10/6(日)、せっかくの金沢観光なので、金沢21世紀美術館に行ってみました。
建物の前には球体のパビリオン「まる」という作品があり、ここが入口なのか…と思いきや、円形の建物には4つも入り口があり、どこが正面入り口なのかよく分からない。
建物の周りをぐるっと回ってみると、そこの入り口の中に受付があり、案内をもらう。
すると、建物の外にも中にも、様々な恒久展示作品があることが判明したので、まずはそれを見てみることに。
円形の建物の周りには芝生があり、そこには恒久展示作品として様々な野外作品が展示されている。
円形に並んだ金属製のベンチも芸術作品のようだし、その横にあるフロリアン・クラールの「アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3」という地面からラッパが突き出したような作品は敷地内にいくつもあり、地中でどれかとどれかが繋がっていて、繋がった場所同士で会話ができるらしい。
オラファー・エリアソンの「カラー・アクティブ・ハウス」という作品は、曲線状の3色のガラスが円形に重なり合うように立っていて、どこから見るかによって色の重なり方によって見える色が変わるというもの。
誰もいないタイミングで撮影しようとするも、日曜日だったこともあり常に誰かが中にいました。
LAR/フェルナンド・ロメロの「ラッピング」という作品は、金属製の鉄骨と金網を組み合わせた、巨大な檻や籠のような遊具作品。
中に入ることもできて、小さな階段がある。
屋内にも無料で見られる恒久展示作品もあり、これはジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」という作品。
これは部屋全体が一つの作品で、四角い部屋の天井に四角い窓があり、そこから空が見えるというものなのですが、この日は曇り空でした。
ここまでの恒久展示作品は、すべて無料で観賞することができます。
しかし、中にはそれは有料の企画展の会場に入らないと見られない恒久展示作品もあり、せっかくなので見に行ってきました。
パトリック・ブランの「緑の橋」という作品は、建物の真ん中のあたりに中庭のような空間があり(光庭というらしい)、そこに壁も天井もガラス張りの通路があり、中を通ることもできる。
そしてその先には、通路を取っていくと、その外側に緑の植物で覆われた巨大な壁があり、そこを潜り抜けるようになっている。
ヤン・ファーブルの「雲を測る男」という作品は、建物の屋根の上に、両手で定規を持って天に向かって伸ばすような金色の彫刻が立っている。
これは見える角度を探さないと見えない場所にある(外国人の観光客の人の横で「あそこにありますよ」と指さすと「Oh~!」と言われた)。
レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」という作品は、一見水の張られたプールに見えるが、実は水面と思われる場所がガラス貼りになっていて、その上に水が溜まっている。
なので、ガラスの下の空間には入ることもできるのだが、この日は展示の入れ替え作業中のために入ることができず。
…と、ここまでが恒久展示作品。
あと2つ作品があるそうですが、どちらも展示作業中の場所にあったので見ることができず。
せっかくなので、開催中の企画展「Lines-意識を流れに合わせる」も見に行ってきました。
全体的に、人間と自然や世界との結びつきを、線(Lines)を意識することで表現した展示という感じで、撮影OKだったので紹介していきます。
横山奈美「Shape of Your Words[In India 2023/ 8.1-8.19]」
色とりどりのネオンでいくつもの「I am」という文字が作られています。
大巻伸嗣「Plateau 2024」
不思議な模様の描かれた巨大な円盤の上を、天井から吊るされた金属の不思議なオブジェが揺れているのですが、円盤の模様は大陸の動き、金属のオブジェは日本海の大和堆と呼ばれる浅瀬を表現していて、能登半島地震を受けて作られたそうです。
ジュディ・ワトソン
「記憶の傷跡、フィンガーライムの根、カスアリーナ・イエロンガスタジオで見つけたオブジェ」
「立石、黄土色の網、背骨」
「グレートアーテジアン盆地の泉、湾(泉、水)」
オーストラリアの先住民、アボリジニの文化を現代の素材で表現し、自然と人工物、過去と現代が出会うような作品。
エル・アナツイ「パースペクティブス」
廃棄物を繋ぎ合わせた壁一面を覆う巨大な布のような作品、これも自然と人工物の関わりを考えさせられる。
マルグリット・ユモー
「醸造家」
「シロアリ菌の守護神」
「落葉II」
「ハニー・ホルダー 」
樹皮や木の実、蜜蝋などの自然由来の素材と、手吹きガラスなどの人工的な素材を組み合わせ、自然と人工物の関わりを表現。
ミルディンギンガティ・ジュワンダ・サリー・ガボリ
「ニンイルキ」
「ディビルディビ・カントリー」「ディビルディビ・カントリー」
「スウィアーズ島」
作者はオーストラリアの先住民アボリジニの人で、故郷のクイーンズランド州ベンティンク島を近代の西洋絵画で色鮮やかに表現するのが興味深い。
マーク・マンダース
「4つの黄色い縦のコンポジション」
「黄色い縦のコンポジション」
「存在する全ての言葉のコンポジション」「2色のコンポジション」
巨大な人間の胸像と木材を組み合わせたような作品に、塗装して額装した木材の作品。石膏に見える作品は実は塗装されたブロンズ製などの意外な驚きがある。全体的に架空の建物のメタファーという設定があるそうで、色々な素材を組み合わせる建築を表現したのかなと思いました。
サム・フォールズ
「真夜中の虹」
「ペトリコール」
「永遠の命」「夜の音楽」
自然や生命の生死を表現したような作品で、絵の中に登場する植物は実際の植物を使っているとのこと。
ティファニー・チュン
「出国の歴史を再構築する:ベトナムからのボートの軌跡、難民キャンプからの飛行ルートとODPの事例」
「水に記憶があるならば」
「テラ・ルージュ:円形土塁、ゴム農園、廃飛行場が絡み合う風景」「テラ・ルージュ円形土塁調査 No.7」
ベトナムからの難民の出国の経路を調べ上げて地図上で可視化したり、水と人間の生活のかかわりを撮影した映像作品は難民船が海賊船に襲撃された場所で撮影していたり、近代の植民地や人間の営みの変化の歴史を示す場所を地図上に示したり、ベトナム生まれの作者がベトナムの歴史、特に負の歴史にも目を向けて表現した作品。
エンリケ・オリヴィラ「死の海」
こちらは展示室内ではなく、無料で入れる美術館のロビーに展示。巨大な流木のお化けような作品は、実は様々な木製品の廃材を組み合わせてできている。自然と人間、人工物の関わりを考えさせられる。
そんな感じで、有料の企画展の会場内にも恒久展示作品があるように、逆にその展示会場の外の無料のスペースにも企画展の作品があったりもするので、どの展示物が美術館内のどこにあるかが、正直ちょっと分かりにくい。
そもそも建物が円形だし、無料スペースにしろ有料の企画展の会場にしろ、順路も特に決まっていないから、どこに何を見に行けばいいか結構迷う。
多分そうやって迷いながら作品を展示するのを楽しんでもらうために意図的にやっていると思うのですが、実際最後までどこにあるか分からない作品も多かったし、ちょっと分かりにくいというか、美術館の中では色んな美術、特に現代美術に慣れ親しんだ人でないと分かりにくい難易度が高めの美術館だなーと僕は思ってしまったのですが…
でも、ほとんどの観光客みたいな人達は、なんなら外国人の人達も普通に記念写真を撮ったりして楽しんでいるようだったし、実際両親が行った時も普通に楽しんでいたようなので、僕がちょっと重く考えすぎな部分もあるのかもしれません。
最後に、美術館の敷地内には、なんと2つの茶室までありました。
こちらの茶室は、申し込めば借りることもできるそうです。
昔の雪隠(要するにトイレ)も残っていて、管理人の人がやたらと勧めてきました。
現代アートの美術館の中にも、こういう昔ながらの茶室や日本庭園があるのも、兼六園や金沢城公園など昔からの歴史や文化を大切にしている金沢ならではのこだわりなのかもしれません。