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舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』を観て来ました。

2017-02-19 23:47:50 | Weblog


2/17(金)まで、シネ・ウインドで「人生フルーツ」という映画が上映されていました。
シネ・ウインドで予告編を見た時から何となく気になってはいたのですが、それに加えてここ最近はこの映画を見た人の感想が最近やたらと僕のTwitterのTLに流れてくるのですがそれが本当に老若男女を問わず誰も彼もが大絶賛!というあまりの評判の良さに、これは見るしかない!と気になっていました。





予告編はこちら。



さらに調べてみると、この映画、小規模な映画かと思いきや、なんと全国的にロングラン上映やアンコール上映が相次いでいるというかなりの話題作らしく、こんな映画が新潟で観られるなんてラッキーだぜ!と見る前からかなり期待が高まっていました。
と言うわけで、2/15(水)にシネ・ウインドで観て来たのですが・・・本当に予想を遥かに上回るに超絶大傑作でした!と言うわけで感想を書いていきます。



この映画は、90歳の津端修一さん、87歳の英子さんの夫婦の日々の生活や生い立ちを記録したドキュメンタリー映画なのですが、色々言う前に、まず何と言ってもこの二人が本当に最高すぎる!
いやもう本当に、よくもまあ、あんなに魅力的な人達を見付けてきたものですよ!この映画を見た人ならまず間違いなく、この二人のことが好きになってしまうのではないでしょうか。

修一さんと英子さんは、愛知県のニュータウンの一角にある一軒家に住み、庭の畑で作物を育てたり料理を作って食べたりしながら暮らしています。
映画に登場するのは、二人のとてもささやかな日常の風景ばかりなのですが、二人は毎日まるで少年少女のように楽しそうに仲良く幸せに暮らしているので、なんて素敵な夫婦なんだ!とまず感動してしまいました。

二人が毎日の生活の中で繰り返している畑仕事や家事の一つ一つは本当にささやかなものではあるのですが、その一つ一つを二人がとても大切に丁寧にして生きていて、しかもその一つ一つに楽しさを見出すことを決して忘れていないのが本当に素晴らしいと思いました。
だからこそ、そんな毎日のささやかな幸せの積み重ねの上に、あんなにも素晴らしい二人の何十年の人生があるんだと思うと、この映画で描かれているのは人間が生きる上での一つの理想なのではないかと思いました。

さらに、ニュータウンという近代的・人工的な世界の真ん中に生きているにもかかわらず、季節の移り変わりを大切にして自然と共存しながら生きる姿には、人間はどんな時代でも自分らしく生きていくことが出来るという希望のように思え、まるで自分が生きることも静かに応援してもらっているような気持ちにさえなりました。
毎日を大切に生きること、信頼し合える相手がいること、そしてそんな毎日を心から楽しんで生きている二人の姿に、本当の意味での豊かさ、人間が生きることの素晴らしさが詰まっていると感じました。

と言うわけで、もうこの二人でドキュメンタリー映画を作ろうと思った時点で大正解!と言えるくらい、この二人の魅力、そして人間が生きることの素晴らしさがぎっしりと詰まった映画です。
もう、この時点でこの映画は大傑作なのですが、それ以外にも素晴らしさを感じる部分がたくさんありました。

例えば、この映画では修一さんと英子さんの生い立ちを紹介するシーンも登場するのですが、修一さんは若い頃は戦後の宅地開発に関わっていた建築家で、この映画の中で二人で暮らしているニュータウンの開発にも関わっていた方です。
修一さんは、もともと自然の地形を生かした開発を提唱したがそれは叶わずに、戦後の効率化を優先した画一的なニュータウンが完成してしまったということが、過去の映像や様々な人のインタビューを通して描かれます。

しかし、修一さんはそんなニュータウンの一角に自分の土地を持ち、一軒家を建て、英子さんと二人で何年もかけて畑仕事をしながら、庭に小さな里山を作り出した、というとんでもない人生を送ってしまったという方で、このシーンを見た時は、いやー、ロックな人生だなあ!って思いました。
「ロック」という言葉を聞くとどうしても破天荒で激しいものを想像してしまいがちですが、僕が考えるに「ロック」とは世の中からの重圧に負けずに己の道を貫き通す力強さみたいなものだと思うので、そう考えるとこの夫婦の人生、ロックすぎるくらいロックな人生だと思うのです。

そして、そんな二人の魅力を余すことなく我々に突きつけてくるこの映画も、とても静かで穏やかな映画だとは思いますが、実はかなりロックな映画なのではないでしょうか。
その証拠なのかどうか分かりませんが、僕はこの映画を見終わってから、静かに心が熱くなっていくのを感じました。

また、修一さんの生い立ちからは修一さんの人生の向こうに日本の戦後の歴史が垣間見え、夫婦のドキュメンタリーであると同時に、日本の戦後の歴史を記録したドキュメンタリー映画にもなっているのもすごいなあと感じました。
それはまるで、どんな人間の人生も一つの歴史であり一つのドキュメンタリーであると教えられたようで、人間の人生というものが持つ意味の大きさを感じさせられました。

そんな人間の人生の壮大さを記録して、一つの映画としてまとめたこの映画は、ドキュメンタリー映画として本当に素晴らしいと思います。
二人の人生も、季節も、自然の営みも、日本の歴史も、一瞬一瞬ごとで変化しては過ぎ去っていくものなのですが、それらの一つ一つがあの映画の中でちゃんと生きているのです。

カメラの前で偶然起こったことを記録してそのすごさを伝えていくことにあるとのがドキュメンタリー映画の魅力だとしたら、「人生フルーツ」はある意味その究極みたいな映画だったのではないでしょうか。
ネタバレを防ぐので詳しくは書きませんが、この映画が偶然記録してしまったあるとんでもないエピソードがあるのですが、そのシーンを見た時は本気でびっくりしてしまいました。

ただ、この映画が本当に素晴らしいと思うのは、確かに「えっ、そこまで撮るの!?」というシーンは登場しても、そこから「土足で上がり込んでいる」感じがまったくしないのです。
全体的に、あの二人は映画に出ることも楽しんでいるようにも見えて、それは言い換えれば、この映画の作り手と被写体との間に信頼関係がしっかり築かれているのが伝わってくるからだと思うので、もうその時点で、この映画は人と人が信じあって作ったんだなあということが感じられて見ていると幸せな気持ちになります。

二人の人生が毎日の信頼の積み重ねの中から築かれているように、この映画そのものも信頼の積み重ねの中から生まれたものだなあと思いました。
と言うわけで、長々と感想を書いてきましたが、とにかく90歳の修一さんと87歳の英子さんの何気ない生活の中に人間が生きることの素晴らしさがぎっしり詰まっていて、それを押し付けがましくとかではなく、非常に優しく丁寧に伝えてきてくれる、見終わったあとは幸せな気持ちになれるし、静かに心が熱くなる、そんな映画です。

おそらく、予算的にも公開規模的にもそこまで大規模な映画ではないとは思いますが、こういう映画が愛されているのは本当に幸せなことだと思います。
新潟でがシネ・ウインドでの上映は終わりましたが、高田世界館や十日町シネマパラダイスではこれから上映されるらしいですし、もし見られる機会があったら見てみてください。
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