それが大人の社会で具体的にどんな意味を持つのかは解らなかったけれど、とてもおぞましい淫靡で陰湿なニュアンスを含んでいる事はハッキリ受信していた……。
恐らく、油断ならぬ子供だったんだと思う。きっと僕の表情は強張り、嫌悪感一杯の雰囲気を醸し出していたと思う。
それは成長の過程での訓練が出来ない……生理的で原初的な反応だから矯正出来ない類いの反応だと思う。
そんな人種の集団と出会すと、僕はとても酷く緊張した反応を示しているのだと思う。
同時に彼等もまたただならぬ反応をするし身構えるのが解る……。
水清ければ魚住まず?……と表現される
人間界にはある程度濁った汚さを必要とするという意味合いの汚れに対して僕は全く反応しない。
詰まり物分かりは良い方だと思う。
人を意味もなく貶めてしまおうとする意図や企みといったもう少しシリアスな悪意に対して、考える間もなく『察知する』といった感覚で受信してしまうのである。
子供の頃……微に入り細に入り……深刻な悪意を察知してしまう自分の能力を僕も、周辺の大人達も随分もて余したと思う。
何時か書いたけど……暴力教師の目の奥に、本物の憎悪を見付けてしまったから睨まれたし……。
他の子供達の様に丸め込む事が不可能な餓鬼にその教師も随分と戸惑っていたと思う……。
生理的な嫌悪感だから僕も、子供らしからぬ鋭い切り込みの言葉を吐いたと思うし彼もまた本物の悪意を僕に対しては隠そうとしなかったのである。
単純にして独善的で短絡的な思い込みに自己疑問を持たないタイプの大人達との間に……必ず僕は軋轢を生んだのだった。
その僕の『厄介な才能?』も何かの意味を以て僕に与えられているのだと思う様になった。
本当に煮詰まり苦境にある人が……さして親しくない僕を特定して相談を持ち込んで来るっていう事が多々あった。
お付き合い技術レベルのゾーンでは如何ともし難い……シリアスな分野をお前が担当しなさい!と与えられた感覚なんだと今では思う様になった。
適当な対応じゃなく、本当にシリアスに考え行わなければ解決しない……そんな時、僕のその厄介な才能は……結構役に立てるのである。
厄介の裏には遣り甲斐、生き甲斐が仕込まれてたって理解して生きて行こう……幾ら嫌がっても『それが僕』なのだから……。
人を傷付ける訳じゃなく……滅多に人の役に立てない自分ならば……この才能有り難く使わせて貰おう……やっとそう思える様に……なった。