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とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

フラグマン現象

2007年02月03日 07時25分47秒 | 美術
 わたしは、ものすごい絵画砂漠ですが、かなり昔に韓国人で美術史を勉強をしている方に、「フラグマン現象」というものを教えていただいたことがあります。
 美術の世界のお話のようなのですが、一言でいえば、古代から現代までの絵画・オブジェを並べてみると、人間というものが、いかに全体性を失って破片になっているかが、実感できるのだそうです。

「現代人のわたしたちは、粉々に砕けて、指の先だけになっているのよ。」
その頃、ちょうど上野の西洋美術館(だったか?)で、おおがかりな古代から現代までの絵画・オブジェの展示会が催されていた。

「フラグマン現象を感じるにはね、いいこと!いちいち立ち止まって作品絵画を眺めるのではなく、太古からスタートして、絵画を目の中にいれて現代まで走るのよ。それを何回もやるのですよ。そうすれば、必ずや、フラグマン現象を感じられるでしょう。わたしたちが、いかに指の先だけになっているか、理解できますよ。わたしはフラグマン現象説を信じています」

 わたしは、ほー、そういうものかと感心して聞いておりましたが、質問をいたしました。

「そこまでおっしゃるなら、やってみましょう。ところで告白すると、わたしは、ものすごい絵画オンチ、知識ゼロで、絵なんてみても、実はなにがなんだか、ちっとも分からないのです。縦になったり横になったりして眺めても、何をいいたいのか、どこを見たらいいのか、さっぱり分からないのです。特にオブジェとかいって、チューブをひねくりまわして、トタンをくっつけたような作品なんか、まったく理解できません」

「おおー!それは、あなたの現代の勉強が足りないからです。すべての勉強が足りないからです。わたしは、あのチューブを見ると、じんじんときます」

 ふーむ、そういうものであろうか?まあ、とりあえずは、西洋美術館の会場を、古代からスタートして現代に向かって、何回も走ってみようではないか。

 そのとき、ちょうど幼稚園に行っていた三男を連れて行き、子どもの手を引っ張って、会場を走り回った。

 子どもは、ひきづられて走りながら、叫んでいた。

「あっ、これは埴輪っていうの?全部、すてきだね」

「あっ、神さまと地獄だらけだあ」

ピカソのところにたどりついたら、

「あっ!意味なしになったあ。意味なしだあ」

わたしは、ただ走りつかれただけで、これ以上適切な感想を言えませんでした。

ああ、寂しい、と思ったとたん、それは、わたしが破片になっている寂しさなのだろうかと、一瞬思った。

   終わり
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