我が国では、太平洋戦争に無残な敗北をした後、米軍を中心とする占領軍に国土を占領され、その時代、各地に米軍を対象にした慰安所が設けられた。そして、当時の内務省通達により、各県の警察が民間業者と協力して、その開設や運営に務めていたのは公然とした事実であり、そこでは、戦争未亡人や、被災して生活苦に陥った未婚の女性が集められ、売春行為を行っていた。今でも、我が国政府は、朝鮮半島などにおける従軍慰安婦の存在を隠したがっているが、終戦後に米軍対象の慰安所が設けられた経緯から推察すると、戦時中の従軍慰安婦についても、当時の官警が民間業者と協力して慰安婦を募集していたと見るのは妥当だろう。最も、その慰安婦という名で売春行為をしていたのは、朝鮮半島出身者だけではなく、むしろ、日本内地の女性も多く含まれてはいた。
このように、女性の人権が無視されてきたのは、我が国だけでは無いが、我が国が再び独立を回復し、売春禁止法が制定されて売春が違法行為とされるようになっても、依然として、ソープとか、デリヘルとか、援助交際とかの名前での売春行為や、或いは、出会い系サイトなどを悪用して女性に性加害を加えるなどの事件が跡を絶たない。その他にも、職場・家庭・その他の社会活動の場において、女性が蔑視され、差別されてきたことも事実である。単に、女性議員の数や、企業などで幹部となる女性の数が男性に比べて少ないというだけではない。例えば、フジテレビにおいて、幹部の指示によって有名タレントなどとの会食の席に女性アナウンサーが動員され、接待させられていたのも、その一つの例であろう。中居問題では、性被害を受けた女性アナウンサーについて、一人で有名タレント宅に行ったのが悪いとか言い、彼女が後で中居とメールのやり取りをしていたことを持って、単なる男女間の交際のもつれだと強弁してやまない元知事の弁護士がいたり、知識人気取りの人物がいたりする。
そもそも、全ての男は、精液が、ある程度体内に溜まると放出したいという欲求が生じる動物的本能がある。しかし、法律に違反してはならないという教育を受け、道徳心や人に対する優しさを持った通常の男性は、性欲を抑えたり、自分で適切な処理を行うことによってそれに対処している。明らかに立場の弱い女性に対して、他の関係者も来るからと誘いをかけ、直前で大雨であることを口実に自宅マンションに来るようにと、断れない立場の女性を誘い込み、挙句の果てに性加害を加えるなど、良識のある初老の有名タレントのやることでは無い。ところが、その女性が、被害によるトラウマの苦しさを訴えていても、有名タレントについて、その事実が明るみに出たことによって失った利益の方が大きいとして、彼を擁護している者が複数いること自体、女性蔑視の風潮が我が国に根強く残っていると感じさせられる。そういう人達は、被害女性に二次加害を加えているだけではなく、自分が古い世代の考えに染まった男性で、中居の行為が正しいと世間に頑固に主張しているのだと自覚する必要があるだろう。