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舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

シネ・ウインドで、ロマンポルノリブートプロジェクト第二弾!「風に濡れた女」を観て来ました。

2017-04-01 09:13:25 | Weblog
3月からシネ・ウインドで上映が始まった、ロマンポルノリブートプロジェクト。
ロマンポルノリブートプロジェクトとは、かつて一斉を風靡したロマンポルノという映画のジャンルに、現代の5人の映画監督が挑む!という企画です。



シネ・ウインドでは1本ごとに1週間ずつ、月に2本くらいのペースで上映しています。



第一弾の「ジムノペディに乱れる」は、3/4~3/10に上映され、僕は3/6(日)に観て来ました。
シネ・ウインドで、ロマンポルノリブートプロジェクト第一弾!「ジムノペディに乱れる」を観て来ました。





続けて今回は、第二弾の「風に濡れた女」を観て来ました。



ひとまず予告編はこんな感じです。





と言う訳で、「風に濡れた女」の感想を書いていこうと思いますが、その前に、前回の「ジムノペディに乱れる」の感想にも書いた、ロマンポルノというジャンルそのものに対して書いてみようと思います。
ロマンポルノとは10分に1回以上の濡れ場というルールのある映画なのですが、このルールがあることが、映画をとても面白くしていると思うのです。

10分に1回の濡れ場があることで、次は一体どんな濡れ場が来るのだろうか?と期待してしまうので、まったく映画に飽きることがないし、また、監督が映画の中にどのように濡れ場を組み込むのか?というアイディアを楽しめることも、ロマンポルノの魅力だと思いました。
前回の「ジムノペディに乱れる」が、このロマンポルノのルールを上手く使った面白い映画だと思ったのに対し、今回の「風に濡れた女」は一体どうだったのか…?

「風に濡れた女」の感想を一言で言うならば、「強烈な映画だった!」という感じです。
濡れ場もストーリーもあまりに強烈すぎて、観終わった今となっても、僕があの映画が好きなのか嫌いなのか判断できない、というか、そういう次元じゃない、ただただ「すごいものを観た…」という気持ちだけが残る映画で、おそらく、こういう映画を「カルトムービー」と呼ぶのではないでしょうか。



今回の「風に濡れた女」の塩田明彦監督の過去作に、2002年の「害虫」という、宮崎あおいさん演じる女子中学生が、どんどん社会の規範や常識みたいなものから逸脱して暴走していくような映画があるのですが、あの映画を観た時の気持ちにかなり近いものがあったなあと思います。
「害虫」は、当時リアルに中学生だったであろう宮崎あおいさんという美少女が、いじめや家庭崩壊などが問題とされていたあの時代を象徴するかのように、静かに淡々と狂って破壊衝動を暴走させていくという本当にぶっ飛んだ映画で、破壊のカタルシスと恐怖を同時に感じるようなとても危うい気持ちにさせられる、今思い出しても「なんだったんだアレ…」と茫然としてしまうような映画だったなあと思います。

「害虫」が、美少女中学生の暴走と破壊衝動を描いた映画であるなら、それに対して「風に濡れた女」は、間宮夕貴さん演じる最強にエロい女が世間の常識も何もかも無視するかのように、エロによって次々と周りの人間達を狂わせていく映画だったなあと思います。
塩田明彦監督が「害虫」に対して、「サチ子こそが害虫であり、ゴジラである」とコメントしているそうなのですが、まさに今回の「風に濡れた女」もそれに近いものがあり、ある知り合いの「あの映画は怪獣映画。女がすべてを破壊する」という感想には、なるほどと思ってしまいました。



ネタバレも辞さずにストーリーを書いていきますと、人里離れた山の中で一人ひっそりとテントのような山小屋で生活している男、高介の前に、唐突に一人の女、汐里が現れ、彼女の出現によって彼の人生はどんどん狂っていきます。
登場からいきなり、高介の目の前で突然海に飛び込んだかと思えば海から上がって来て服を脱ぎ始めたり、それを無視するように家へと帰る高介の後ろを勝手に付いて来て「お前は私にロックオンされたからもう逃げられない」みたいな言葉を投げかけたり、気付いたら高介の家に町の知らない男を連れ込んでセックスしていたりと、汐里という名前以外の素性も謎なら行動もすべて謎、とにかくエロい女が暴走しているのです。

映画を観ていると、どうやら高介は禁欲的な生活をするために山の中の小屋に住んでいるらしいということが少しずつ見えてくるのですが、それを挑発するかのように汐里のエロい行動はどんどんエスカレートしていきます。
そんな汐里を最初は迷惑がっているだけの高介でしたが、徐々に女に興味を示しコミュニケーションを取り始め、ついにエロい気持ちを解放して汐里に手を出そうとしたかと思えば、汐里は「まだ早いんだよ!」と言って高介に暴力を奮って小屋の壁に穴を空けて逃げたりと、とにかく高介は汐里に翻弄され続ける様が描かれます。

映画の中盤、高介の昔の演劇仲間(というか元恋人)の女が、男4人と女1人の劇団員を連れて山小屋を訪問するのですが、この辺りから、一気にこの映画のエロはエスカレートし暴走していきます。
高介はかつて色んな女に手を出しまくっていて、それが原因で劇団の女とは別れていたらしいこと、その過去から逃げるように山小屋で禁欲的な生活をしていたことなどが、徐々に明かされていきます。

その夜、高介が過去のエロさを解放するかのように久し振りに再会した昔の恋人とセックスをしているところに、例の謎の女・汐里が現れ、突然高介とセックスしていたはずの女に手を出してイカせたかと思えば、今度は劇団員の男達(全員やけにおとなしい)を一人ずつ車に連れ込んで順番にセックスしていくのです。
そして、セックスを途中で中断された高介は、劇団員の女(やけにおとなしい)を突然野外で犯し始めると、もう何が何やらと言う感じでエロが暴走していきます。

そして劇団の一行が帰ったあと、ついに高介と汐里はセックスをするのですが、ここで行うセックスがとにかく野性的というか一切の理性が存在しないようなセックス三昧で最終的に山小屋が崩壊するという、観ていてエロい気持ちになるというより恐怖を感じるほどでした。
一方、汐里とのセックスでイカされた敗北感と欲求不満が爆発した劇団の女はその気持ちを埋めるかのように劇団員の男達を襲ってセックスし、一人逃げ出した劇団員の女は山の中で出会った男と運命的に結ばれセックスをするという…とにかく、最終的に登場人物が全員、エロに暴走していくという本当に狂った映画で、もう面白いとか面白くないとかそういう次元じゃなく「な、何なんだこれ…」という驚愕の映画体験でした。



という、本当にエロもストーリーもぶっ飛んだカルトムービー「風に濡れた女」ですが、一言で言うなら、これは「エロの暴力性」を描いた映画だったんじゃないかと思います。
では「暴力」とは何か?どうして恐ろしいのか?自分なりの考え方は、暴力とは、理不尽に相手を支配しようとする行為そのものであり、しかも、自分の考える常識やルールを無視して一方的に相手に押し付けコミュニケーションが通用しないことが、一番恐ろしいのではないかと思います(だから拷問とかが一番恐ろしいし苦手です)。

そう考えると、この「風に濡れた女」はまさしく汐里という女のエロが男達を(しかも女さえも)次々と暴力的に支配していく映画だったなあと思います。
しかも、一方的にレイプするのでなく(それはそれで恐いけど)、高介の性欲を刺激した上で(長い誘惑と寸止めの果てに)セックスに持ち込むので、体だけでなく頭さえも支配しているあたりが、真の意味で暴力的だったなあと思うのです。

映画を観ながらそんなセックスに、恐ろしさを感じると同時に、映画に登場する高介と同様に自分の性欲も刺激されるという、まさに観客さえも巻き込む暴力性は、本当にすごいなあと思いますが、それがまたこの映画の恐ろしさでもあるなあと思います。
僕はホラー映画が好きなのですが、心霊モノよりも、人間が何かに支配されたり、理性を失ったりする展開が一番怖い(しかもそこにエロが絡んだりすると尚更怖い)ので、まさに僕の「恐怖のツボ」みたいなものを的確に刺激する映画だったなあと思います。

男が女に誘惑されて理性が崩壊してセックスしてしまうことで、何もかもが崩壊していく映画だと、僕は去年観た中で一番恐ろしかったイーライ・ロス「ノック・ノック」という映画を思い出したりもしました。
ただ、最終的に拷問によるホラー映画と化していく「ノック・ノック」に比べて、「風に濡れた女」は決して恐怖を全面に押し出した映画ではなく、寧ろ笑えたりする映画でもあるのですが、僕は個人的には恐ろしい映画だなあと思いました。

先程「笑える」と書きましたが、この映画エロ以外に笑いもたくさんありまして、個人的に僕は「どうしてそうなった!?」っていう、まったく想像もしなかった展開が唐突に登場したりすると、僕は一番笑えるのですが、まさにそんな映画です。
要するに、びっくりする展開が一番笑えると僕は思っているのですが、これはまさしく先程書いた「ホラー映画」にも通じる話で、恐怖と笑いとは本当に紙一重なんだなあと思いました。

しかもこの映画はそんな「恐怖と笑い」に加えて「エロ」まで登場するわけで、だから、クライマックスのセックスシーンも、カタルシスを感じればいいのか、恐怖すればいいのか、はたまた笑えばいいのかという、恐怖とエロと笑いが同時に起きるような初めての謎の衝撃を受けました。
じゃあ、この映画を、僕は好きなのかどうかと聞かれたら、本当に未だによく分からない、ただただ「すごい衝撃を受けた」という気持ちなのです。

個人的に、エロで理性を失ってしまう人間や、暴力やエロで他人を支配するような人間が嫌いなので、そう考えるとこの映画には僕の嫌いな人間ばかりが登場することになりますが、じゃあそんな映画が嫌いかと言われれば、また別の話です。
衝撃的な映像体験の出来る映画は僕は大好きですし、実際何度もびっくりしたし、笑ったり興奮したりもしたので、物凄い映画だと思いますし、評価もしますが、同時に自分にとって一番怖いポイントを刺激されまくったトラウマ映画でもあるので、もう一度観たいかと言われたらもう観ないかなあ、というのが正直なところですね。



最後に、「ロマンポルノとしてどうだったか」という気持ちを書いておこうと思います。
前回観た「ジムノペディに乱れる」が静かな人間ドラマに濡れ場の登場する比較的静かな映画だったので、エロがあることでストーリーに引き込まれる映画だったなあと思ったのですが、それに対し、今回の「風に濡れた女」は寧ろエロが主役というか、エロというものに全力で立ち向かった映画だったなあと思います。

比較的軽いタッチで描かれる「ジムノペディに乱れる」の濡れ場を観た時は普通にAVを見ているようなエロい気持ちになったりもしましたが、「風に濡れた女」くらい強烈だともはやAVなんてレベルじゃないというか、エロい気持ちになる暇もなく、ただただ言葉を失うという感じでした。
どちらが面白いということではなく、同じロマンポルノでも、監督によってこうも違うのかと、ロマンポルノの奥深さを思い知らされたなあ…という訳で、次のロマンポルノも楽しみです!
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