日刊ゲンダイ 公開日:2020/03/05 14:50 更新日:2020/03/05 14:50
あらゆる対策に失敗し、「緊急事態」を招いた張本人が、混乱に乗じて権限強化を画策。まるで火事場ドロボーだ。
安倍首相が新型コロナウイルス対策として、7年前に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を改正し、「緊急事態宣言」を出す方針だ。
10日に改正案を国会に提出し、来週中の成立を目指す。
4日夕には野党各党の党首らと国会内でリレー会談し、改正案の成立に協力を求めた。普段は野党のことなど無視して好き放題やってるくせに、どうした風の吹き回しなのか。
しかも、野党は当初から新型インフル特措法を新型コロナ対策にも適用する必要性を訴えていた。「適用できない」と言い続けてきたのは安倍首相の方なのだ。
民主党政権で成立した法律だから使いたくなかったのではないか、と指摘する声も出ていたが、今頃になって特措法を持ち出し、野党とも協力する姿勢を見せているのは、なんともウサンくさい。現行の特措法では、首相が「緊急事態宣言」を出せば、外出自粛や施設の使用制限を要請できる。国会の承認は不要で、期間上限は2年間。1年間の延長が可能だ。
改正案では、新型コロナを指定感染症にした2月1日から「2年を経過する日までの間」を期限とし、「政令で定める日まで」を適用対象とするという。
全権委任法と同じナチスの手口
「それなら、わざわざ法改正しなくても、新型インフルエンザ“等”が対象の現行法で対応可能なはずです。時限措置といいますが、東京五輪のためなら2年間も必要ないでしょう。この先2年以内には、自民党総裁選や衆院総選挙がある。緊急事態を理由に、総裁や衆院議員の任期延長を決めてしまう可能性もあります。法を散々ねじ曲げてきた安倍政権だから、どう悪用するか分かりません。議会で全権委任法を成立させて、合法的に独裁を確立したヒトラーと同じことを企んでいるのではないか。民主党政権が作った特措法には反対できないともくろんで、野党も巻き込み、独裁の連帯責任を負わせようとしているように見える。非常に危険です」(政治評論家・本澤二郎氏)
緊急事態宣言は、国民の人権を制限する強大な権限となる。法改正するなら、国会の承認を必要とするなどの制限を課す方向でやるべきだ。科学的根拠もないままの発令を許すわけにはいかない。
緊急事態宣言は、国民の人権を制限する強大な権限となる。法改正するなら、国会の承認を必要とするなどの制限を課す方向でやるべきだ。科学的根拠もないままの発令を許すわけにはいかない。