中北浩爾一橋大教授は安倍政権は大きな逆風が吹かなければ、崩れず、憲法改正を目指すのではないかとみる。
首相、改憲と３選引き換えも＝中北浩爾一橋大教授－インタビュー・憲法改正を問う
インタビューに答える一橋大大学院の中北浩爾教授＝５日、東京都国立市
憲法改正をめぐる政局の見通しについて、日本政治史が専門で、「自民党－『一強』の実像」の著作がある中北浩爾一橋大教授に話を聞いた。
－憲法９条１、２項を維持した上で自衛隊の存在を明記するという安倍晋三首相の提案をどう評価するか。
それなりに評価している。現行憲法を維持しながら自衛隊を容認する、というのは国民のコンセンサス（合意）になってきている。政権を担う勢力は自衛隊の存在、自衛隊に担われている安全保障政策を直視すべきだ。
しかし、集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更が先にあり、今回の改憲提案となっているので、民進党などと折り合いを付けることはできないだろう。首相の提案の中身は評価できるが、タイミングは非常に残念だった。
－野党はどう対応すべきか。
反対なら反対で良いと思うが、対案を示すべきだ。集団的自衛権行使の容認なしで自衛隊の存在を明記し、シビリアンコントロール（文民統制）を強化する、などの対案を出せば良い。自衛隊を認めた上で、在り方にまで踏み込むべき時だ。
－首相が５月３日に改正憲法の２０２０年施行を表明した手法をどう考えるか。
首相の政治的強さは、コアを思想的に近い人で固めて、民進党や共産党を敵にして、公明党を抱き込むという構図をうまく作って求心力を保つところにある。今回の改憲提案も日本会議系の集会でビデオメッセージを出すとか、読売新聞のインタビューで出すとか、身内の支持を固める行動の一つだと思う。
しかし、自民党総裁として憲法改正を言うなら自民党の機関紙や党大会で言うべきだった。
－東京都議選を経て、「安倍１強」は崩れたという認識か。
まだ分からない。「揺らいだ」くらいの段階ではないか。自民党内には０９年の政権交代の反省もあるので、安倍批判ののろしを上げるという感じはない。ただ、加計学園の問題もくすぶり、前途多難な要素はある。
－首相の描くスケジュール通り、秋の臨時国会に自民党改憲案を提出できると思うか。
スケジュール通り進めにくくなったことは確かだが、首相は政権が揺らぐほど、改憲に突き進むのではないか。首相にとって改憲は政権の存続よりも上にくる課題で、政権を懸けていると思う。自民党総裁３選と引き換えにしてでも改憲を進めるだろう。
－スケジュールありきになっていないか。
期限を切らないと進まないが、切り過ぎると政権を拘束し、強引に進めざるを得なくなる。首相の祖父の岸信介元首相も同じだった。日米安保条約改定でスケジュールを区切って、どんどん進めたから反対運動が高まった。結局、退陣と引き換えに実現したが、今は当時と同じような状況になってきている。
中北浩爾氏（なかきた・こうじ）１９６８年生まれ。東大法卒。立教大教授などを経て１１年から現職。三重県出身。（2017/07/19-15:05）
2017/05/20 に公開
【ダイジェスト】中北浩爾氏：安倍政権がやりたい放題できるのはなぜか
(参考）
2016/12/20 に公開
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