先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
https://www.youtube.com/watch?v=0us2dlzJ5jw

「大正震災志」に見る東京市の陸軍と流言蜚語 読書メモ(その四)

2023年08月16日 07時00分00秒 | 1923年関東大震災・朝鮮人虐殺・亀戸事件など

上・震災後陸軍に強制収容される朝鮮人の集団

「大正震災志」に見る東京市の陸軍と流言蜚語 読書メモ(その四)
参照・「大正震災志」内務省 社会局編 大正15年2月28日発行

警備に関する陸軍の活動  
「九月一日災害おこるや、東京衛戌司令官代理石光第一師団長は直ちに近衛及第一師団に警備区域を指定して全都の警備に当たらしめ、・・東京衛戌司令官の指揮下に入らしめた。夜に入り火災の蔓延愈々(いよいよ)甚だしく、帝都今や火の海と化し市内の混乱其極に達し、加ふるに通信交通杜絶して四囲の状況は混とんたり、陸軍当局は事態誠に重大にして万一民心動揺して不逞団の乗ずる所ならんか、帝都の治安為に破壊さるべきを慮り、・・・各工兵大隊に東京に出動を令し、・・・活動を開始せしめたり。」388・389ページ

「二日午後以来東京付近に於いては、鮮人暴挙の報所在に起り、人心極度に不安動揺に陥り、就中東京西南部及船橋方面に在りては鮮人の大挙襲来を伝えて、其混乱名状すべからず、而も猛火は尚炎々として全市を烏有に帰せずんば止まざらんとし、叫喚天に響き、殺気血に漲(みなぎ)り、悽愴惨絶裡に三日拂皢を迎ふ。」389ページ

「加ふるに鮮人暴動の風説は根岸監獄より開放せられたる千余の囚人出現と相俟って極度に民衆を激昂せしめ、而も其間社会主義者一派の横暴を擅(ほしいまま)にするものあり。」391ページ

「(自警団の)竹槍抜刀所在に閃(ひらめ)き、掠奪各所に行われ、殆ど無政府状態なり。」391ページ

群馬県藤岡事件についてはこれだけ
「鮮人問題の擾乱は杤木・群馬両県下にまで波及し、とりわけ群馬県下に於いては鮮人の取扱ひに関し警察と人民との間に争乱起り事態容易ならざるものあり。」391ページ

大杉栄一家虐殺事件(甘粕事件)についてもこれ一行のみ
「唯、陸軍部内に於て、所謂甘粕事件なるものを惹起したことは、洵(まこと)に遺憾至極であった。」大正震災志下巻193ページ

*以下感想 
大杉栄一家虐殺事件

「大正震災志上巻・下巻」全編通して、軍隊憲兵が行った大杉栄一家虐殺犯罪(甘粕事件)については、下巻で陸軍の活躍を4ページにわたって褒めたたえた最後に、上のように、わずか一行で「遺憾至極であった」とふれているだけである。それどころか震災から3年も起っているのに「しかもその間、社会主義者一派の横暴を擅(ほしいまま)にするものあり。」といまだ平然と流言蜚語の嘘を記述しているのは、大杉栄一家虐殺犯罪(甘粕事件)が、何かしら社会主義者側に問題があったかのような印象を与える情報操作さえしている。

亀戸事件、中国人虐殺
 また、「大正震災志上巻・下巻」では、陸軍習志野騎兵第十三連隊が南葛労働運動等の組合員10名を殺害した亀戸事件については一言もふれていない。これはすでに新聞で大きく報道され、世間の誰もが知っているのに記載がない。

 また「政府の記録の『関東戒厳司令部詳報第三巻』 所収 「第四章 行政及司法業務」 の 「第三節付録」 付表 「震災警備の為兵器を使用せる事件調査表」 、 および 『震災後に於ける刑事事犯及之に関聯する事項調査書』 所収 「第十章 軍隊の行為に就いて」 の 「第四 千葉県下における殺害事件」に記載されている陸軍自身による朝鮮人・中国人の虐殺の事実も一切ふれていない。

中国人虐殺について 
 9月3日大島町八丁目の中国人200名が陸軍によって虐殺された事実は有名であるが、これにも「大正震災志上巻・下巻」は、全くふれていない。大島町における軍隊による中国人虐殺は、第1回は9月3日朝、八丁目広場で軍隊による2名の中国人の銃殺 、第2回は午後1時頃、軍隊及び自警団による中国人約200名を銃殺及び撲殺、 第3回は、午後4時頃、約100名を殺害した。
 のちに中国人の有名なリーダーで僑日共済会の会長であった王希天も殺害された。これも書かれていない。

*資料 
内閣府防災情報
「第2節 殺傷事件の発生」
司法省の『震災後に於ける刑事事犯及之に関する事項調査書』
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai_2/pdf/19_chap4-2.pdf

関東大震災人権救済申立事件調査報告書 日弁連
http://www.azusawa.jp/shiryou/kantou-200309.html

横浜における関東大震災時朝鮮人虐殺 山本すみ子著 (大原社研)
https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/668-04.pdf

関東大震災時の朝鮮人虐殺における国家と地域 ―日本人民衆の加害責任を見すえて― 
関原正裕著 一橋大学大学院社会学研究科 
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/72500/soc020202100703.pdf

震災直後の首都圏で何が起きたのか?――国家・メディア・民衆 山田昭次著 OPINION
https://synodos.jp/opinion/society/14990/

以上



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。