他者に受け入れられたい、どこかに所属していたい基本的欲求。自分の気持ちをわかって欲しい。好きな人と一緒にいたい。
【安全・正確欲求】 ♣
経済的安定性、健康状態の維持、事故防止(危険回避)、保障といった経済的、身体的、心理的欲求。安全、安心、正確の基本的欲求。自分の考え方や見解を理解して欲しい。人に邪魔されず興味のあることしていたい。
【達成・決断欲求】♠
仕事の遂行や達成、最後までやりとげたい欲求。目標を達成したい、自分で物事を決めたいという基本的欲求。何か目標に向かってまい進していたい。
3、各象限の特徴
各象限のSP特性や行動特性をまとめると下図のようになります。
表等の見方
1)一番マークの合計数が多かった列を見る。該当しない項目の場合は何のマークの説明が該当するかを見る。(その項目は他のSP特性が出ている可能性がある)
2)各マーク8以上の数字が高いカードが多い場合はそのマークの長所、6以下の数字が低い場合はそのマークの短所が該当する。
3)特定マークの合計数がセロまたは一枚の場合、そのマークの各項目はあまり該当しない傾向にある。
SPトランプ 絵ごとのイメージ ©YAO教育コンサルタント 2016
項 目 |
ハート♥ |
ダイヤ♦ |
クラブ ♣ |
スペード♠ |
長 所 (8以上) |
・社交的で明朗 ・積極的で前向き ・チャレンジ精神に富む |
・温和で友好的 ・相手に対する配慮有り ・優しい平和主義 |
・論理的で計画的 ・几帳面で正確 ・努力家 |
・責任感が強い ・決断力、達成力がある ・意志が強く実行力有り |
短 所 (6以下) |
・いいかげん(アバウト) ・時間にルーズ ・計画性が無い ・飽きやすい |
・人に合わせすぎる ・自分の意見を言わなさすぎる ・自分で物事を決めない ・リーダーシップがとれない |
・神経質 ・細かい ・小心 ・非社交的 |
・温かさに欠ける ・仕事にのめり込む ・独断的 ・高圧的 |
好きな 言葉 |
・夢 ・希望 ・可能性 |
・優しさ ・和 ・誠実 |
・安全 ・正確 ・完璧 |
・確実 ・信念 ・決断 |
秘めた 欲望 |
人々の賞賛や承認が欲しい 夢を実現したい
【賞賛・承認】 |
総ての人から好かれたい、愛されたい、 良く見られたい
【受容・所属】 |
間違いを犯したくない 一人誰にも邪魔されず、好きな事をしていたい 【安全・正確】 |
あらゆることを犠牲にしても、目的を達成したい モノゴトを決めたい 【達成・決断】 |
モノゴトの認識 傾向 |
モノゴトをイメージでとらえてしまう 少しの情報や経験でわかった気になる
|
モノゴトを感覚的にとらえる 異なった意見をいわれると否定されたように思ってしまう |
完璧でなければダメと考える モノゴトをマイナス思考でとらえてしまう |
モノゴトを白か黒で考えてしまう 自分で考えた基準が当然であると人に押しつけてしまう |
コミュニケーション |
・ユーモアをまじえてよくしゃべる ・話の中心になる |
・聞き役になることが多い ・プライベートな会話が好き |
・受け身・口数が少ない ・興味のあることだけ話したい |
・無駄なおしゃべりを好まず聞くのも苦手 ・目的があれば積極的にしゃべる |
人間関係 |
・社交的で多くの友人をもつが浅く広くなりがちな面もある ・楽しい仲間作りが得意でリーダーシップもある |
・周囲の人とうまくやっていきたい気持ちが強い ・好かれたいと思う気持ちが強いので謝る言葉「すみません」「ごめん」を連発してしまう |
・興味や関心の似ている人と丁寧な付き合いをする ・数少ないが無二の親友を作る ・基本的には人と付き合うより一人で何かするのが好き |
・べたべたした人間関係や無駄な付き合いを好まない ・友情や愛情よりも仕事や目的を優先しがち ・必要ならリーダーシップを発揮する |
学習方法 |
・まず自分で体験することを好む ・少しの経験で全体がわかったような気になる ・感覚的に学ぶ ・あまり細かく指導されることを好まない |
・誰かと一緒に学ぶことを好む ・勉強より体験する方があっている ・懇切丁寧に指導されることを好む |
・学習課題はリスクの少ない目標 ・論理的体系的に学ぶ ・納得するまで時間がかかる ・専門家から学ぶことを好む |
・学ぶ目的や目標を明確にする ・論理的体系的に学ぶ ・自発的に学ぶ ・あまり細かく指導されることを好まない
|
不安や恐れの原因 |
・刺激や変化が少ないとき ・自由裁量が少ないとき ・人の注目が自分以外にいっているとき ・自分のイメージ通りに事が進まないとき ・他者や社会に認めてもらえないとき ・笑いがとれなかったとき ・細かい手間のかかる仕事 をしなければならないとき |
・対人関係の葛藤 ・意見の違いが生じたとき ・プレッシャーがかかっているとき ・他者やグループから仲間はずれにされたとき ・人から不誠実にされたとき ・他者からよそよそしくされたとき |
・プライドが傷ついたとき ・計画通りことが進まないとき ・非合理的な行動を押しつけられたとき ・人にバカにされたとき ・変化が生じたとき |
・負けたとき ・結論が出せないとき ・目標が見出せないとき ・他者との関係に必要以上に深入りしてしまったとき ・人に利用されたとき ・仕事が期限までに間に合いそうもないとき ・自信がぐらついたとき ・自分の信念が脅かされたとき |
ストレス (不安や恐れなど)状態になると |
・攻撃的 感情で責める
ムキになる 皮肉をいう 投げやりになる
|
・盲従的 感情(気持)で逃げる
やたらに謝る 同調的・従順になる 優柔不断になる |
・回避的 論理で逃げる
言い訳する 引きこもる 頑固になる |
・独裁的 論理で責める
相手を責める 命令的になる 批判的になる
|
* 各象限の特徴は書籍「人間力を高めるセルフ・エンパワーメント」「ビジネスパーソン52の人格」もご合わせてご参照ください。
参考データ
A、 1の1)で二分したSPで自分が持っているSP(持ち札)をパーソナルSP特性と称し2の2)で10枚+他者からのフィードバックを受けたSPをワーキングSP特性と称している。
363名(メーカー事務、技術、技能、IT、大学職員他)のデータを見ると下記のようになっている。
パーソナルSP特性(持ち札)とワーキングSP特性
エンパワーメントカウンセリング研究所 2016.1月調査
ハート | ダイヤ | クラブ | スペード | ||
パーソナルSP特性 | 87 | 172 | 92 | 51 | |
ワーキングSP特性 | 70 | 105 | 157 | 86 |
デ-タの特徴(傾向)
本来自分の持ち札であるパーソナルSP特性はダイヤが多く、ワーキングSP特性はクラブを多く選んでいる。これは日本人論でもよく言われているように日本人のパーソナリティはやさしく、恥ずかしがり屋で集団思考である。このことはパーソナルSP特性がダイヤが多いことと一致する。またワーキングSP特性はクラブが多い。これは日本人の仕事の仕方は時間やルールを守りまじめに働く。そして仕事内容も質の高さを求め品質重視であることと一致している。
B、 1の1)を省略し1の2)の自分にピッタリくるSPを10枚選んでもらうと下記のようになっています。このデータは主に企業研修1064名のデータ。(詳細はSPトランプ公式サイト参照 http://yao-ec.co.jp/ecc/10/とTOPページ
自己選択ベスト10
エンパワーメントカウンセリング研究所 2015.3月調査
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
6位 |
7位 |
8位 |
9位 |
10位 |
♥面倒くさがり屋 |
♣心配屋さん |
♥アバウトさん |
♥気分屋 |
♣まじめさん |
♣慎重さん |
♥飽き性さん |
♦キョロキョロさん |
♣がまんさん |
♠勝気さん |
629人 |
469人 |
445人 |
329人 |
314人 |
312人 |
307人 |
289人 |
285人 |
277人 |
他者から見たイメージ(印象)ベスト10
研修の中で同じグループの他者から一人一枚フィードバックを受けたSPの集計
エンパワーメントカウンセリング研究所 2015.3月調査
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
6位 |
7位 |
8位 |
9位 |
10位 |
♦誠実さん |
♠堂々さん |
♠ガンバリ屋 |
♥おおらかさん |
♦思いやりさん |
♠信念さん |
♣まじめさん |
♣冷静さん |
♣几帳面さん |
♥ほがらかさん |
170人 |
169人 |
161人 |
158人 |
156人 |
154人 |
148人 |
143人 |
132人 |
124人 |
デ-タの特徴(傾向)
社会人が自己選択した10枚のカードはマーク別に分布するとハート(♥3面倒くさがり、♥5アバウトさん、♥1気分屋、♥2飽き性さん)、クラブ(♣5心配屋、♣12まじめさん、♣9慎重さん、♣7がまんさん)に4枚ずつ集中していた。数字を見るとハートは数字が低く1~5、クラブは5~12と比較的高くなっている。これはクラブの社会通念上強みといわれるSPとハートの社会通念上弱みといわれるSPを内面で自覚している人が多いといえる。ダイヤとスペードは各1枚であったが周りの様子をうかがう♦5キョロキョロさんと人には負けたくない♠9負けず嫌いを内面で自覚しているのが特徴と言える。
他者からのフィードバックベスト10をマーク別に分布するとクラブ(♣12まじめさん、♣10冷静さん、♣11几帳面さん)とスペード(♠8堂々さん、♠10ガンバリ屋、♠11信念さん)が3枚ずつであった。次いでダイヤ(♦12誠実さん♦10思いやりさん)とハート(♥8おおらかさん、♥9ほがらかさん)が2枚ずつであった。数字は各マークとも社会通念上強みとされる数字の高いSPであった。自己選択ならびに他者からのフィードバックのベスト10に共通してあがっていたのが♣12のまじめさんであった。
考察
自己選択、他者からのフィードバックの特徴
自己選択の基準は自分の「ありたい姿」「あるべき姿」に対し通常内面で経験しているSPを選択する傾向にある。よってマイナスのイメージが強い、社会通念上弱みとされる数字の低いものを数多く選ぶ傾向にある。(平均6.77、ベスト10の平均は5、8) 他者の前で社会通念上強みである、数字の高いものを選ぶのは遠慮したり、自らを過小評価するという文化風土も影響していると考えられる。 *各マークの数字の高いものは社会通念上強み、数字の低いものは弱みとなっている Aは1でKの13が一番高い。
しかし研修時、他者から見た印象は逆に社会通念上強みとされる数字の高いものを数多く選ぶ傾向にある。(ベスト10の平均は10、1) 研修場面で社会通念上弱みとされる数字の低いカードを選び直接フィードバックするのは礼を失するという文化風土も影響しているとも考えられる。