虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

インスタントラブ「子供ができ、生まれるということを真剣に考えていますか」

2017-04-20 17:31:17 | 小説
 「ごめん、ここまで順調に来ていたのに、今日検査に行ったら、心臓音が聞こえない・・・」
 「赤ちゃんは死んでいるって」

 夕暮れの薄暗い部屋の中で彼女はそう告げた。窓を見ながら泣いていた。初めて彼女がこわれていくような泣き方を見せた。感情の赴くままに・・・・・。

 夕暮れの部屋で彼は彼女の傍でずっと抱きしめてあげていた。

 「わたし、十代の頃、薬物にも手を出した時期があって。もちろん、すぐにはやめたよ。けど、体に悪いこと、自分の体を傷つけること、たくさんしてきたから・・・。その影響もあったかもしれない。ごめん。せっかくの命育てられなくて」

 「大丈夫、まだ大丈夫だよ。仮にだよ、子どもか無理でもそれはそれて゛しょうがないこと。全部を含めて好きになったんだから」

 きれいな夜だった。夕暮れの日差しが部屋の中に入り、そこから夜が始まるというシチュエーションは、詩人にもなったかのようだった。二人は、また、心の絆が強くなった。相手のことを愛おしいと思うようになった。


 それから二年後の三月、彼女は陣痛が始まり、病院に入る。長い長いお産だった。そして、帝王切開で無事に女の子を出産した。

 あれから20年、子供は一人だけだったが、その娘も大学生になった。娘も教師を目指して大学で勉強をしている。

 彼女は今思っている。薬物と手を切って本当によかったと。

 彼女の周りには、薬物の後遺症に苦しんでいる友達がたくさんいる。子供を産めない体になってしまった子もたくさんいる・・・・・・。



 母になるという覚悟がなければ、体を許してはいけない。
 この女性を幸せにすると思わなければそういった行為はしてはいけない。

 いま二人はそんなことを話して、娘に伝えている。


2 コメント

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はじめまして (柚木結羽)
2017-04-20 21:48:45
昭和42年生まれの男さま

はじめまして、柚木結羽と申します。

読者登録ありがとうございました。

「インスタントラブ」読ませていただきました。

育った環境や境遇が違っても、引かれあう。
人を好きになるのは理屈じゃない、心だと思います。
でも、心からこの人と思える人に出会うのはむつかしいのかも知れません。

そんな人に出会えたら幸せでしょうね。

これからもよろしくお願いいたします。
ありがとう (たにむらこうせつ)
2017-04-21 14:00:38
読者登録ありがとうございます<(_ _)>
まだまだ未熟な詩や短歌ですが、
これからもよろしくお願いします!

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