茂木健一郎 クオリア日記
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皇太子妃雅子さまについて
皇太子妃の雅子さまに関する報道には、大変関心がある。
雅子さまは、私にとってもちろん遠い存在だけれども、たまたま、東京大学法学部に学士入学したという経歴が重なっている。雅子さまは、私よりも一年後のご入学だった。当時お目にかかることはなかったけれども、秀才の誉れ高かった。
その後、外務省に入られ、英国のオックスフォード大学に留学され、皇太子妃になられるまでの経緯は、よく知られているところである。ご成婚の際、多くの人が、雅子さまが、その経験と資質を活かされて、皇室外交とご公務にご活躍されると期待したのではないだろうか。
後に、私がケンブリッジ大学に留学した時、友人の英国人が、雅子さまがハーバード、オックスフォードで学ばれたことを指して、「Ah, she has seen the world」と評したことを印象深く覚えている。雅子さまには、日本の皇室の新時代を開く、という期待が寄せられていた。
その雅子さまが適応障害でいらっしゃるという一連の報道には、心が痛む。ここで考えておかなければならないことは、適応というものは主体と環境の関数であって、その要因は、主体側にのみでなく、環境にもあるかもしれないということである。
週刊誌などの報道を見ると、ともすれば、適応障害の要因を、雅子さまに帰そうという傾向があるように思うが、それではバランスを欠くように思う。
皇太子さまが、雅子さまを大切にされていらっしゃることはもちろんであるし、東宮の方々も、また宮内庁も、いろいろとご配慮下さっていることは確かだと思うけれども、「適応障害」の要因の一端は、「環境」側にもあるのかもしれない、という視点は、必要なのではないだろうか。
英国人がShe has seen the worldと評した雅子さまの資質が活かされるようなかたちで、皇室のご公務、外交が行われたら、すばらしいことだと思うし、日本の未来も、明るくなると思う。
しばらく前、新国立劇場のオペラ上演の際に、皇太子さまがいらっしゃったのをお見かけした。その隣に、雅子さまがいらっしゃらなかったことを、とても寂しく感じた。
私は、雅子さまが適応障害で苦しんでいらっしゃることを、私自身を含めた、日本の環境の問題であるとも感じている。自分自身の痛みとして、雅子さまの不在を受け止めたい。
日本は、雅子さまのような、国際的なキャリアを積まれた女性にとって、そのポテンシャルを活かしやすい国になっているだろうか。皇室という特別な環境の問題は、そのまま、私たちの意識、社会の空気の課題に、つながっているのではないだろうか。
4月 14, 2013 at 07:19 午前 | Permalink