舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

【書き起こし】ちひろBLUES作品展「ちひろdeアート 2018」7日目、ゲスト:MXUさん(にいがた映画塾)(2018.12.30)

2019-01-10 16:00:00 | ちひろdeアート


2018年、12/24(月)~30(日)に開催した、僕の作品展「ちひろdeアート」。
【お知らせ】ちひろBLUES作品展「ちひろdeアート2018」開催します!(12/24~30、ちず屋の2階)

7日目、12/30(日)には、にいがた映画塾の自主映画監督のMXUさんとトークイベントを行いました。
12/30(日)、「ちひろdeアート2018」7日目、最終日、終了しました!



というわけで、トークの書き起こしを公開します。



ちひろBLUES作品展「ちひろdeアート 2018」7日目
(2018.12.30 ゲスト:MXUさん)


ちひろ 「ちひろdeアート」最終日、これから最後のトークライブを初めていきたいと思います。今日のゲストは、にいがた映画塾のMXU監督です。
MXU  よろしくお願いします。
ちひろ よろしくお願いします。
MXU  お招きいただき、本当に光栄です。ありがとうございます。
ちひろ MXUという名前で映画は撮られていて、「BADDREAM」も今年撮られたんですけど。普段は本名で宇佐美監督と呼んでいますけど。
MXU  はい、宇佐美と申します。新潟市東区の。
ちひろ 宇佐美さんって呼んじゃって大丈夫ですか。僕も出会った時、宇佐美さんって呼んでたので。
MXU  全然大丈夫です。全然宇佐美でいいですよ。
ちひろ じゃあ、宇佐美さんって呼びますね。一応、映画の名義上はMXUってなってるけど。
MXU  それは、検索されたくないなと。ハハハ…
ちひろ なるほど。じゃあ、これからトーク始めていきたいと思うんですけど。本当に、声かけたら快諾していただいて、本当ありがたかったです。
MXU  いえいえ、呼んでいただいて本当に光栄で。
ちひろ じゃあ、軽く自己紹介していただいていいですか。
MXU  はい。宇佐美と言います。新潟で、主ににいがた映画塾という団体で映画を撮ったりしてます。もちろん、普通に仕事をしつつですけども。自主映画を地道に作っていまして、色々面白いことをやれたらいいと思っています。自分、今まで過去10年くらい、映画以外にも、舞台関係とか。
ちひろ 出会った時も、舞台の脚本書かれていた時でしたよね。
MXU  そうですね。まあ雑多な、やりたいことやってるだけなんですけど、基本的には。ただ、作っていく中で、作ることで色々な繋がりができて、ちひろさんとかもそうですけど。
ちひろ ありがとうございます。
MXU  そういうのが、やっぱり一番嬉しいというか、面白いなと思います。まあ、自己紹介としては、自主映画を中心に色々、新潟から発信できたらなという想いでやってるってところですね。
ちひろ 出会った時って、そもそも映画じゃなくて、演劇で出会いましたよね。
MXU  そうなんですよね。ちひろさんのブログ「舞い上がる。」で、毎年流行語大賞をやっていて、なんと2013年の流行語大賞が「にいがた女がガマン強いってやめてよ!アタシ、ボブと南国で暮らすわ」っていう、大西アケミさんの講演会で、私これのホンを書いたりとか、自慢で言いたいのは、そのタイトルは私が考えました。それで大賞とったよっていう。
ちひろ 解説すると、大西アケミさんっていう女性が、新潟で劇団あかつきって劇団をやられたり、あと、にいがた映画塾の映画にも出てますよね。色々活躍されてるんですけど、その方の講演会という名の演劇とかコントみたいなことをやるっていう。
MXU  講演会と演劇がミックスされたものを、万代市民会館で2013年にやったんですけど。
ちひろ で、この「にいがた女がガマン強いってやめてよ!アタシ。ボブと南国で暮らすわ」っていうタイトルがあまりにも面白いので、僕がネタにしまくってたら、僕の周りでもちょっと流行りだしちゃって。
MXU  嬉しかったですね。
ちひろ その結果、僕が毎年「舞い上がる。」ってブログでやってる流行語大賞で、2013年の大賞に輝いてしまったっていう。
MXU  それを、なかなか誰にも言えなくて。
ちひろ なるほど。他の知らない人に、「舞い上がる。の流行語大賞」とか言っても、「何それ?」ですもんね。
MXU  そうですよね。でも、これはちょっと自慢したくて、ようやく5年かけて。
ちひろ ありがとうございます。
MXU  こういう繋がりはすごい感じてまして。
ちひろ こういうきっかけだったんですよね、そもそもの出会いが。
MXU  ちひろさんは、その舞台の時にお手伝いで照明とかしていただいて。まあ、めちゃくちゃな舞台だったんですけど。
ちひろ あれの脚本を書かれたし、タイトルも考えられたという。
MXU  そうですね。大西さんとは、この前に「女の生き方しなやか流」(2012年)って舞台もやって、その第二弾。
ちひろ 第三段から大西さんが自分で書かれている?
MXU  いや、大西さんがやってるのはまた違うコンセプトでやってるので。第三段もまたいずれやりたいですね。
ちひろ アルザフォーラムですよね、万代市民会館の。
MXU  そうですね。まあ、こういう突き抜けた人を、おばさんを。
ちひろ パワーのあるおばさんですよね。
MXU  そういう人を、突き抜けた内容で伝えられたらなと思って。
ちひろ 是非。まあ、大西さんの話は広がりすぎちゃうんで、このへんにして。じゃあ、ここからは宇佐美さんがどういう方なのかを前半は聞いて行って、後半は宇佐美さんの作った映画の話になっていくかなと思っているんですけど。
MXU  はい。是非是非。
ちひろ じゃあ、まず、にいがた映画塾で自主制作映画を撮られてるということですけど、それはどういう経緯で自主制作映画を撮ろうと思われたんですか?
MXU  はい。私、高校を卒業してから東京に何年かいて。
ちひろ 生まれは新潟ですよね。
MXU  はい。高校まで東区で育って、東京に行って、それから大学、あと社会人を何年かやったんですけど。まあちょっと、Uターンしてですね。それで、2006年、映画塾に入った。もともと、音楽も映画もアートも、全般大好きで。自分の場合、見ていいなと思うと、自分も作りたいと思うタイプで。だから学生時代とか音楽やったりとか、絵描いたりとか、そういうことはやったんですけど、映画だけハードルが高くて。
ちひろ 色々されてたんですね。絵を描いたり、音楽をやったり。
MXU  まあ、遊びですよ、黒歴史的な。まあ、痛いことは大体やってたんですけど、映画はやってなくて。90年代後半とかだと、パソコンとかもまだ黎明期というか、始まったばかりだったからそんなにデジタルで今みたいに、Adobe Premierとか、そこまで進んでなかったとは思うんですけど。
ちひろ 誰もが気軽に映像を撮って編集できる時代ではなかった。
MXU  そうそう。パソコンで。ただ、2006年とか、2000年代後半になってから、デジタル撮影が基本になってみたいな感じもあって。たまたま新潟で映画館に映画を観に行こうと思って「新潟 映画」でネット検索したら、「にいがた映画塾」ってヒットして。それもまたネット社会的な感じですけども。で、2006年に映画塾という名前として講座をやっていて、一般市民向けに、映画の作り方とか。それに参加したんですね。
ちひろ そうなんですね。じゃあ、12年くらいずっと。
MXU  そうですね。面白いなあと思って、それからずっとコンスタントにちびちびと色んなことをやって。映画って、それをきっかけに色んな面白いことができるっていうか、発信もできるし。今はインターネットを使えばYouTubeとかで世界に発信することもできるので。そういう意味で、映画ってなかなか表現として面白いっていう感じで。
ちひろ それで、気付けば12年。
MXU  そうですね。で、それがきっかけで色んな人と繋がれて。財産ですね。
ちひろ そんな感じで12年くらい映画を撮られてきたということですが、何か影響があったとかはあるんですか?こういう作品に影響されたとか。
MXU  あー、それこそ、なんか、シネ・ウインドとか通ってる人とか、すごい観てるじゃないですか。年間何百本とか。私はそんなに、そこそこ観るけれども、そこまで意外と観てないなって。日本映画の昔の監督とか、若松(孝二)さんの作品とか。
ちひろ 若松孝二監督、最近上映してましたね。
MXU  ようやく「止められるか、俺たちを」を観たけれど、若松さんの他の作品はまだ観てない。だから、もっと勉強しなきゃって感じで。
ちひろ 結構ありますよね、撮るのに忙しくなると、あんまり観ることが出来ない監督さんって、結構色んな人から聞いたりするんですけど。
MXU  私の世代、アラフォーだと、普通にスピルバーグの映画とか、金曜ロードショーとかのテレビで映画をやってた時代なので。夜中もやってたりして。そういうのを、ビデオに撮ってこそこそ見たり。それで、やっぱり、世界に触れられるみたいなね。そういう楽しみで、色々見てたなあって思います。で、作りたいなって気持ちはあったけど、でも大変なんだろうなって思って。
ちひろ 絵とか音楽とかに比べると、映画って作り手の一歩目のハードルが高い感じがしますよね。
MXU  やっぱり機材が何百万とか、お金持ちの本当に限られた人達の表現手段だったと思うんですよ、一昔前は。でも、ここ十数年、二十年くらいで変わったと思うので。そういう意味では、それに乗ったって話なんですけど。面白いですよね。
ちひろ なるほど。ちなみに、にいがた映画塾では、一年に一回講座があるってことですけど、大体12年間にどういう活動をされてきましたか?
MXU  私自身ですか?
ちひろ にいがた映画塾がどういうことをしてきたのかもあるし、その中で宇佐美さんはどんな感じだったのかなみたいな。
MXU  いやもう本当に、映画塾は思った以上に色々やっていて。小学校の総合学習の時間に乗り込んでいって一緒に映画を撮るみたいな、そういう社会活動みたいなこともやったり。それを撮って。村上の山北町の地元のPR動画を作るって言って、それを子供達と一緒に、去年、一昨年とか。代表の西尾さんを中心に。
ちひろ そんなこともやっていたんですね。
MXU  あと、「インディーズムービーフェスティバル」も、最近はもう映画塾主催で。
ちひろ あれ、最初は映画塾主催じゃなかったんですか?
お客さん あれは、映画塾の中にいる人が実行委員で。
ちひろ そうなんですね。毎年、シネ・ウインドで11月の周年祭の時期に、「にいがたインディーズムービーフェスティバル」って言って、色んなインディーズ映画を、新潟県内外のものを上映するっていう。
MXU  まあ、そこに向けて映画塾の人達が作品を作ったりして、そこで発表するっていうのもあったりして。それで色んなところの映画祭に応募して上映してもらったりとか。すみません、私が映画塾の歴史を語ったら、多分これで3時間くらいかかってしまうので。
ちひろ そうですか。3時間もかかっちゃいますか。
MXU  うん。まあ本当に、色んな形で、普通の商業映画のお手伝いしたりとか。
ちひろ そういうこともされてるんですね。
MXU  うん、してますね。エキストラとかもですけど。映画塾発で、今、一線で頑張ってる方とかもいて。東京の方に皆さん行かれてってことが多いですけど、プロでやってる方とかも、いらっしゃいますね。
ちひろ にいがた映画塾出身の方、そんなに僕、存じ上げてないんですけど、例えば、この前、山形の「世界一と言われた映画館」の上映会ありましたよね。大杉連さんがナレーションされた。確か、にいがた映画塾出身の方(佐藤広一監督)が山形で撮られていて。来年、シネ・ウインドでもまた上映されることが決まったみたいですけど。
MXU  はいはい。まあ、結構映画塾経由で、受講してるって方。やっぱり県外の方で通ったりしてた方もいたし。東京からも。
ちひろ あ、県外からにいがた映画塾に通うような人もいるんですね。
MXU  そうそう。そういう方もいて。今、色々、(株式会社)ロボットとかで頑張っていたりして。
ちひろ ロボットって、あの映像制作の。
MXU  そうですね。だから、歴史あるというか、こんな言い方だと語弊があるかも知れませんが、やっぱり色んな市民団体があるけど、なかなか20年続くのって難しいかなって思うんですよね。また映画人も、個性の強い方達が多いので。大抵、大学のサークルとかって、派閥ができて喧嘩別れして、なくなるみたいなことがあるんですけど。なんかいい感じに続いてますよね。いい感じにゆるいのがいいのかも知れないですね。
ちひろ 何年くらいやってるんですか?そもそも「にいがた映画塾」って。
MXU  20年以上。97年かな。きつすぎず、でもやる時はやるみたいな。
ちひろ さっき打ち合わせで名前が出ましたけど、漫画化の古泉智浩先生が映画塾で映画撮ったりしたこともあるっていう。
MXU  そうですね。最近はちょっと子育てが忙しいみたいで。だけど私も一緒に講座やったりとか、映画観に行ったりとか。そうですね、シネ・ウインドとか、映画塾とか、そういう個々の活動が、新潟の文化を面白くしていってるのかなっていう、地道に。そういう意味では、少し自分もそういうところに関われたらなという想いでやってます。
ちひろ なるほど。そうですね。前半もうちょっと映画塾の話をしていこうと思うんですけど、どんな映画を撮られました?
MXU  自分は、まず色々短編とか撮ったりはしてたんですけど、山の下商店街とかで撮った「東区生まれのHipHop育ち」っていうのが、2009年かな?
ちひろ 「8区ムービー」とかですか?
MXU  そうですね。政令市になって区に分かれたので、区ごとのロケとか、出演者とかを使って、「新潟市8区ムービー」って新潟市の大きなプロジェクトで。
ちひろ やっぱりあれ、結構大きかったんですか?
MXU  8区だから8本作るって言って、それぞれ。私は東区編って、自分の育ったところで撮らせてもらったんですけど、それは結構大きかったな。まあ、結構たくさんの人が関わったんですけど、そこで色んな繋がりができたし、そういう映画作りを通して、色んなコミュニティみたいなのができるっていう面白さも。私だけじゃなくて、関わった人達同士が関わって、何か繋がって、面白い取り組みをしていくみたいなね、スタッフの人達とかが。これは自分の中で大きかったな。
ちひろ なるほど。
MXU  あと、これは映画塾の協力って感じなんだけど、河田珪子さんってご存知ですか?「地域の茶の間」っていう。今は全国各地で過疎化が進む町、高齢化が進む町のコミュニティ、空き家を使って週に何回か集まるような居場所みたいなものがあって。それを河田珪子さんっていうお姉様が。
ちひろ 新潟の方なんですか?
MXU  新潟の方です。東区の粟山っていうところでやっていて。今も東区の紫竹でやっています。それを、これ撮らなきゃと思って。粟山のはなくなっちゃったんですけど、一年くらいかけて、短い映画ですけど撮って。色んな子供からおじいちゃんまで通って、ドキュメンタリーをやったのと。
ちひろ そういうコミュニティから生まれた映画があるんですね。
MXU  あとは、「カー子のスワローハット」(2013年)っていう、河童の映画を。
ちひろ 僕が多分、初めて「にいがたインディーズムービーフェスティバル」見に行った年に観た映画がそれです。
MXU  これは、私は脚本とかプロデューサーで、監督は大岩智佳ちゃんっていう、今は東京に行った人と一緒にやって。これは水土の助成で作った映画なんだけど。
ちひろ そうか。「水と土の芸術祭」の年でしたか。(2012年開催。映画の上映は2013年)
MXU  で、それきっかけで、まあ河童の映画だったんですけど、繋がりっていう話になると、妖怪好きっているんですよね。河童の映画だったら何としても関わりたい!っていう、そういう人がいたりとかして。
ちひろ 主演がダンサーの松崎由紀さんだったり、さっき話に出てきた大西アケミさんが出てきたり。
MXU  大西さんも出てますね。だから、妖怪繋がりがここで出来て。それがきっかけで、妖怪祭りっていうのを、翌年かな、2014年に燕喜館でやって。今年、その第二弾を手部じゅんさんが主催でやったりして。
ちひろ りゅーとぴあでやったやつですよね。
MXU  そうですね。そういう意味で、色んな風に膨らんで面白かったですね。
ちひろ 妖怪祭り良かったですね。今年の。僕行きましたよ。
MXU  いや、じゅんさんすごいなと思って。
ちひろ 妖怪にまつわる演劇をやったりとか、妖怪にまつわる映画の上映会をやったりとか、新潟出身の妖怪朗読家のゆうかさんが来たりとか。
MXU  ゆうかさんがまたいいんですよね。
ちひろ ちなみに、ゆうかさんが朗読した時に、後ろに妖怪の屏風があったんですけど。
MXU  ああ、板垣(匠)さんの。
ちひろ 今日、(「ちひろdeアート)に)板垣さん来たんですよ。
MXU  ああ、そうなんだ。
ちひろ しかも、板垣さん全然ここの存在を知らなくて、(ちず屋で)うどんを食べてたら隣で何かやってたから入って来たっていう。
MXU  ハハハ!
ちひろ 板垣さん、村上の方なんですね。僕が今年、ふらっと入った羊画廊の展示が、たまたま板垣さんで、そこで知り合ってたりして。
MXU  板垣さん、妖怪の屏風、すごくいいですよね。
ちひろ あれすごく良かったですよね。
MXU  なので妖怪、せっかくやったので、第三段もあったらいいなという。
ちひろ 是非やってほしいと思います。
MXU  本当に、面白い人がいっぱいいるなあって。なかなか分からないけど、ちょっとそういうところに関わると、色んな面白い人達が繋がるっていうか。そういう意味では、ちひろさんも。
ちひろ あ、僕もですか。
MXU  そうですね。何かやるには面白い地域な気がします。意外とみんな、「BADDREAM」の話にも繋がりますけど、映画って普通だったら引くよなって、誰も関わらないだろうなって思ってたんですけど、「是非やらせてくれ!」とか、何だか分からないけどすごく関わってくれる人がいて。結構みんな、あんまり自分を出さないけれども、意外とファンキーみたいな。意外とみんな、新しいことやってみたい、みたいな人は多いなって。俺はどっちかと言うと保守的かなと思うんですけど。
ちひろ そうなんですね。じゃあ、前半はにいがた映画塾の活動のこととかを聞いてきましたけど、せっかく「BADDREAM」の話にもなったので、後半は「BADDREAM」の作成秘話だったり、どうして撮ったのかという想いとかを、聞いていけたらいいかなと思います。意外と関わってくれた人が多かったみたいな話でしたけど。
MXU  そうなんですよ。
ちひろ 「BADDREAM」、撮ったのは去年ですか?
MXU  撮ったのは去年ですね。去年の5月くらいから、10月くらいにかけて撮って、編集して、今年の3月にシネ・ウインドで上映させていただいて。それから、ちょっと県外とかでも上映しつつという感じで。去年撮って、今年上映して、これからまだまだ上映していきたいなというところで。
ちひろ 主演のお二人が、脳性マヒブラザーズ。
MXU  脳性マヒブラザーズ。
ちひろ 最近解散しちゃったんですけどね。
MXU  そうなんです。最後の解散の時、ちひろさんも私も。
ちひろ 一緒に見ましたよね。ユニゾンプラザに見に行きましたよね。
MXU  もうちょっと盛大に、個人的には…
ちひろ 普通にトークしてネタやってさらっと終わっていきましたよね。「今日で最後です」とか、特に言わずに。
MXU  うん。まあ、彼らなりの美学なんだとは思うんですけど。
ちひろ 脳性マヒブラザーズも、一応解説しておくと、周佐さんとDAIGOさんというお二人のコンビで。周佐さんは、脳性マヒで車椅子。DAIGOさんは歩いたりするのとか、しゃべるのがちょっと不自由で。
MXU  そうですね。そういうところがあって。それを、ネタにして。
ちひろ 逆に武器にするというか。
MXU  それで、ダイバーシティとか、共生とか、本音の部分で、お笑いを通じてやっていこうっていう。
ちひろ 自分達を表現するじゃないですけど。NAMARAにずっと所属していたんですよね。
MXU  そうですね。
ちひろ 「こわれ者の祭典」に所属してたこともあって、僕はその時に知り合って、スタッフとかやってたんで、お付き合いが結構長かったんです。
MXU   DAIGOさんも実は映画塾のずっと受講生で、自分でも映画撮ったりしてて。私は、だからずっとDAIGOさんとは繋がっていて。それで、意気投合した感じですね。
ちひろ そうだったんですね。脳性マヒブラザーズ、すごいですよね。結構全国のテレビに出たりとか、注目されてたり。
MXU  YouTubeとかでもね。
ちひろ あとは、せっかくだから紹介しようかな。これ、今年僕が見に行った、コラアゲンはいごうまんさんというお笑い芸人さんが体験談を書いた本で(「コレ、嘘みたいやけど全部ホンマの話やねん。」)。体験談を漫談にするみたいな芸人さんなんですけど。この方が、新潟で脳性マヒブラザーズに会ったっていう出来事が、この本に書いてあって、それがすごい面白いんですよ。NAMARAの江口さんも出てきたりして。
MXU  へえー。
ちひろ 「BADDREAM」に出る前にも、「抱きしめたい」っていう映画に、北川景子さんが車椅子で、錦戸亮さんがその恋人で、障害者の仲間っていう設定で出てきたり。そんな脳性マヒブラザーズですけど。では何故、脳性マヒブラザーズを主演に「BADDREAM」という映画を撮ろうと思ったのかという…
MXU  「BADDREAM」のあらすじが、障害者の安楽死が黙認されている世界で、隠れ家で暮らす脳性マヒブラザーズと、彼らを助ける舞台仲間の男女、それで色々あるっていう話なんだけど。ポイントは安楽死で、だからそういう意味で、なかなかハードルが高いということはあったんですけど。そういう映画で、ちょっと問題提起というところもあったんですけども。
ちひろ なるほど。確かに、僕も拝見したんですけど、面白いというか、攻めてるなと思ったのが、脳性マヒブラザーズが誰かの役をやるんじゃなくて、脳性マヒブラザーズが脳性マヒブラザーズの役で映画の中に出てくるじゃないですか。
MXU  はい。
ちひろ 実際に新潟で行われた、脳性マヒブラザーズのステージの映像とかも使われてたりして。
MXU  そうですね。使わせてもらって。
ちひろ 要するに、脳性マヒブラザーズがいる、今のこの新潟が、新潟というか日本が、ある日、障害者の安楽死が認められる世界になってしまったっていう。本当に現実の地続きに、BADDREAM、悪夢という世界があるという。そこがすごい攻めてるなと思ったんですよ。冒頭からいきなりショッキングな…
MXU  大西さんが撲殺されるっていう。
ちひろ 「連れていかないでー!」みたいに言ってる大西アケミさんが、政府の役人みたいな人に撲殺されたりとか。いきなりこういうショッキングな話を描くんだなあと思ったんですけど。それを撮ろうと思った理由というか…
MXU  そうですね。大きかったのは、2016年の、相模原のやまゆり園の障害者殺傷事件。これはやっぱり大きくて。
ちひろ あれは本当に、日本人の多くがショック受けたんじゃないですか。特にそういう、障害とかに関わりある人は。僕もそうですけど。
MXU  そうですね。それが本当にちょっと大きくて。個人的に、自分自身もちょっと内部に障害を持っていて。
ちひろ ああ、そうなんですね。
MXU  うん。それはもう、10代の頃からで。やっぱり、そういった排外主義的なものに対するアンテナみたいなのはずっと持っている中で、相模原事件というのはきっかけではあったんですけど。もう、これは撮ろうみたいな感じになって。それまでも、伏線というか、そういう高まりは感じていて。
ちひろ 以前から、世の中のそういう風潮に対する。
MXU  そうですね。それはずっとアンテナを張っていて。それで、やっぱり急に2010年代に入ってから。
ちひろ 震災の前後くらいから。
MXU  そうですね。やっぱり、大幅に。ヘイトスピーチをはじめとして。
ちひろ ヘイトスピーチがここ数年、問題になってますけど。
MXU  やっぱり、それって本当に、ヘイトスピーチは在日韓国人とか、韓国籍の方に対するものだけど。
ちひろ 昔からあるっちゃありますけど、確かにここ最近、顕著ですよね。
MXU  いや、あんな露骨なものはなかったと思います。言葉にするのもはばかれるような。すごい脅威は感じていて。それをモチーフに、ちょっと短編を撮ったりもしたんですけど。まあ、端的に言うと、ずっと思っていた、世の中全体がどんどん危険水域に行ってるんじゃないかという思いが、相模原で確信に至って。
ちひろ ここ10年くらい、そういうの多いですよね。あと、映画撮ったあとですけど、自殺したいって方とTwitterで繋がって、本当に殺害してしまったっていう事件もありましたし、座間市で。
MXU  ありましたね。そういう、日本だけの部分的な話じゃなくて世界全体も、政治的な話はあんまりしたくないですけど、アメリカとかそういう国での排外主義の高まりとか。
ちひろ ヘイトを容認するような風潮とか。
MXU  なんかもうこれはちょっと、何かしら表現しなきゃと思って。で、もう一つ思ったのは、やっぱり、例えば障害を持ってる当事者の方とか、知り合いとかに結構いるんですけど、こうやって企画出すんですけど、「何でこんなの作るんだ」みたいに言われたりとかもあったりして。
ちひろ 障害者の方から言われる。
MXU  そうですね。「こんな暗い話」とか。まあ、そういう人達は、結構ダイバーシティとか、共生とか、そういうものを支援するような活動に取り組んでいたりはしてるんですけど。なんだろうな、自分が思ってるのとギャップ、「どんどん世の中良くなってるじゃん」みたいに思ってたり、「どんどん進化してるんだ」って。
ちひろ ああ、「いい時代じゃん」って逆に。
MXU  で、俺はなんか「ん?」みたいな。
ちひろ そこに対する疑問がずっとあったわけですね。
MXU  そこらへんのギャップ。色んな問題提起ができるんですけど。例えば、そういった発信してる人達、DAIGOさんとかも含めてって言っていいと思うんですけど、やっぱりそういう目立つ障害者の周りには、善人ばかりという言い方もアレかも知れないけど、多様性とか共生とか、そういったものに対して意識が高い人達が多いとは思うんですよ。ただ、そうなると、イコール世間、社会って錯覚しがちだと思うんですけど、自分の感覚だと、自分、目立たないじゃないですか、内部障害なので。ちひろさんもそうかも知れないですけど。
ちひろ 僕もそうですね。僕も精神疾患なので。
MXU  在日韓国籍の人とかも、カミングアウトしないと分からないとは思いますけど。やっぱり、世間はそんなに甘くないというか、結構冷酷というか。そういったものに対するギャップっていうか。個人的には結構、ナチュラルボーンヘイターみたいな、多様性とか無理じゃんみたいな体験とかあったりして。
ちひろ すごい分かります。例えば、僕の話になっちゃいますけど、僕も「こわれ者の祭典」であったり、宇佐美さんだったり、障害についてちゃんと考えていこう、多様性のある社会を作っていこうみたいな人達と、わりと関わりが多くなってきたので、周りでは差別を容認する人はあんまりいないんですよ。そういう人とばかり僕は付き合っているんですけど。でも、一歩、例えば全然関係ないコミュニティとかにぽんと入ったりすると、本当にナチュラルボーンという言葉がぴったりなように、「韓国とかってヤバいんでしょ」みたいな、本当に無防備にそういうこと言っちゃう人がいるんだなー、みたいなのは。
MXU  本音と建て前じゃないですけど、思った以上にそういう、もう無理!みたいな。
ちひろ 病気だって言うもんなら、ちょっとドン引きみたいな。
MXU  そういう人達に、一見受け入れてくれたって思うようだけど、実際は何も変わってない。そういう中で、どんどんファッション的に多様性とか共生とか消費されることに対しての違和感。それはファッションなので、時間が経てば、まったくバックラッシュで逆のものになっちゃって。それが俺は今、アメリカとかで起きてると思ってる。もう本当に、真綿で首を絞められてるのに、目の間でできれいな言葉で見えなくなってるみたいな。甘い多様性・共生ケーキみたいな。
ちひろ 多様性とか共生とか、絶対必要なものだし。
MXU  全然、それは大事なんですけど。
ちひろ それが悪いって言ってるんじゃなくて、多様性、共生という言葉を使うと明るい、頑張ってやってるみたいな雰囲気になっちゃって、そういうスローガンだけが独り歩きして。
MXU  それって本当に、本質が変わらなければまったく真逆なことで盛り上がるので。「やっちまえ」みたいなね、マイノリティを。だから癌患者に痛み止めじゃなくて、ちゃんと外科手術みたいな、そういうものって表現でやるべきことだなと思って。見たいものを見るのも表現だと思うんですけど、気持ちいいものだけで。そういうモヤモヤしたのがあって。
ちひろ 2010年代くらいになってから、ずっとあって。
MXU  そうですね。言葉が通じない、多様性・共生みたいなのは無理みたいな人もやっぱり結構いるんだよね。そういう中で、どうマイノリティはサバイブしていくかみたいな。ちょっと熱く語りましたけど。
ちひろ じゃあ、その反響の方を聞いてみてもいいですか。せっかくなので。
MXU  まあ、色々反響はあって、ネガティブに思う人ももちろんいたりして。まあ、それはそれとして。ただまあ、自分の意図としては、このままうわべだけの多様性、ダイバーシティっていうのは、すごい危険だなって。もうそれこそ、有事になったら。それは結構、一応勉強したというか、過去のそういう暗いけど、ジェノサイド関係の本とか、ほんぽーととか行って読んで。結構いっぱいやられてるみたいな。なかなか、そういう意味で本当に難しい問題だなとは思うんだけど。
ちひろ 確かに日本も、つい何十年前まで、障害者の強制不妊の法律が、結構最近まであったんですよね。僕も最近知って驚いたんですけど。ハンセン病の方の隔離施設が本当につい最近まであったとか。この時代になって結構、それこそNHKのドキュメンタリーとかでも、そういうことやるようになりましたけど。隠されていた歴史みたいな。
MXU  そうですね。そういうのは、寝た子を起こすなっていうのも大事ですけど、ちょっと違うと思うんですよね。本当に、多様性とか共生とか、それは本当に自分の願うところではあるんですけど。ただ、ファッションとして消費されるのにはやっぱりすごい違和感を感じてて。
ちひろ コメント「重いテーマを扱うと風当りは強いとは思います」。
MXU  結構、そうですね。「何でこんなの撮るんだ」みたいに怒られたこともありましたし。連絡取れなくなったりとか、シナリオ渡した途端に。
ちひろ 結構シビアな話ですね。
MXU  まあでも、撮りたいなと。撮っちゃいましたみたいな。
ちひろ 一つの答えを作品で示すというやり方もありますし、一つの主張を作品で示すというやり方もありますけど、作品を作ることで、宇佐美さんが悩んでいたことの、考えを進めていく、議論を進めていくみたいなことも、あると思うんですよ。100%正解ではないにしても、みたいな。
MXU  そうですね。今話した内容なんて、私ごときがそんな答えなんて明確に出せるわけじゃないし、哲学者でも何でもないし。それはもう、準備が長い間、葛藤してきたものなんで、そういう暴力とか差別とか。ただ、やっぱり、それを考える。そういう意味では、考えるきっかけになればいいなと思うんですけど。
ちひろ それは本当に思います。あ、コメントで質問が来ています。「金銭的には結構かかってる映画なんですか?」。
MXU  具体的には、50万です。そういう意味では本当に嬉しかったのは、役者さんとかもほぼボランティアで、スタッフとかもほぼタダ働きで。
ちひろ 自主制作映画ってそういうところありますよね。地元のアマチュア劇団とかと一緒で。
MXU  そういう、人件費とかは、ほぼ甘えさせてもらって。だから、そういう意味で、新潟ってすごい。ちょっと感動しましたね。人間に対する不信がテーマではあったんですけど。意外とみんな飄々と、何で手伝ってくれてるの?みたいな感じで。Facebookグループとかあって、俺が熱いメッセージ書くとみんな反応しないんですけど。みんな何で関わってるかよく分からないんですけど。なんか面白そうだなとか、それなりに問題意識があったりとかする人もいるんでしょうけど。ただ、何でか知らないけど、え、この人が?みたいな。
ちひろ そういうことも結構あって。
MXU  そうですね。
ちひろ 結構反響があったんですかね。
MXU  ヒロイン役の女の子というのが、DAIGOさんにほぼストーキングみたいにされる女の子。あの人は、もう本当に素人で、今まで映画作りとか何も経験したことがない人で。たまたまイメージに合う人が、やすらぎ堤のNSTまつりで、ショップで。
ちひろ あそこで声かけたんですか?
MXU  うん、ダメ元で声かけて。超危険人物みたいな男2人で、俺と武居さんで声かけて。「いや、いいです」みたいなぶっきらぼうな感じだったんだけど、「やっぱり興味あります」みたいな感じになって。いや、途中で消えるんじゃないかなって、消えたらまあ、シナリオどうするかな、くらいには思ってたんですけど。でも最後まで出てくれて。未だに何で出てくれたのか謎なんですけど。
ちひろ そういうこともあったんですね。
MXU  そういうのが重なって。だから、そういう積み重ねでできたかなっていう。
ちひろ じゃあ、結構いい時間なので、コメント読んで告知していただいて、あとは会場のお客さんの質問みたいな感じにしていこうと思います。コメント、「本編見てないけど、予告編でくすっとしました」っていう。
MXU  予告か。YouTubeにいくつか上がってるので。
ちひろ あと、前半だけちょっと見られたりしますよね、YouTubeで。
MXU  はい、今も実はそうなんですよ。YouTubeで「BADDREAM」で検索すると見れるので、是非もしこれで興味を示していただいたら、見ていただけたら嬉しいです。
ちひろ あと、「このあと「BADDREAM」の上映の機会はあるんですか?」っていう。
MXU  そうですね。東京で3月20日から、渋谷の某所でやるんじゃないかと思ってますが、それちょっと、今チラシとか作ってるので。
ちひろ 詳しいことは、「BADDREAM」のTwitterとかFacebookとか見ていただけると。
MXU  そうですね。
ちひろ コメント「原一男監督の「さよならCP」(1972年)は観てますか?」
MXU  俺、これ、色んな人に言われるんですけど、まだ見てなくて。観なきゃと思います。
ちひろ これはどういう映画なんですか?
MXU  「さよならCP」は、脳性麻痺の社会運動の映画で、「青い芝の会」っていう。「青い芝の会」の本は読んだんですけど、映画はまだ見てない。「青い芝の会」のドキュメンタリーはテレビでやったやつは見たんだけど。
ちひろ あと、お客さんから質問があるということなんですけど。
お客さん 最近、やまゆり園の事件で、SNS界隈で、容疑者に賛同してる方も結構いるんですよ。それについて監督としてどう思うのかなという。
MXU  それは自分の身近でも、「ぶっちゃけ気持ち分かるけど」みたいな前置きしてしゃべる人って結構いるなって思ってて。やっぱりそれは本当に危険ですよね。ちょっと言い方は気を付けないといけないですけど、一応、それを言う人達の論理的には完結してるし、それを否定するってなかなか難しいことで。だから、そういう人達にとっては、重度の障害者の人達は生きる価値なしっていう判断をしていて、それにいくら言っても無駄みたいな。彼らなりにもう、計算はできるんで。だからそこに、物乞いじゃないけど、基本的なアプローチとして、何とかそこに人間の善性みたいなものを取り戻そうっていうのが、リベラルのやり方だとは思うんだけど。そこに対する歯がゆさというか限界。いや、無理な人は無理で、そこにはもっとシビアに独立して、でもそれも嫌だっていう。嫌だっていうのは、具体的には暴力的な行動ね。映画の後半はそういうのをモチーフにしていて。それはそれとしてやるならもう、身を守るみたいなね、武器を取れみたいな話になるんですけど。北朝鮮方式みたいなじゃないですけど。ただ、自分の中では、それも悪夢みたいな。ただ、やっぱりそういう人は多いし、そこはもう、本音の部分みたいなことですよね。パンドラの箱みたいな、植松さんのルポ本を読ませていただいて。
ちひろ ありがとうございました。
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